研究報告スライドの作り方(1):スライド作成手順前編

Q. 研究報告スライドの作り方を教えてください

大学四年生です。研究室に通いながら卒業研究をしています。卒業研究報告会に向けて「パワーポイントで研究報告スライドを作りなさい」と言われたのですが、どうやって作ったらいいでしょうか?

A. 「直しが入っても低ダメージ」な作り方をお伝えします。

指導教授の好みを知る

研究報告スライド作りお疲れ様です。

まず第一に確認していただきたいのが、あなたの指導教授がどのようなスライドを好むタイプかということです。

パワーポイントは「ドラゴンボールのヒロインはブルマか?チチか?18号か?」ぐらい人によって好みが別れるので、とても難しいです。

あなたの指導教授が18号派であった場合、ブルマ派の私がお伝えしたスライド作成術を使った瞬間、気円斬で真っ二つにされ「やり直し!」と命じられる可能性は高いです。

よって、あなたの指導教授が過去に発表した研究報告スライドの形式をパクるのがベストです。あなたがブルマ派だろうが牛魔王派だろうが、頭を丸めて18号派に改宗すれば、スライドを何度も直す苦行をしなくて済むはずです。

直しが不可避なら、せめて被ダメージを減らそう

しかし、なんらかの事情により、指導教授の方式を真似できない状況もあるかと思います。どうせ作っても直されることは分かっているけれど、スライドを作らなければならないときもあるでしょう。

そんな「負けると分かっていても戦わなければならないときがある」のが人生ですよね。というわけで今回は「直しが入っても低ダメージ」なスライドの作り方をお伝えします

研究報告スライドの見本

見本のスライドをお見せすると、こんな感じです。このスライドは「英単語の覚え方」という過去の記事を参考にしてテキトーに作りました(データはデタラメなので真に受けないでください)。

これがなぜ「直しが入っても低ダメージ」なスライドなのかというと、なるべく手間をかけずに作っているからです。

頑張ると傷つく

スライド作りを頑張ってしまうと「やり直し」と言われたときに厄介なことが二つ起きます。

一つは普通に傷つくということ。もう一つは、直しにかかる作業量が多くなりがちということです。

一生懸命に作るほど「やり直し」のひと言で心に受けるダメージは大きくなります。私くらいの繊細さんになると、手料理を子どもが食べ残すだけで、簡単に傷つくことができます。「この人参しりしり作るのに、わしがどんな気持ちでシリシリしたと思っとんじゃー」と子どもの尻をシリシリしたくなります。

そんな私でも、頑張らずに手抜きして料理つくると、食べ残されても、さほどダメージを受けません。「まあ人参を茹でただけだしな」「皮もむいてないしな」「むしろ今までよく食べたな」とガンジーも驚くほど心は平穏です。

「頑張らない」は心の防御力を上げる魔法なのです。

頑張るほど直しが増える

もう一つの厄介ごとは、直すときの作業量が膨大になりがち、ということです。一生懸命に作ったスライドというのは、テトリスのように、これ以上ないくらい図や文章が綺麗に敷き詰められた状態です。

そこに「その図をあの図を差し替えて」と言われるとどうなるでしょうか。

誰しもビチビチに服が詰まった引き出しの一個や二個はお持ちだと思います。1ミリメートルの隙間もなく夏服が収納されたその引き出しに「このセーターも詰めといて」と言われるようなものです。

そうなると世界の崩壊です。スクラップ&ビルドです。一回引き出しの中身を全部出して詰め直さないとどうしようもないように、スライドだって一度作ったページを捨て、新しくゼロから作り直す羽目になります

その作業だけで疲れます。

スライド作りは頑張らなくてもいい

それだったら、はじめから頑張ってスライドをつめ込まなくてもよいのではないではないか、と私は考えました。

スッカスカの引き出しが案外使いやすいように、スッカスカのスライドも案外読みやすかったりします。

私が提案する「直しが入っても低ダメージ」なスライド作成法は、スライドに書くべきことを極限まで減らすことで、頑張ることをやめられる「ミニリストスライド作成術」です。

とにかく必要最低限しかやらないのがポイントです。

具体的なやり方をお伝えします。スライド作成は、以下の手順で行います。

<前半戦>
手順1.メモ帳を開く
手順2.目次を書き出す
手順3.目次で一問一答をする
手順4.一答を繋いで意味を通す
手順5.一答に対し根拠文を書く
手順6.まとめを書く
手順7.概要を書く
<後半戦>
手順8.パワポを開く
手順9.目次ページを作る
手順10.各ページにメッセージラインを写す
手順11.各ページに根拠文を写す
手順12.図表を作る
手順13.図表にガイドを付ける
手順14.参考文献を書く

