研究報告スライドの作り方(2):スライド作成手順後編

見た目はオジサン。頭脳は子供。
みなさま、こんにちは。勉強法ソムリエひろしです。

お待ちかね、スライド作りの時間です。

今回は「直しが入っても低ダメージ」なスライド作成術の第2回目です。
第1回はこちら

前回の記事では、手順1〜手順7をお伝えしました。本記事では残りの手順8〜手順14を解説します。あらためてスライド作成の手順をおさらいすると以下の通りです。

<前半戦>
手順1.メモ帳を開く
手順2.目次を書き出す
手順3.目次で一問一答をする
手順4.一答を繋いで意味を通す
手順5.一答に対し根拠文を書く
手順6.まとめを書く
手順7.概要を書く
<後半戦> 今回はコレ
手順8.パワポを開く
手順9.目次ページを作る
手順10.各ページにメッセージラインを写す
手順11.各ページに根拠文を写す
手順12.図表を作る
手順13.図表にガイドを付ける
手順14.参考文献を書く

では解説していきます。

手順8.パワポを開く

ここでようやくパワポを開きます。

手順9.目次ページを作る

最初に作るページは目次です。このページが一番簡単なので「とりあえずビール」感覚で「とりあえず目次」を完成させて弾みをつけようという算段です。

目次ページの完成形はこちらです。

メモ帳の文章をコピペしただけですね。変に凝らなくても意外にコレで行けてしまいます。

「まとめ」と「概要」のページも、メモ帳からのコピペで作れますので、このタイミングで作ってしまいましょう。

フォントを凝りたくなる気持ちがムクムクと湧いてくると思いますが「頑張らない」がコンセプトなので、ここはグッと堪えて次の手順に進んでください。

手順10.各ページにメッセージラインを写す

次はメッセージラインを書きます。メッセージラインとは「このページで一番言いたいメッセージは要するにコレです」という文章のことです。

メッセージラインがこんなにも大事なものなら、義務教育で教えてほしかった。

メッセージラインが一番大事です。

メッセージラインが無いスライドを見ると、どんなに綺麗に作り込まれていても「それで?」「だから何?」という気持ちになってしまいます。

むかし、不動産屋をめぐっていたときに「要するに」が口ぐせのハズレおじさんに担当されて、イラついてしまったことがあります。一分間に十回くらい「要するに」と言うのですが、まったく要点を得ない話を長々とされるのです。無性に腹が立ちました

要するに、ハズレおじさんに当たって、要するに、話が長くて、要するに、不動産屋を巡っていて、要するに、その日は暑くて、要するに、家探しに難航して、要するに、10年前くらいだったと思うのですが、要するに、「要するに」をたくさん言われたという話です。

わたしくらい心の狭い人間になると「要点がない」どころか「要点を先に言わない」だけでも怒ることができます

一方、自分でも不思議なのですが「要点を先に言ってくれる」だけで、そのあと多少長話をされても耐えることができます。

「スピーチとスカートは短い方がいい」と同じくらい「キーポイント(要点)とポイントカードは先に出した方がいい」と思っています(うまいこと言えませんでした)。

要するに、世の中には私のように気が短い人がいるので、そんな短気野郎から理不尽に怒られないためにも、メッセージラインを書き、さらにそれを一番最初に読んでもらう工夫が必要だ、ということです。

メッセージラインを書くのは難しいことではありません。手順3で書いた「一答」がすでにメッセージなので、これを写せばいいだけです。

その際、メッセージラインを先に読んでもらいたいので「スライドの中で一番目立つ」ところにメッセージラインを置きます

どこかというと、ずばり上です。

人がスライドを見るとき、目線は上から下に移動するそうです。さらに言えば、左から右にも移動するので、アルファベットの「Z」のような動線になります。

図にするとこんな感じです。

メッセージラインを上に置くだけでも、かなり目立ちます。さらに「これがメッセージラインですよ」と視覚的に分かりやすくするために、すべてのページで統一フォントにするのがおすすめです。

全ページにメッセージラインを書き終わったあとの「仕事した感」は異常。

手順11. 各ページに根拠文を写す

すべてのページにメッセージが書けたら、次は根拠文を書きます。根拠文は手順5で作ったものでOKです。

根拠文をどこに書けばいいかというと、メッセージラインの下です。このとき「横に並べる」が鉄則です。縦に並べてはいけません。

図で書くとこんな感じです。

スライドは横長なので、左から右に受け流すのが正義。逆方向に受け流すとムーディ感を出せるが、勇気がないので試したことはない。
縦に並べたら「ダメ、絶対」というわけではないが、自分のような美的センスのない人間がやると、スライドが崩壊する。

