数学の勉強法を教えてください(3)

前回の記事「数学の勉強法を教えてください(2)」では、検索できるノートを作りましょう、というお話をしました。今回は、問題集の選び方がテーマです。

Q. どんな問題集を選べばいいの?

新しいノートの作り方に出会ったとき、早くノートに問題を解いてみたくてウズウズしてしまうのは私だけでしょうか。

きっと前回の記事を読んだみなさまも「やっとハンターハンターが再開する号」のジャンプを手に入れた小学生くらいウズウズしていると思います。

その欲望を、問題集にぶつけて解きまくるのは結構なのですが、闇雲に解いた結果「また無駄な問題を解いてしまった」という石川五右衛門な虚しさが残ってしまうのでは、もったいないです。

どうせなら問題集選びも工夫して効率よく実力を伸ばしたいところです。そこで、私のおすすめの問題集の選び方をお伝えしようと思います。

A. ジョギングで5周できる問題集を選んでみましょう。

寿司屋において「えび」と「えんがわ」が外せないように、問題集選びにおいても外せないポイントが二つあります。

ポイント1.ジョギングできること
ポイント2.周回できること

かの有名な思想家の老子は、こう言いました。最上の問題集は河川敷ジョギングに似ている、と。それが今日では「上問如ジョグ」として伝わっています。居酒屋に行くと「上善如水」というラベルが貼られた酒瓶が並べられていますが、あれは印刷ミスです。

ジョギングとは「あー、気持ちいいな」と感じる一定のペースをキープして走ることです。「ちょっとキツイな」と感じたら、それはジョギングではなくランニングです。反対に「楽だな」と感じたらウォーキングです。

「河川敷ジョギング」という趣味を御存じでしょうか。河川敷を走って、橋を渡って、川を挟んた逆側の河川敷を走って、橋を渡って、また河川敷を走る。これをグルグルと何周もするという無限ループを楽しむスポーツです。

「グルグル周って楽しいとかハムスターかよ」と思われるかもしれませんが、ハイな気分になって、意外と楽しめるものです。何度も周回していると、無意識に手と足が動き、思考停止でグルグル回れるようになります。ハムスターズ・ハイです。

問題集を解いて力をつけるためには、この河川敷ジョギング方式が最適だと思っています。「あー、気持ちいいな」と思えるペースで、同じ問題を解きまくることで、次第に動きが洗練され、思考停止していてもペンが高速で走ってくれるようになります。

人間は、たとえ軽めの負荷であっても、その行為を繰り返すことで、異次元の高みに同じ到達できる生き物です。

これはイチローやネテロやワンパンマンによって証明されているので、疑いようがない事実です。ジョギングくらいの強度の問題を、感謝しながら一日一万回解き続ければ、ペンの動きが音速を超え「パンッ」という音が遅れて聞こえてくるようになります。

というわけで「ジョギング」と「周回」という二つのポイントを意識することで、最上の問題集を選べるようになるのですが、上のふざけた説明だけでは分かりにくかったと思います。以下で、各ポイントを詳しく説明します。

ポイント1.ジョギングできること

問題集を解くときは、ジョギングをするように「あー、気持ちいいな」と感じるくらいの難度の問題を、一定のペースで淡々と解いていくのがおすすめです、とお伝えしました。

「なぜいいのか」という理由は後で説明するとして、ジョギングしやすい問題集と、ジョギングしにくい問題集の見分け方を先に解説します。

ジョギングで大事なのは「無理せず」「一定のペースで」走りつづけることです。そして、その問題集が、無理せず、一定のペースで解き続けやすいかを判断するためには、「やさしい問題が多くて、解説が丁寧か」を見ていただくといいです。

「解説が丁寧か」というのは、一定のペースで解き続けるために重要な要素です。というのも、「数学の勉強法を教えてください(2)」の記事でお伝えしたように、問題を解くときは「答えを見ていい」からです。問題が解けなくて詰まりそうになったら、答えを写すことで、解くペースを保つことができます。

しかし、そのとき見た答えの解説が雑で「ちょっと何言っているか分かんないっす」というサンドイッチマン心理に陥ってしまうと、心が折れて、ペースを崩します。1問を10分で解くはずだったのが、1時間かかってしまった、なんてのはザラにあります。こうした事態を避けるために、解説をできるだけ丁寧に書いてくれている問題集を選びたいものです。