手順1.メモ帳を開く

すぐパワポ開く、ダメ、絶対。

最初にしていただきたいのはメモ帳を開くことです。紙でもパソコンでも構いません。大切なのは、文章しか書けない環境をつくることです。絶対にダメなのはいきなりパワポを開くことです。

「スライドを作るのだから、パワポを開く方が作業が進むのでは?」と思うかもしれません。が、私は反対です。暇な時間が多いほど有意義に過ごせるタイプの人ならそれでいいと思いますが、私のように「時間があったら無駄に冷蔵庫をあけて貪り食ってしまう」タイプのダメ人間は、縛りを設けた方が生産的になります

ここでパワポをひらくと、無駄に直角三角形を並べて「サンドイッチ工場が完成!いい仕事したぜ」とか思ってしまうのがオチです。

手順2.目次を書き出す

目次はテンプレをコピペする

メモ帳を開いたら次は目次を書きます。といっても、研究報告スライドの場合、目次に書くことは決まっています。以下の文章をコピペしてください

■背景(みんなにとって重要なあるあるは何か)
■目標(いつまでに何をどの数値まで達成したいか)
■課題(目標と現状の差は何か)
■原因(課題を解決できない原因は何か)
■解決手段(どうすれば課題を解決できると仮説を立てたか)
■実験方法(仮説を検証する方法は何か)
■実験結果(検証したどんな結果になったか)
■考察(その結果からどんないいことが分かったか)
■メカニズム(なぜ仮説が成り立つのか/成り立たないのか)
■まとめ

手順3.目次で一問一答をする

一文で答える

さきほどコピペした目次には、括弧書きで「問い」が書かれています。「みんなにとって重要なあるあるは何か」などです。この問いに、一個ずつ答える作業をします。

重要なのは「一文で答えること」です。私の例だと、こんなふうに答えました。

■背景(みんなにとって重要なあるあるは何か)
英語力を養うには英単語の暗記が重要である。

■目標(いつまでに何をどの数値まで達成したいか)
英単語帳を1年で丸暗記したい。

■課題(目標と現状の差は何か)
従来の暗記法では、学習の継続が難しいという課題がある

■原因(課題を解決できない原因は何か)
結局のところ、飽きるから継続できない

■解決手段(どうすれば課題を解決できると仮説を立てたか)
暗記法の手数を増やして飽きを回避すれば、継続の課題を解決できると仮説を立てた(強欲な壺方式)

■実験方法(仮説を検証する方法は何か)
十人の子どもに提案方式で英単語を覚えてもら

■実験結果(検証したどんな結果になったか)
正答率99%を達成した

■考察(どんないいことが分かったか)
→暗記法の数を増やすと、後半も正答率が伸びると分かった。
→暗記法の数を増やすと、後半もやる気が続くことが分かった。
→暗記法の選び方は、ランダムの方がいいと分かった

■メカニズム(なぜ仮説が成り立つのか/成り立たないのか)
気分転換できるから飽きずに学習時間を続けられる

■まとめ
※まとめは、まだ書かなくて大丈夫です。

難しいと思います。私もうまく書けずに「うーん」と悩むことが多いのですが、ここの手順はどうしても省略できないので、頑張るしかないな、と思っています。

複文を避ける

たとえば、私の例を見て「考察のところが一文になっていないじゃないか」と気づかれたかと思います。どうしても一文に出来ないな、と思ったら、そのときは一文ずつに分割して、並べて書くことをお勧めします。

というのも、問いへの回答が「複文」になってしまうと、スライド作りが非常に大変になるためです。複文とは「今日は暑いし、明日も厚い」のような、主語が二回以上登場する文章のことです。「し」「り」「て」「が」が接続詞として入っていると、まず間違いなく複文です。

このような複文は「今日は暑い」「明日も厚い」という単文に分けられます。この手順3では「複文」にならないように注意しましょう。

手順4.一答を繋いで意味を通す

一答を繋げる

さきほど書いた「一答」たちを繋げて読んでみます。

手順4で確認したいのは「一答を繋げて読んだときに意味が通るか」です。

英語力を養うには英単語の暗記が重要である。英単語帳を1年で丸暗記したい。従来の暗記法では、学習の継続が難しいという課題がある。結局のところ、飽きるから継続できない。暗記法の手数を増やして飽きを回避すればと、継続の課題を解決できると仮説を立てた(強欲な壺方式)。十人の子どもに提案方式で英単語を覚えてもらう。正答率99%を達成した。暗記法の数を増やすと、後半も正答率が伸びると分かった。暗記法の数を増やすと、後半もやる気が続くことが分かった。暗記法の選び方は、ランダムの方がいいと分かった。気分転換できるから飽きずに学習時間を続けられる。
論理が崩れていないかを確認する