前に言いましたが、聞き手の目線は「Z」の形に動きます。メッセージラインを読んだ後は、左から「根拠1」「根拠2」と並べて読めるとストレスが少ないのです。

そう考えると、基本的なスライドは、以下の三パターンしかないことが分かります。

根拠文を書くときですが「メッセージラインよりも目立たせない」ことを意識するのがポイントです。メッセージラインよりも「小さい文字」「少し薄い色」「囲み装飾なし」で書くことをおすすめします。

根拠文は派手にしないが正解。「結局ユニクロでいい」と理屈は同じである。派手な奴は目立っているのではない。浮いているのだ。

スライドの書き方を人に教えると「メッセージラインを目立たせたいなら、メッセージラインを思いっきり派手にすればいいのでは?」というキャプテンバギーな質問をされることがよくあります。

それは悪手です。

メッセージラインを派手にするのではなく、周りを地味にするのが最善手です。そうすると、相対的にメッセージラインが目立ちます。

なぜ、周りを地味にするのが最善なのでしょうか。「美術館」と「雑貨屋」を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。

メッセージラインを派手にすればいい、という考え方は雑貨屋の店内のようなスライドを作るということです。センスのいいポップを立てれば、確かに目を引きます。が、あちこち盛られた店内を見ると「掃除が大変そうやな」というのが私の感想です(もちろんワクワクもしますが)。

一方、周りを地味にすればいい、という考え方は美術館のようなスライドを作るということです。美術館では「作品以外に何もない」ので作品が目立ちます。私の感想は「めちゃ掃除楽そうやな」です。

雑貨屋方式でも、美術館方式でも、メッセージラインを「目立たせる」ことはできますが、掃除の楽さを考えると「ごみ屋敷」と「寺」ほどの違いがあります

掃除が楽ということは、直しが入っても楽ということです。

美術はまったく分からないが、美術館にいると落ち着くのは、私だけだろうか。
雑貨屋さんに入ると、ランチョンマットを買わずにはいられれなくなる。家に大量のランチョンマットがあるのに、なぜなのか。

今回は「直しが入っても低ダメージ」なスライドがコンセプトなので、できるだけ要素を減らして直しの作業量を減らしたいです。そのため、メッセージラインはなるべく派手にせず、周りを極力地味にしましょう。

手順12. 図表を作る

根拠文が書けたら、その下に図表を作って入れます。

「スライドづくりは、いかに図表を作るかだ」と考えている人もいると思います。私は逆で「スライドづくりは、いかに図表を作らないかだ」と考えています。

だって、図表づくりが一番時間がかかるし、直しが大変なんですもん。

実は、手順1~手順11でやってきたことは、全部全部全部全部、図表づくりで手を抜くための儀式だったのです。

私はどうしても「図表で手を抜きたい」と思っています。どうしたら無駄な図表を作らずに済むのか。悩んだ結果、行き着いたのが「買い物リスト」という主婦の知恵でした。

みなさまは、ついつい、買うはずのなかったポテチを買っていませんか? 「えっ!めちゃ安いじゃん」とテンションが上がって豚肉を爆買いしたけれど、使い切れずに捨てていませんか? カレーを作るつもりなのに、カレールーを買い忘れていませんか? 買い物にすごく時間をかけていませんか? これらは全部、私の悪癖です。

私は買い物が苦手です。苦手なのでメモ帳に「買い物リスト」を書いてからスーパーに行くようにしています。そうすると、驚くほどスムーズに買い物できます。余計なことに気を取られず、機械的に商品をかごに入れるだけという状況が良いのだと思います。