一方、「やさしい問題が多いか」というのは「無理せず」に解き続けるために重要な要素です。

いくら「解けなければ答えを写していい」といっても、10問中10問写していたら、やる気が削がれます。勉強は死にゲーなので、死にまくって覚えるのが基本かつ最速なのですが、「数学の問題集」のように敵の数が多い場合は、やさしい問題をサクサク倒して、やる気を持続させる方がトータルとして経験値を貯めやすいことがあります。

ところで「やさしい問題」とは何でしょうか。

「他人の子どもを平気で叱りつける近所のカミナリ親父」をうとましく思っていたけれど、人生経験を重ねるうちに「あいつ、悪いやつじゃなかったな」と思えることがあります。幼いうちに教訓を厳しく植え付ける。これも「やさしさ」です。

しかし、問題集に求める「やさしさ」はカミナリタイプではありません

「あたし、お菓子がほしいよう。買って買って買って」と駄々をこねたら、「しょうがないね。今回だけだよ」と言いつつも、結局は無限に買ってくれる。問題集に求めたい「やさしさ」は、ちびまる子ちゃんにの友蔵おじいちゃんのようなやさしさです。

「やさしさは カミナリではなく おじいちゃん」
 友蔵、心の一句

子供にお菓子を際限なく買い与える「やさしさ」と言うと、「そんなに甘やかして子どもが成長するかしら」と心配になることでしょう。たしかにその通りなのですが、これが問題集になると「こんなに簡単でわたし成長できるかしら」と心配になるくらいの問題集を選ぶのが無難です。

なぜかというと、問題集を買うとき、私たちの中のサイヤ人の血が騒いでしまうからです。「オラ、強えぇヤツ見るとワクワクすっぞ」となり、自然に難しめの問題集を選んでしまうからです。

サイヤ人の血が騒いで後悔することは、勉強に限らずよく起こります。

  • 「これで腹の肉ともオサラバだ」と意気込んでスポーツジムに入会したが、1回通ってみると思っていたよりキツく、ただ月会費を納め続けるだけになる。
  • 「バイリンガルに、俺はなる!」と意気込んで英字新聞を年間購読したが、今はただのおしゃれな鍋敷きになっている。

というように、私たちは強大な敵を倒せると勘違してしまいがちなので、「自分は月を見ると無意識に大猿になるんだな」と自覚しておくことが重要です。

ちょっと心配になるくらいやさしい問題集だけど、たぶん実際はもう少し難しくて、あとで「あー、気持ちいいな」と感じられるくらいなんだろうなと想像できれば、問題集選びで失敗することはないでしょう。

以上、「解説が丁寧で、やさしい問題集がいいよ」と言えばすむことを、長々と口を酸っぱくして説明しました。

そして「なぜいいのか」を後で説明すると言いました。なぜいいのかというと「長い目で見て貯められる経験値の量が多いから」です。

オジサン臭くて恐縮ですが、すこし昔語りをさせてください。

このブログで偉そうに勉強法を語っているわたくし、実は、典型的なサイヤ人タイプでした。数学の赤チャートにワクワクしてしまった結果、入試の数学で破滅した高校時代。大学に入学後してからも強そうな参考書へのワクワクが止まらず、斎藤正彦先生の「線型代数入門」に手を出して期末試験で破滅しました。

どうしようもないくらい数学の勉強が下手だったのです。それでどうしたかというと、身近にいた東大生の勉強法を真似しまくりました。それで気がついたのが「数多くの優秀な東大生が、やさしい問題集を解いている」という事実でした。線形代数であれば馬場敬之先生の「スバラシク実力がつくと評判の大学基礎数学キャンパス・ゼミ」を使っていたのです。

「もっと早く教えてほしかった」と思いました。

だって、そうじゃないですか。強い敵を倒したら経験値をがっぽり貰えそうじゃないですか。ちょっと経験値が高そうなスライムが転がっていても「なんだスライムか」と唾を吐きかけ、隣の本棚にいる魔王ムドーに挑戦して経験値を稼ぎたくなるものです。

ところが、まさかスライム狩りをした方が早く経験値が貯まるなんて。まさかやさしい問題集をたくさん解く方が成績が良くなるなんて。きっと自分一人では一生気づかずにサイヤ人生活をしていたと思います。