なんとなく意味が通っていればOKです。論理的に文が繋がっていないと、強烈な違和感があるはずなので、意味が繋がるまで推敲してみてください。

少し言葉を補うと、自然な文章になるはずです。こんな感じに。

英語力を養うには英単語の暗記が重要である。英単語帳を1年で丸暗記するのが目標だ。従来の暗記法では、学習の継続が難しいという課題がある。結局のところ、飽きるから継続できないのだ。そこで、暗記法の手数を増やして飽きを回避すれば、継続の課題を解決できるのではないかと仮説を立てた(強欲な壺方式)。仮説を検証するために、十人の子どもに提案方式で英単語を覚えてもらう実験を行った。その結果、提案法で学んだ子どもが正答率99%を達成した。暗記法の数を増やすと、後半も正答率が伸びると分かった。暗記法の数を増やすと、後半もやる気が続くことが分かった。暗記法の選び方は、ランダムの方がいいと分かった。気分転換できるから飽きずに学習時間を続けられるため、提案方式が成功したと考えられる。

手順5.一答に対して根拠文を書く

みんなツッコミが大好き

手順4で文章に意味が通ったら、ある意味で報告資料は完成です。こちらが最低限言いたいことを漏れなく伝えられているからです。

これで相手が「あなたの暗記法は素晴らしいですね。ぜひ使わせてください」という気持ちになれば報告は成功です。スライドを作る必要はありません。が、そうはいきません。

なぜなら相手がツッコミ属性だからです。

「一億総ツッコミ時代」という言葉があるように、現代人はツッコミが大好きです。特に研究者という人種はツッコミ中毒です。基本「なんでやねん」の構えで人の話を聞いています。

ツッコまれないための武器=根拠文

あなたの発表が「ボケ」だと思われないように、ツッコミを黙らせる武器が必要です。

たとえば「仙豆は体にいいです。すげぇんです」とおすすめしたのに「なに言ってんだおまえ?」とツッコまれた経験はないでしょうか。

そこで相手の疑問を解消せず、次の話題「だから仙豆を取りにカリン塔を登りましょう」に進むと、相手は呆れて「もういいぜ」と金髪リーゼントを揺らしながら舞台袖にハケてしまいます。

面倒ですが、相手にツッコミの隙を与えないように、逐一黙らせる必要があります

黙らせるには「さも真っ当なことを言っているオーラを出す」ことが大事です。方法は三つあります。根拠を言うか、具体例を出すか、ポイントを伝えるかです。

仙豆を例にしてみましょう。

仙豆は体にええんです。
・根拠: なぜなら一粒で3万3600kcalもの栄養があるからです。
・具体例: S.G.さんは首の骨折を仙豆で治したそうです。

強い根拠や、強い具体例であれば、一つで十分です。弱い根拠しか見つからなければ、二つ用意します。

というわけで、手順4までに用意した「一答」たちに1~2個の根拠か具体例を足していきましょう。私はこれを「根拠文」と呼んでいます。

■背景(みんなにとって重要なあるあるは何か)
→英語力を養うには英単語の暗記が重要である。
・根拠1. 日本人とネイティブでは「英単語量」に10倍の差があるから
・根拠2. 英単語を暗記している人ほどTOEICのスコアが高いから

■目標(いつまでに何をどの数値まで達成したいか)
→英単語帳を1年で丸暗記したい。
・具体例1. システム英単語帳(2180語)を暗記する
・具体例2. 一年後のテストで正当率99%以上を目指す

■課題(目標と現状の差は何か)
→従来の暗記法では、学習の継続が難しいという課題がある。
・根拠1. パン食法はたくさん食べられない
・根拠2. 自慢法は相手の確保が困難
・根拠3. 歌唱法は周りの人が迷惑する
・根拠4. 書き取り法は飽きる

■原因(課題を解決できない原因は何か)
→結局のところ、飽きるから継続できない。
・根拠1. 単純作業だから飽きる
・根拠2. ゲーム性が低いから飽き

■解決手段(どうすれば課題を解決できると仮説を立てたか)
→暗記法の手数を増やして飽きを回避すればと、継続の課題を解決できると仮説を立てた(強欲な壺方式)。
・ポイント1. 既存の手法を試しまくる→飽きる前に次の暗記法へ
・ポイント2. 暗記法を書いた札を壺に入れランダムに引くゲームを開催する