これを図表作りにも応用します。

図表の買い物リストをつくる上で、ポイントは二つあります。一つは「図表の個数」を決めることです。もう一つは「図表のゴール」を決めることです。

まず「図表の個数」を決めます。

どう決めるかというと「根拠文」を使います。1個の根拠文に対し、1個の図表しか作らないと決めてしまいます。

私は今回19個の根拠文を書いたので、作るべき図表の数も19個です。

次に「図表のゴール」を決めます。

図表をどこまで作り込めばよいか、については人それぞれに考えがあると思います。私の場合のゴールは「根拠文を示した感が出ればゴール」です。

良い例と悪い例を見てもらうのが早いと思うので、次の図をご覧ください。

図表作りはちょっとした趣味になるのでは?というくらい時間を潰せる。

左の表が悪い例です。右の表が良い例です。

左の表の何が悪いかというと「根拠文を示せた感を出す」というゴールを過ぎたのに、まだ作り込んでしまった点が良くないです。

根拠文は「日本人とネイティブの英単語量には10倍の差がある」です。これを厳密に示すには緻密なデータが必要かもしれませんが「示せた感を出すだけ」ならば、10倍の差があるデータを一つ見せれば十分です。

右の図の良い例を見ると「10倍の差がある感」が出ていると思います。

左の表の悪い例を見ると「10倍の差がある」という事実が、年代別に見ても成り立っており、データに立体感が出ています。

では、どちらが説得力があるでしょうか? おそらく左の表だと思います。しかし、右の図もそれほど説得力に劣るようには見えないのではないでしょうか。

ここが重要です。図表というものは、最初は作り込むほど説得力がグングン増すのですが、いったん「根拠文を示せた感」が出てしまうと、そこから先を作り込んでも説得力があまり増えてくれないのです。

作り込む労力に対して、得られる説得力が見合わなくなると萎えます。あとで直されるリスクを考えると「根拠文を示せた感」が出たところで止めるのがベターだと思います。

手順13. 図表にガイドをつける

最後に「ガイド」をつけます。ガイドとは「この図表はこのように解釈してください」というメッセージがこもった矢印やコメントのことです。

先ほどの英単語量の比較図にガイドを入れると、こんな感じになります。

ガイドがあるスライドを見ると「こいつ、きっといい奴だな」と思う。

右肩上がりの矢印がガイドです。矢印を入れると、何と何を比較しているのかが見やすくなります。「ネイティブの方が多いですよ」とひと目で分かるようになります。

「10倍以上」という文字もガイドです。縦軸を3秒ほど見れば10倍以上だなと分かるので「わざわざ書くことか?」と思うかもしれませんが、わざわざ書くことなのです。

初見の図表は、作り手が思っている以上に、どこを見ていいか分かりません。彼女が前髪を1センチ切ったときくらい分かりません(私だけでしょうか?)。分かるとしたら、その人はエスパーです。

ポケモン初代のフーディンくらい「とくしゅ」の高いエスパーならともかく、聞き手を見て「こいつはスプーンの一本も曲げられなさそうだな」と思うならガイドを付けるのが無難です。

たとえば目標値が決まっている場合、目標値を表す補助線を入れるのも「ガイド」の常套手段です。補助線を入れると「目標値と比較すればいいんだな」と聞き手が分かるようになります。

インターンシップで「目標線を入れろ」と教えられ、目から鱗が落ちた。

昔のページで99%が目標だと説明したじゃないかと思うかもしれませんが、このくらいの親切をしてもバチはあたりませんよ。

つまるところ、図表とは「AからみてBがどうか」を比較するものであり、ガイドとは「Aは何か」「Bは何か」「AとBの差がどの程度か」をひと目で分かるようにするものです。図表にC,D,E,F,G…と要素が増えると、どれがAでどれがBなのかが分かりにくくなるので、ガイドを入れる必要があるのです。

補足ですが、論文の図には「ガイドを入れるな」と指導されることが多いです。これには素直に従ってください。論文の図は「時間をかけてじっくり見るもの」なので、ガイドがなくてもよく、むしろ邪魔になると考える人もいます。一方、スライドの図は「一瞬でパッと意味を掴むもの」なのでガイドが重要になります。

手順14. 参考文献を入れる

これが最後の手順です。参考文献を入れましょう。一枚の参考文献スライドを作る人もいますし、各スライドに入れる人もいます。どちらでもいいと思いますが、スライドが一枚だけ「独り歩き」することがあるので、私は各スライドに入れる派です。

まとめと次回予告

とにかく頑張らないをテーマに「直しが入っても低ダメージ」なスライド術の後半戦の手順を解説しました。メッセージラインを目立たせるために「周りを地味にする」ことをお伝えしました。また、メモ帳だけで戦った前半戦はすべて「図表で手を抜く」ための布石でした。図表は「根拠文を示せた感を出せたらゴール」とすることで、作り込み過ぎを防げることもお伝えしました。

次回は「メッセージライン」の書き方を解説します。
次回はこちら

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