読書量の増やし方を教えてください

Q. 読書量の増やし方を教えてください

24歳の男です。教科書や漫画を除いて、これまで本というものをまったく読んできませんでした。ゆえに、会社の上司に「本を読まない奴は成長できない」と言われ、グサリと刺さりました。胸に孔が空いて虚(ホロウ)化しそうです。上司よりたくさん本を読んで見返してやりたいのですが、どうすれば読書量を増やせるでしょうか。

A. フローリーディングを試してみてはいかがでしょうか

 私も読書が苦手です。

 さらに言えば、メンタルが男前豆腐並みにフニャフニャなので、上司にそんなことを言われたら一瞬で虚化し、オレンジ色の髪をした目つきの悪い高校生に、斬魄刀で一刀両断される自信があります。質問者様は人の形をして現世に残っているだけで、十分に誇ってよいと思います。

 私のような変人と一緒にすんな、と怒られるかもしれませんが、自分も社会人になってしばらくしたころ「本を読めない自分って、もしかしてヤバいのでは」と悩む時期がありました。

 それでどうしたかと言うと、フラフラと書店を訪れ、とりあえず強そうなタイトルが並んだ書棚(自己啓発書コーナー)に迷い込み、適当に本を選んで読みました。「夢をかなえるゾウ」に感銘を受けた記憶があります。

 その本の効力たるや。読後すぐに全能感で満たされ、異常なほどポジティブになり、さらには行動的になったかと思うと、数日もすると、嘘のようにやる気がでなくなり、何をしても楽しくなくなり、また別の自己啓発本に手を出す・・・。という、やめたくても読まずにはいられない「アブナイお薬中毒者」状態になりました。

 というわけで、自己啓発本というアブナイお薬に手を出せば、ある程度は読書量が増えてくれると思います。

 しかし、自己啓発本の場合、その本を読んで有用な知識を得ることが目的ではなく、その本を読んだことで得られる「刹那的なバーサク状態」を活用するのが目的になります。つまり、短い時間でもバーサーカーとなることで、普段の自分ではしないであろう、スカイダイビングや街コン、起業といった戦闘に乗り込めるようになるのが自己啓発本の狙いです。

 もしあなたの上司が戦闘民族であれば「オメェみたいな強えやつ見ると、オラわくわくすっぞ」となって見返せる可能性がありますが、おそらく上司が意図するのは「読書を通して知識や教養を身に着ける」ことだと思いますので、自己啓発書だけを読んで見返すというのは、少し的外れな気がします。

 第一、人前で話していて「読書が趣味です」「へーすごい。何を読んでいるんですか」という流れになったとき「自己啓発本です」と答えるのは、何か悩みがある、と勘繰られる気がして恥ずかしいという欠点があります。

 そこで、自己啓発本に限らず、ビジネス書や実用書、小説、技術書など幅広いジャンルの本に対応できて、知識を吸収できつつ、読書量も増やせる方法をお伝えしたいと思います。「そんな魔法あんのかい」と思うかもしれませんが、意外にあります。

 フローリーディングを試してみる、というのはいかがでしょうか。

 巷では「効率的な読書」をうたった読書術で溢れています。いかに少ない時間を読書に投資して、より多くの知識をリターンするか、という選手権に血眼になった人々が多いのだと思います。

 そのような効率的な読書には目を惹かれます。しかし、よく考えてみていただきたいのです。高価な栄養ドリンクを一気飲みしても、実際のところ栄養素は体にさほど吸収されず、「今日はオイニーきつめだな」という濃いオシッコに変わった経験はないでしょうか。

 それと同じで、どんな良質な読書法だとしても、本を短時間で一気読みするような方法は、頭に知識がさほど吸収されない、と私は感じています。そこで重要になるのが「ダラダラと長い時間をかけて飽きることなく本を読み続ける技術」です。

 そもそも、読書をするモチベーションの半分は「教養を身に着けたい」という高尚なものですが、もう半分は「こんなに本を読んでる俺すげぇだろ」と言いたいだけのマウンティング精神だったりします。

 質問者様の希望が「読書を通じて人生を豊かにしたい」というのであれば、話は簡単で、1冊の座右の書を繰り返し読むのが最も効率的です。人によってそれが聖書だったり、論語だったり、7つの習慣だったり、スラムダンクだったりします。

