1メートル定規で教師にぶん殴られた話

コラムの第14回。

「定規とものさしの違いってなーんだ?」

こんなクイズがあります。

正解は、定規は正しく線を引くための道具。ものさしは物の長さを測るための道具です。用途が違うんです。

たぶん「なんだよそれー」と思いましたよね? はい。私もそう思いました。定規って、人を殴るための道具ですもんね。

えっ?違う?

いえいえ、そんなはずありませんよ。だって、私は定規で殴られましたもん。先生に。

定規って、勘違いされがちですけど、主な用途は、武器なんですよ。だって、ぶん防具屋で手に入るじゃないですか。だから明らかに武器に分類されているんです。

たとえば、三角定規を見ていると、尖った角に殺傷能力が感じられますよね。竹の30センチ定規も、しなりを利かすと、なかなかの威力が出ますよね。小学生が合法的に入手できる武器ランキングを作ったら、定規はけっこうな上位になると思います。

もちろん、はさみやコンパスの方が、攻撃力は高いですよ。そりゃね。でも、さすがに刃物を人様に向けるのは。ねぇ。どうかしていますよ。お友達にチラつかせたら家庭訪問ものです。

でも定規だったら、仮に人を殴ったとしても、「手が滑った」でギリギリ済まされる雰囲気があるじゃないですか。倫理的にみると、絶秒なバランスでギリギリセーフなライン上にいる武器。それが定規なんです。

さて、定規にはいろんな種類があります。

三角定規。直線定規。平行定規。雲形定規。自由勾配定規。三角スケール。テンプレート。折り畳み定規。T定規。丸鋸定規。ルーペしおり定規なんてものまであります。武器屋が開けそうです。

その中でも、エクスカリバーと言っていい存在がいます。1メートル定規です。

私の小学校では、黒板の横に、長さ1メートル超の、透明なプラスチック製の定規が掛けられていました。1メートルと言えば4歳児の身長くらいです。でかいです。存在感が半端ない。

いかにも聖剣の雰囲気を醸していて、「いったい、いつ使うんだろう?」と、小学生の私は不思議に思っていました。

正しい使い方を教わったのは、小学5年生のとき。算数の授業中でした。

S先生という40代くらいのオジサンが、おもむろに1メートル定規を手に取ったかと思うと、ツカツカと近づいてきて、やや離れた位置から、振りかぶり、しなりを最大限に利かせて、私の顔面を思いっきりぶっ叩いたのです。

あっ、そうやって使うんだ~。射程ひろ~い。

とはなりませんよ!なにしてくれてんねん!この暴力教師!

オッサンが本気でスイングした1メートルは、それはもう、すごいものでしたよ。バチコーン!ってね。インパクトがすごい。教室がシーンとなりました。みんな呆気にとられて。でも、これが意外にも痛くないんです。音が大きいだけ。あと、心に深い深いダメージを刻むだけ。

なんで殴られたの…。

その日の算数の授業は、S先生が一人ひとり順番に当てていき、宿題の答えを言っていく、というものでした。

私は宿題をきっちりやっていたので、パッと答えて、正解しました。ヨッシャ! すると、次は隣の席の女の子が当てられました。宿題をやってこなかったのでしょうね。答えられないようでした。

なんもいえねぇ。北島康介かよ。

とは思いませんでした。あんまりにも辛そうに、もじもじしている女子。見てると、可哀そうだなぁ、助けなきゃ!と思えてきて、私は横から小さな声で、ヒントを出しました。コショコショコショ…。

そしたら、定規でバチコーンですよ。

これって、私が悪いんですかね。たぶんですけど、S先生には、私が横から”からかっている”ように見えたんでしょうね。注意せないかんと思ったんでしょうね。それは分かりますよ。うん。勘違いしちゃったんですよね。分かります。

そしたら、普通は「おいっ!ちょっかいだすな!」と言葉で注意するものではないでしょうか? なにをどう間違ったら、いきなりエクスカリバーで切りかかるになるねん。教育指導どうなってんねん。

こんなんアーサー王ちゃいます。バーサーカーです。
こんなん教師ちゃいます。狂戦士です。

今の時代だったら、問題になる大事件ですけど、当時まだ小さかった私は、殴られたショックと、クラスで悪目立ちした恥ずかしさで、親にも言えず、泣き寝入りしていましました。

だから、定規って武器なんですよ。子供の心を折る、立派な武器なんですよ。真っすぐ線を引くための道具を使って、真っすぐ育つはずだった私の人生を捻じ曲げた、呪いの武器なんですよ。

S先生のことは、どうしようもない奴だったなぁ、と思うことにしています。いろんな人がいますから。一個笑い話ができたと思って許しました。自分はいかなる理由があろうと、定規で人を殴る人間にはなるまいと思っています。

もし私が定規で弱い者をペシペシ叩いているのを見かけたら、今度こそ、1メートル定規でぶん殴ってください。

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