■実験方法(仮説を検証する方法は何か)
→十人の子どもに提案方式で英単語を覚えてもらう
・具体例. 実験条件をまとめた表

■実験結果(検証したどんな結果になったか)
→正答率99%を達成した
・根拠. 正答率が99%をことを示すグラフ

■考察(どんないいことが分かったか)
→暗記法の数を増やすと、後半も正答率が伸びると分かった。
・根拠. それを示すグラフ
→暗記法の数を増やすと、後半もやる気が続くことが分かった。
・根拠. それを示すグラフ
→暗記法の選び方は、ランダムの方がいいと分かった。
・根拠. それを示すグラフ

■メカニズム(なぜ仮説が成り立つのか/成り立たないのか)
→気分転換できるから飽きずに学習時間を続けられる
・具体例1. 従来法のフローチャート
・具体例2. 提案法のフローチャート

うまく根拠文を作れたでしょうか。結構しんどい作業だったと思います。お疲れ様です。ここまでは手抜きができず「手間がかからんとか言ってた割にめんどいやないか。騙された」と感じているのではないかと思います。

手間を省けるのは、後半戦の手順8からからです。もう少しご辛抱ください。

手順6.まとめを書く

まとめの定型文

まとめを書きます。以下の定型文が使えます。

「A」という目標達成に向け「B」を提案した。
検証実験の結果、以下のことが分かった。
(1)「C」
(2)「D」
(3)「E」
本検討により「B」が「A」に役立つことが分かった。
今後は「F」をする予定
定型文を穴埋めする

A〜Eは、すでに用意してある「一答」「根拠文」を入れます。

私の例だと
A:1年間でシステム英単語帳をマスターする
B:強欲な壺方式
C:1年間でシス単を99%以上暗記できる
D:暗記法の数が多いほど、やる気が持続する
E:暗記法をランダムに選ぶほうが、やる気が持続する

そしてFには、今後の予定を入れます。ここは何でもいいです。

手順7.概要を書く

概要という名の先制攻撃

まとめの次は概要を書きます。「まとめと概要は何がちがうんや?」と思ったかもしれませんが、月とセーラームーンくらい違います。

何が違うかというと聞き手の目的が違うのです。

まとめ … 話を一通り聞いた人が、頭を整理するためのもの
概要 … 話を聞いたことがない人が、パッと状況を掴むためのもの

第一印象から「こいつの話つまんねぇ」と思われるのを防ぐための先制攻撃が「概要」です。

今北産業という便利アイテム

スライドの概要を書く上で、とても便利な「今北産業」というものがあります。今北産業は、兵庫県に本社を持つコピーライティング会社です。というのは冗談で、某ネット掲示板に途中から参加した人が「今来たところだから、誰かこれまでの流れを三行で分かりやすく要約してくれ」とお願いする言葉です。

たとえばワンピースを今北産業するとこんな風になります。

・海賊が仲間を集めて宝探し
・「体がゴムだから」で問題解決
・もうすぐラスボス戦

今北産業のすごいところは「ほぼ何も言っていないのと同じ」なのに「なんか話の流れを掴めた気がする」と思えるところです。今北産業があるのと、ないのでは、その後の話の飲み込みやすさが段違いです。

これを利用しない手はありません。

といっても今北産業を書くのは案外難しく「よい三行」を考えようと思えば何時間でも悩めてしまいます。そこで研究報告に限っては、以下のフォーマットを活用するのがよいと思っています。

一行目.ワクワクする提案
二行目.提案のオリジナリティはどこか
三行目.どんな効果が得られるのか

これを使って私のスライドを今北産業すると以下のようになります。

・英単語の暗記に役立つ勉強法を提案する
・1つの暗記法に頼る従来法に対し、提案法では20種類の暗記法をランダムに採用する点が特徴である
・一年間で2180語の英単語を丸暗記できる効果を確認した

もっと短くしてもいいです。

・英単語の新しい暗記法を提案する
・20種類の暗記法をランダムに採用するのがポイント
・一年間で単語帳の丸暗記が可能に

まとめと次回予告

「直しが入っても低ダメージ」なスライドの作り方を紹介しました。本記事では手順1〜手順7を解説しました。次回は残りの手順8〜手順14を解説します。スライドを直されたときのダメージを軽減するには「頑張って作らない」ことが大事だとお伝えしました。と言いつつ、手順7までは頑張る必要があるので「騙された」と感じたかもしれませんが、次回の手順8からは、かなり手を抜けますので、引き続きお読みいただけると幸いです。

次回はこちら

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