 しかし「読書量を増やして上司を見返したい」という文面から察するに、マウンティング欲を満たしたい、というご希望であるようにも見えます。

 そうであれば「いかにダラダラ長時間本を読めるか」を追求してみていただきたいと思います。長時間読めさえすれば「1日に3時間も読書をしている」「週に10冊読んでいる」「こんなに色んな本を読んだ」といったマウンティングが可能になります

 そこで、ご提案したい究極魔法が「フローリーディング」です。短時間で効率的に速読する読書術とは対極にある「ダラダラ長時間読書術」です。

 フローリーディングは、書評家の印南敦史さんが「遅読家のための読書術」という本の中で紹介している手法です。というと怒られてしまうくらい私の中で曲解してフローリーディングを使っているのですが、手法のオリジナリティは印南さんにあるということは、礼儀としてお伝えせねばならないでしょう。

 さて、では私が実践しているフローリーディングのやり方をお伝えします。手順は以下の通りです。

1.ノートとペンを用意する
2.本を開く
3.基本的には流し読みする
4.「おっ、これは」という文章に出会う
5.その文章をノートに書き写す
6.また流し読みモードに戻る

 「は?これだけ?」と思うかもしれませんが、これだけです。フローリーデイングは「心構え」が大事でして、手順だけ真似してもなかなかフローリーディング状態に没入しづらいと思います。ここからは、二通りの心構えをお伝えします。

一つ目の心構えは、オリジナル、つまり印南さんの提唱するフローリーデイングです。印南さんによると、たくさん本を読むうえで邪魔になるのは「熟読しなければいけない」と思い込む真面目さ、だそうです。

 「1ページずつ熟読したほうが本の内容が頭に入る」と思われがちですが、実際のところ、いくら熟読しても忘れるものは忘れます。ほとんどのページは重要でないと思って流し読みし、本の中で重要だと思える1行に出会ったときだけ熟読しなさい、というのが印南さんの教えです。

 フローリーデイングのフローとは「流れ」という意味です。まるで音楽を聞き流すかのように、本の内容を頭に「読み流す」ようにすれば、心地良い読書ができるようになるそうです。そうすると、1ページずつ熟読するのに比べて読書スピードが向上し、たくさんの本を読めるようになります。ほとんどのページをパラパラと流し読みするので、早くたくさん読めるということです。

 二つめの心構えは、私の解釈するフローリーディングです。印南さんが言う「音楽を流し聞きするように読みましょう」と大きくは違いませんが、私のイメージでは「頭の中がゴミ屋敷化するのを止める」と考えた方が、フローリーディング(心地よい流し読み)状態に没入しやすいです。

 私は、読書に飽きて長時間読めなくなるメカニズムが「頭のゴミ屋敷化」にあると考えています。本を読んでいるとき、頭の中を「部屋」だと思って、その部屋がどういう状況になるかを考えてみてほしいのです。

 まず、心地よく過ごしやすい部屋を想像してみてください。そこでは、床にモノが散らかっておらず、温かみのある木のテーブルと、質の良いチェアがあります。おしゃれなカフェのような部屋です。テーブルの上にあるのはコーヒーと読みかけの本だけです。小鳥のさえずりも聞こえてきそうです。

 一方、過ごしづらい部屋も想像してみてください。足の踏み場もなくモノが広がった状態です。四六時中テレビがつけっぱなしで、ガンガンと音がなり響いています。このようなゴミ屋敷に長居するには、相当なエネルギーがいります。

 というのが、多くの方の共通認識だと思います(お掃除フリークの私だけの感覚では無いはずです)。しかし、これが頭の中の部屋になると、多くの方が逆の状態を作り出します。頭の中をゴミ屋敷にして喜ぶのです

 頭の中の部屋とは、情報を記憶するスペースのことです。専門的なことは分かりませんが、短期記憶とか作業記憶(ワーキングメモリー)とか呼ばれる脳の領域のことを「頭の中の部屋」と私は呼んでおります。

本を読むとき、情報が頭の中に入りますよね。「わーい、知識が増えたぞ」と手放しで喜んでいませんか。それ、危険です。たいていの情報はゴミなので、部屋に入った瞬間に「即捨て」しないと頭の中の部屋が荒れていきます。

