読書感想3.「とんび」重松清

読書感想の第3回。

本の概要

・タイトル:とんび
・著者:重松清(しげまつ きよし)
・出版社:角川文庫
・出版年:2011年
・頁数:420ページ

要約:
直木賞作家が贈る感動小説。父と息子の物語。題名のとんびは「とんびが鷹を生む」に由来する。主人公はザ・不器用な男「ヤスさん」。最愛の妻を亡くし、長男アキラを男手ひとつで育てていくが、途方に暮れることもしばしば。ヤスさんがどうしようもなく駄目な父親なのだが、アキラに人一倍愛情をもって接する姿勢に、涙なくしては読めない。ホリエモンも号泣したらしい。
この本を読んだ理由

私は小説が好きではない。世界観に入り込むのが苦手なのだ。だから、読む本は基本的にノンフィクション。というかエッセイだけである。この本を読んだ理由は、ネットで「面白い本」と検索して出てきたから。「小説か~。ダメなんだよなぁ」と思ったが、妊活をしていた時期ということもあり、父親の心境を知っておこうと考えて読み始めた。そして泣いた。

以下、私のハートに刺さった文章を引用し、雑魚な感想を漏らしていく。ネタバレを含むので先に本書を読むことをお勧めする。

息子を責めない

だが、どんなに悪酔いしていても、ひとつだけ決めていることがあった。後悔は絶対に「タオルを受け取っていれば」から先に進めてはならない。そうしないと「タオルを持ったアキラが駆けださなければ」という悔いが胸に湧き上がって、アキラのあどけない顔をまっすぐみられなくなってしまう。

重松清著「とんび」角川文庫(2011年).

主人公ヤスさんの妻は、物語の冒頭で事故に巻き込まれ、帰らぬ人となった。事故の原因は「息子の不注意」。ヤスさんの職場を見に来た妻と息子だったが、息子が駆けだしたところに重量物がなだれ落ち、それをかばう形で妻が犠牲になった。

当時、まだ子供が生まれていなかった私は、このシーンを読んで「自分が同じ目にあったら、子供を責めずに済むだろうか?」と自問し、自分はきっと子供を責めるだろうと思った。

私が妻LOVEなのもあるが、性格がアイシールド21の一休くらい常に後ろ向きなので「あのとき息子が駆けださなければ」くらいのネガティブな想像は日常茶飯事である。その後、息子と娘が生まれ、今また同じ質問を自分に投げかけているが、うーん、子供をまったく責めないのは難しそうだ。少なくとも、子供を責める大きな要因を抱えての子育てなど辛すぎる。想像するだけで胸がギュッと締め付けられる。

海という父親像

おまえは地面になったらいけん。海じゃ。なんぼ雪が降っても、それを黙って、知らん顔して呑み込んでいく。海にならんといけん。

重松清著「とんび」角川文庫(2011年).

おそらく「とんび」の中で一番有名なシーンである。ヤスさんが「自分なんか生まれてこなかった方がよかったのだ」と悲しい心境を打ち明けた際、幼馴染の父・海雲がヤスさんにかけた愛ある励ましの言葉である。

私は泣いた。辛すぎて泣いた。ヤスさんに感情移入し、辛すぎて泣いた。なんて厳しい言葉だろうと思った。母親のいない寂しさや悲しさを、息子に味合わせないように、ドーンと飲み込んでやれ、と言われたヤスさん。海みたいな広い心を持つことが理想の父親像である、と説かれたわけだが、私はあんまりだ…と感じた。父親だって人間である。悲しくていいじゃないか。寂しくていいじゃないか。私のようにメンタルの弱い人間が「海になれ」と言われたら、その瞬間に全身が爆散し、海の藻屑となる自信がある。

海という父親像は理想だと思うし、それを目指すヤスさんを心底応援したい気持ちにもなるが「むっずかしいなぁ…父親って…」と将来が不安になったことを今も覚えている。

子供を甘やかす

親が子供を甘やかさんかったら、誰が甘やかすんな、アホ

重松清著「とんび」角川文庫(2011年).

この言葉は、子育てする中で何度も思い出した。私の祖父が死ぬほど子供と孫を甘やかす人だったからである。私は死ぬほど甘やかされて育ち、当然祖父が好きだったのだが、その祖父が「親が子供を甘やかさんかったら誰が甘やかすんな」と同じことを言っていた。

どのくらい甘やかされていたかというと、500円するガンダムのプラモデル(SDガンダム)を毎日買ってもらうくらい甘やかされていた(祖父は甘すぎると叱られていたらしい)。その結果、私のように甘い大人が出来上がってしまった。甘やかす教育方針が良かったとは口が裂けても言えないのだが、自分が甘やかされた分、子供も甘やかしてあげないといけない気がしている。

親は偉くない

一つだけ言うとく。健介のことも、うまれてくる赤ん坊のことも、幸せにしてやるやら思わんでええど。親はそげん偉うない。ちいとばかり早う生まれて、ちいとばかり背負うものが多い。それだけの違いじゃ。子育てで間違えたことは、なんぼでもある。悔んどることを言い出したらきりがない。ほいでも、アキラはようまっすぐ育ってくれた。

重松清著「とんび」角川文庫(2011年).

子供のころ、親というか大人みんなが万能に見えた。きっちり仕事して、きっちり家事をして、きっちり子育てもする。大人はみんなそうなのだ、と思っていた。しかし、小学校4年生の時、数学の先生が突然1メートル定規を振りかぶり、私の頬をひっぱたいた辺りから「おや?大人って変なところがあるぞ?」と思うようになった。ちなみに、この1メートル定規事件は、私が無実の罪を着せられた悲しい事件であり、そのあとの私の人生に大きな影を落とした。が、本題はそちらではない。

親も大人も簡単に間違う、ということである。

簡単に間違うからこそ、間違ったとき、いかに早く気持ちを復帰させるかが重要である。私クラスの雑魚パパともなれば、3歳児相手に本気で喧嘩することができ、あとでやりすぎたと猛省している。そんなとき「親って偉くないよな。間違ってもいいよな」と思えるだけで、かなり気持ちが楽になる。そしてまた懲りずに喧嘩をするのである。

以上、とんびを紹介した。とんびは、ELTの恋文のPVくらい泣ける小説なので、小説が苦手という方も、ぜひ読んでみていただきたい。

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