そういうわけで「解説が丁寧で、やさしい問題集がいいよ」というアドバイスは、何回しても足りないくらい、私の中で大事なモノなのです。

長くなりました。続いてもう一つのポイントである周回について説明します。

ポイント2.周回できること

「周回」という言葉があります。決まった道のりを高速で何度も回るという意味で、ゲームのレベル上げをするときなどに使います。

クロノトリガーというゲームをプレイしたことがある人なら誰しも「なげきの山」を延々さまよい、イワンを狩りまくった経験があると思います。あれも周回です。

1体狩ると経験値1000EXPと100技ポイントをくれるのでウマウマなのですが、勉強において「イワン」や「はぐれメタル」のようなウマウマ問題は「残念ながら存在しない」というのが私の見解です。

では、勉強における周回では何を狩ればいいのでしょうか。ずばり全問殲滅です。同じ問題集を頭から解いていって、終わったらまた頭から解き直す、という作業を何度も繰り返す、という周回を行います。

クロノトリガーの「強くてニューゲーム」のイメージです。同じゲームでも、武器とレベルを引き継いで二周、三周すれば、強敵相手に無双できるようになるのです。問題集の難問も周回で倒せるようになります。

じゃあどんな問題集でも周回できるかというと、そうではありません。

問題集を周回できるかどうかは、「試験日までの日数」と「数学にかける時間」との兼ね合いで決まります。どの問題でも瞬殺できるレベルに達するためには、最低でも5周はしたいところです。取り組む問題集として理想的な問題数は、以下の式で表せます。

理想の問題数=試験までの日数 ✕ 1日に解ける量 ÷5周

例として、高校3年の7月にバスケ部を引退したところで、ようやく「本気だす」と受験勉強を始めるパターンを考えてみましょう。嫌に具体的なのは私の実体験だからです。

大学入試まで半年なので、日数にすると「約180日」です。1日あたり2時間を数学の勉強に割り振るとして、1問を10分で解くと見積もると、1日あたりに解ける量は「12問」となります。

つまり、試験日まで毎日勉強すれば、180✕12=2160問の問題を解ける計算になります。よって、問題集を5周するためには、一冊あたりの問題数が2160÷5=432[問]くらいの問題集を選べばいいと分かります。

432問というと、どの問題集がよいのでしょうか。汎用性の高さから「これをマスターすれば東大にも受かる」と噂の青チャートを見てみましょう。青チャートの問題数は以下の通りです。

・青チャートIA 951問
・青チャートIIB 1171問
・青チャートIII 884問
合計:3006問

432問に比べると圧倒的に問題数が多いことが分かります。3000問もあるということは、入試までの半年で、たったの1周もできないということです。「できるっしょ」と甘く考えて青チャートを選ぶと破滅します。

青チャートが向いている方は、高校1年の春から勉強を始め、毎日休まず青チャートを2時間やり続られる、鋼メンタルの錬金術士です。「部活が終わったら本気だす」が口癖である私のような脳筋432問野郎は、もっと薄い問題集を選んだ方がよいと思います。

理系難関大学を目指す人にとっては、数研出版の「数学重要問題集」が選択肢の一つかと思います。問題数は数学IAIIBIIIを合わせて合計300問です。ハイレベル高校生向けなので、解説があまり丁寧ではなかった記憶があります。学習塾などで丁寧な解答集を用意してもらえるならば、選んでもよいかもしれません。ただし、難しい問題が多いので、数学が苦手という方にはおすすめしません

あるいは青チャートを選んで、一部の問題だけを解くという手もあります。青チャートの問題は、基本例題・重要例題・練習・EXERという四つのレベルに分かれています。このうち「練習」だけを解くことにすると、問題数は以下のように減ります。

・青チャートIA 練習のみ 329問
・青チャートIIB 練習のみ 420問
・青チャートIII 練習のみ 293問
合計:1042問

それでも1000以上あるので、432問野郎にとっては手を出しにくいですね。わたしは最近の受験参考書事情に疎いので、よい問題集をお伝えするには限界がありそうです。

もし身近に先輩や先生がいるなら「あのぅ。拙者432問野郎でござるが、解説が丁寧で、やさしい問題が多くて、5周可能な数学の問題集を教えてプリーズ」と聞けば、快く教えてくれると思います。申し訳ないですが、周囲の方に聞いてみてください

まとめ

この記事では「問題集の選び方」について解説しました。ポイントは二つありました。一つ目のポイントは「ジョギングできること」。つまり、解説が丁寧で、やさしい問題が多いものを選ぶことでした。もう一つのポイントは「周回できること」。試験日から逆算して、5周できる分量の問題集を選ぶとよいとお伝えしました。

私は飽き性なので、数学の勉強法を書き続けるのに飽きてきました。またいつか数学の勉強法の続きを書くと思いますが、次回は別の教科の勉強法について、お話したいと思います。

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