スーパーで貰ったビニール袋はたしかに便利ですが、100枚も200枚も貯めこむと、収納を圧迫する悪魔になります。友達からお土産で貰ったインドネシアの変なオブジェだって、もったいないからと部屋に飾ると、途端に部屋がザワつき出します。捨てましょう。

 綺麗な部屋をキープする秘訣は「絶対に必要なモノ以外置かない」です。それと同じで「これ、覚えてなくてもいいかも」という知識は、積極的に頭の中の部屋に入った瞬間に追い出して、頭をスッキリした状態にお掃除する必要があるのです。

 では、どうやって追い出すかというと、ノートに書くのです。人間はノートに書くと、忘れられる生き物です。

 「このやろう・・・天誅じゃあ!」とその場では血が沸騰するくらいブチ切れたいことあっても、家に帰って日記にガシガシと訴訟文を書くうちに、「あのやろう・・・次は許さんからな」と美味しい玉露茶を入れられるくらいの温度まで血が冷めてくれることがあります。そして、しばらくすれば「デスノートに名前を書いたから許してやるか」と溜飲が下がり、忘れることができます。

 何が言いたいかというと、人間の頭の仕組み上、ノートに書き出すと「情報を忘れる」ことができ、それだけ頭の中の部屋がスッキリするのです。このように、頭の中に情報が溜まりそうになったと感じたら、ノートにそれを書き出して「スッキリして心地良い状態」をキープすると、読書に飽きることなく長時間読み続けられるようになります。私はこれをフローリーディング状態と呼んでいます。

「ノートに書くのって、面倒くさいんじゃない」という批判もありますが、そういう人に限って、頭の中をゴミ屋敷にしたまま読書を進めて「なんか知らんが、しんどいから読むのや~めた」となりがちな気がします。

私のほどのお掃除フリークにもなると「その頭の中にあるゴミ知識、ノートに書いて捨てた方がいいじゃないでしょうかね。ヒヒヒ」と人の頭の中まで掃除したくなります。「これはゴミじゃねぇ!」とゴミ屋敷の住人ばりに叫びたくなる気持ちも分からなくはないです。絶対にゴミを捨てろと言っているのではありません。その頭の中にあるモノ(情報)が、大量の不要なビニール袋でないかどうか、一度確認してみてはいかがでしょうか、と提案しているのです。

情報を捨てろ、捨てろ、としつこく言われて不安になるかもしれません。さすがに卒業アルバムを捨てろと言われたら躊躇うでしょうが、情報を頭の中から捨てるのは、得られるメリットの方が多いものです。

 作業記憶(短期記憶)に情報を留めておくのは、みなさまが思っている以上にストレスが溜まるのです。

 「知識を捨てたら本を読む意味ないんじゃね?」と思うかもしれせんが、本当に必要な知識は、捨てたと思っても、勝手に長期記憶の方に溜まってくれるので、容赦なく捨てて大丈夫です。それよりも、一度頭をスッキリさせ、新しいページを読んで、情報を頭に入れ直すほうがお得なのです(そして、すぐ捨てることになりますが)。

 そもそも、本コラムで目指す読書は、人生を豊かにする教養や知識を身に付けることだけを目的としていなかったはずです。より重要なのは、とにかく長時間読書をすることでした。「こんなに長時間読書をして凄いやろ」「こんなにたくさん本を読んで凄いやろ」と上司にマウンティングをするための技術を授けているのです。

 とりあえず、騙されたと思って、「あー、なんか情報が頭の中に溜まってきた気がするわ」と思ったタイミングで、なんか心に引っかかった文章をノートに書き出してみていただけると幸いです。

まとめ

読書量を増やすために、とにかく長時間読書をするというアプローチを紹介しました。長時間読書をするコツは、頭の中を「情報のゴミ屋敷」にさせないことです。そのための有効手段として、フローリーディングをお伝えしました。ゴミ屋敷化を防ぐと、記憶ストレスが軽減され、スッキリとした頭で心地よく読書を続けられるようになります。ポイントは「おっ、これは」という記憶に残りそうな文章に「ノートに書きだす」ことでした。

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