2023年ノーベル化学賞は「量子ドット」だった

コラムの第22回。

今回のテーマは「量子ドット」である。

10月3日、2023年のノーベル化学賞が発表された。受賞したのはこの私、という夢をみたが、本当に受賞したのは、バウェンディさん、ブラスさん、エキモフさんの3人だった。

受賞理由は「量子ドットの発見と合成」である。

若い女性の読者は、人気YouTuberグループ・コムドットの親戚と思ったかもしれないが、残念ながら量子ドットはYouTuberではなく半導体だ。期待を裏切ってすまない。

量子ドットとは、直径2〜10ナノメートルくらいの小さな半導体の粒である。とてもよく光る粒らしく、鮮やかな液晶テレビを作るのに役立つそうだ。

サムスンが量子ドットを使った液晶テレビ「QLED TVシリーズ」を販売している。他にもソニーのBRAVIA、AmazonのKindle Fire HDX 7で量子ドットが使われていたらしい。

何が言いたいかというと、QLED TVにファイアースティックを挿せば、量子ドットの画面にコムドットを映すことが可能なのである。若い女性には朗報である。

さて、大学で物理学を学んだ身としては「量子」という言葉に異様なロマンを感じる。

量子ドットを英語でいうとカンタムドット(Quantum dot)である。野原しんのすけがハマっているカンタムロボと語感が似ているのもポイントが高い。

量子ドットという名前は、量子効果が見えるくらい小さな点(ドット)形状の半導体結晶であることに由来する。

量子ドットのような小さな空間に電子を束縛すると、位置が確定されやすくなる。すると、不確定性原理により、電子の運動エネルギーが高くなる。電子がエネルギーを失うときに光が出るのだが、その光の波長は、電子が失うエネルギー量で決まるため、発光色が変わる。

この原理により、量子ドットの粒のサイズを制御するだけで、発光色を変えられる。これを量子サイズ効果といい、エキモフさんが最初に見つけたらしい。

エキモフさんの発見の数年後、ブラスさんが硫化カドミウムの量子ドットを使って、発光色と粒子サイズの関係を詳しく調べた。この関係式は、ブラス方程式と呼ばれている。

バウェンディさんは「ホットインジェクション法」と呼ばれる方法を使って、高品質な量子ドットの量産法を開発した人である。有機金属試薬を高温溶媒へ急速に投入する方法らしいが、専門外なのでよくわからない。

量子ドットの何がすごいかというと、粒のサイズで発光色をコントロールできることである。普通の液晶ディスプレイは、白い光をカラーフィルターに通して色を抜くので、変換効率も悪いし、発色も良くない。

白色光ではなく、色ごとの光源を用意するほうが綺麗に見える。有機ELがまさにそれで、色鮮やかさでは群を抜いている。しかし、有機ELは有機物を使うので「焼き付き」やすく、あまり強い光を出せない。

そこで量子ドットに注目が集まっている。量子ドットは色ごとの光源を用意でき、なおかつ無機物なので焼き付きの心配がない。明るく、色鮮やかで、省エネなディスプレイを作れるのである。

量子ドットは、ディスプレイ以外にも、医療用腫瘍マーカーや、太陽電池、量子暗号通信にも利用されるという。

…などと偉そうに語ってみたが、ノーベル賞受賞のニュースを聞くまで、量子ドットのことなど、名前しか知らなかった。サムスンが製品化しているとか、受賞されたお三方の名前とか、開発経緯とか、今回調べてみて初めて知ることばかりだった。

浅学で恥ずかしいばかりだが、たいへん勉強になった。きっとこれからテレビやYoutubeで特集が組まれて、もっと量子ドットを身近に勉強できるようになるのだろう。私のような情弱にとって、ありがたい限りである。

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