雑魚る技術2.「雑魚は分割せよ」

コラムの第16回。

今回のテーマは「雑魚の分割」である。

合理主義哲学の祖・デカルトは、1637年に「みずからの理性を正しく導き、もろもろの学問において真理を探求するための方法についての序説およびこの方法の試論(屈折光学・気象学・幾何学)」という、タイトルが長すぎて狂いそうな本を著した。

この本は、序論が有名だ。序論だけを取り出して「方法序説」と呼ぶのがメジャーである。方法序説の中では、難しい論理学をスッキリさせるためのミニマリストテクとして、以下の四つ規則が提案されている(その文章はやっぱり長くて全然ミニマルではない)。

第一は、わたしが明証的に真であると認めるのでなければ、どんなことも真として受け入れないことだった(中略)
第二は、わたしが検討する難問の一つ一つを、できるだけ多くの、しかも問題をよりよく解くために必要なだけの小部分に分割すること
第三は、わたしの思考を順序にしたがって導くこと。そこでは、もっとも単純でもっとも認識しやすいものから始めて、少しずつ、階段を昇るようにして、もっとも複雑なものの認識にまで昇っていき、自然のままでは互いに前後の順序がつかないものの間にさえも順序を想定して進むこと。
第四は、すべての場合に、完全な枚挙と全体にわたる見直しをして、なにも見落とさなかったと確信すること。

デカルト著、谷川多佳子訳「方法序説」岩波文庫(1997年).

この中の第二規則が特に人気である。原文のままでは長いので「困難は分割せよ」という短めのキャッチフレーズで使われることが多い。

「困難は分割せよ」を簡単に言うと「わんこそばなら無限に食える(気がする)」である。

100杯のわんこそばを目の当たりにしたことがあるだろうか。重さ1kg。ラーメン二郎の麺+豚+野菜+スープ半分を完食するくらいの重量である。かなりの大食いなのだが、不思議なことに、10gずつ椀に乗せて出されると、無限に食える(気がする)。

つまり、1kgの麺をドン!とワンピースみたいに出されたら「いや食えねぇよ!」となるが、10gずつ小出しにされると脳がバカになって「無限に食える」と錯覚できるのである。

「困難を分割する」というわんこ化手法は、あらゆる問題に応用できる。たとえば、受験勉強やTOEIC対策、ダイエットなどを「わんこ化」すれば、脳がバカになり、無限に勉強でき、無限に痩せられるだろう。わんこそば生誕前にこの方法を思いついたデカルト先生は、正しく偉人である。

さて、雑魚の話に戻ろう。雑魚はなかなか捉えどころのない概念だが、雑魚を小さく分割することで「雑魚とは何か」が見えてくるかもしれない。名づけて「雑魚は分割せよ」作戦である。

雑魚を分割すると、以下の雑魚グループに分けられそうである。

・メンタル系雑魚
・性格最悪系雑魚
・真面目系雑魚
・二軍型雑魚
・無害型雑魚
・矛盾系雑魚
・DQN系雑魚
・狐系雑魚
・乗換型雑魚
・風見鶏型雑魚
・秋空系雑魚
・強がり型雑魚
・言い訳型雑魚
・不眠型雑魚

これら全部を説明しようとすると1冊本が書けてしまうので、本記事では私の所属グループである「メンタル系雑魚」に注目する。各雑魚について詳しく知りたい方は、カレー沢薫さん著「クズより怖いものはない」がたいへん参考になるので、クズ→雑魚に読み替えて、考察してみていただきたい。

メンタル系雑魚とは、思考がネガティブなあまり、些細なことでキャプテンバギーくらいド派手に傷いてしまう、繊細なメンタルを持った雑魚である

メンタル系雑魚は、他人のネガティブ発言をスルメのように長く味わうことができる。たとえば私の場合、小学2年生のときにSくんに言われた「おまえウザいな」というフレーズが頭から離れない。あれから25年間経つが、ドリカムくらい何度でもSくんの言葉を思い出し、いまだに「俺ってうざい人間なのか…」と落ち込むことができる。

メンタル系雑魚は、たとえ他人から悪口を言われなくても、勝手に落ち込むことができる。というのも、ゼロからネガティブ要素を生成する錬金術が使えるからである。負の永久機関である。どうやるかと、赤ちゃんが泣いている→ママに抱かれると泣きやむ→自分が抱くとダメなのに→パパ失格だ→自分は要らない存在である、と変換していくのである。これを無意識に、壊れたSiriくらい勝手に変換できるようになると、相当な雑魚になれる。

メンタル系雑魚は、比較癖がある。勉強がデキる人とデキない自分を比べ「なんて自分はダメなんだ」と落ち込むことができる。現代ではSNSという便利な比較ツールが普及したため、(見なくてもいい)他人のキラキラ生活を覗きみて、簡単に落ち込めるようになった。メンタル系雑魚への敷居がたいへん低い世の中である。ウェルカム・トゥ・ジ・アンダーグラウンド。

メンタル系雑魚は、傷ついたときの被ダメージ量がえげつない。ちょっとここに書くほどには、まだ心の整理がついていないので詳細は省くが、オブラートに包んで言うと、会社に行けなくなったり、生きる自信がなくなったり、家族に色々迷惑をかけたりしたことがある。過去形で話しているが、ごく最近の話だ。

以上、メンタル系雑魚の特徴をいくつか挙げてみた。私のようなガチ雑魚ほどでは無いにしろ、自分にも少しは当てはまると感じる部分があったりするのではないだろうか。このように、雑魚をカテゴリー別に分割して考えると、イメージが具体化され、自分の雑魚性に気付きやすくなる。

まとめると、雑魚る技術2「雑魚は分割せよ」とは、雑魚を細かくタイプ別に分類することで、雑魚に対する感度を高め、今まで気づかなかった自分の雑魚さを知覚する技術である。

人間、自分は雑魚でないと思っていても、どこかに雑魚性を秘めているものである。雑魚が粋がると非常にダサい。自分がどのフィールドで雑魚であるかを適切に自覚し、恥をかかないようにしよう。もし、まだ自分の雑魚ポテンシャルに気づいていない読者がいれば、雑魚の分割に取り組むことをお勧めする。

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