読書感想7.「なんで僕に聞くんだろう。」幡野広志

読書感想の第7回。

ちょっと言葉を変えるだけで、すごくハッピーになれることって、いっぱいあるんだな~と思います。

徳配りおじさん

私の知り合いに、どんな話を振っても「いや、」と否定から入ってくる、とってもネガティブな人がいます。心の中で「ネガティブおじさん」と呼んでいたのですが、あだ名をつけるくらいでは収まりきらないくらい不快で。どう対処したらいいんだろう、と悩んでいたんですね。

そんな中、閃いたのが「徳配りおじさん」という、前澤友作感あふれるニックネーム。

つまり、この人は嫌なことをしているように見えて、実は私の徳を高めてくれているんだ、徳を配ってくれるありがたい存在なんだ、と捉えてみようと思ったのです。(もちろん心の中で)徳配りおじさんと呼び始めて数日。気持ちに大きな変化が現れました。

前みたいに「いや、」と言われても、「否定してくんじゃねーよ」という不快感が湧かなくなったのです。むしろ、「きたきたーっ!ネガティブのお裾分けやー!ありがたいわ~。今、めっちゃ徳高まってるわ~」と、面白がれるようになりました。これはすごい発見です。

ちょっとした言い方の違いで、ずいぶん心の在り方が変わるものだなあと思いました。

愚痴はおもしろく話せ

他にもあります。先日、「愚痴の言い方」について、とても考えさせられる本に出会いました。末期ガン患者の幡野広志さんが書かれた、「なんで僕にきくんだろう。」という本です。

ガンを公表したら、なぜか人生相談を持ちかけられるようになった幡野さん。真空ジェシカなら「いや、人生相談するとしたらぼくぅ~」とツッコみたくなる状況に、幡野さんは「なんで僕にきくんだろう」と思いながらも、真摯に回答していきます。

その回答が、細木数子くらいズバり言っていて痛快で。しかもユーモアたっぷり。めちゃくちゃ面白いんです。腹を抱えながら一気読みしてしまいました。

ちなみに、タイトルを略すと「なんでだろう」になってテツ&トモ感が出ちゃうので、私は略さず「なんで僕にきくんだろう。」と呼んでいます。「なんの話をしているんだろう。」と思われそうですので、そろそろ真面目に紹介します。

幡野さんに寄せられる人生相談は、言ってしまえば「ほぼ愚痴」みたいな内容だらけでした。そんな「私つらいんです…」と、愚痴を愚痴っぽく書いてくる相談者に対する、幡野さんの返しが恐ろしいほど的確なものでした。

愚痴だったり不幸な話だったり、波瀾万丈の話は、なるべくおもしろく話せるようになったほうがいいよ。そうすればみんなすすんで話を聞いてくれるから。

なんて厳しくて、なんて優しい言葉でしょうか。

普通、「親とモメてて辛くてさ…」みたいに愚痴ってこられたら、「そうなんだ~。つらいね~」と共感すると思います。しかし、幡野さんは違います。「愚痴ってるけどさ、そんなつまんない話、みんな聞きたくないと思うよ」みたいにバッサリ切るんです。なんて厳しい態度でしょう。

でも、幡野さんは突き放しません。厳しさの裏には、おっきな人間愛があるんです。「もっとおもしろく話せるようになったら、みんな進んで聞いてくれるよ」と、アドバイスをするんです。

愚痴る人って、最初は話を聞いてもらえるけど、やっぱりネガティブな話って聞いててつらくなるから、どんどん周りの人が離れていってしまうものです。それが一番不幸です。だから、愚痴を愚痴っぽく話さず、おもしろいエピソードとして話せるといい。それが結局ベストアンサーなんですね。

いや~、すごいですね。何がすごいって、ふつう「愚痴を面白く語れよ」なんて言われたら「そんな難しいことできるかよ」って反論したくなるじゃないですか。でも、幡野さんは末期ガン患者なので、この反論を封じてるんです。幡野さんだからこそ「僕くらい絶望的な立場でも面白く愚痴れるんだから、やってみな?」と言えるんですよね。この説得力たるや。

わたしも面白く愚痴れる人でありたいなぁと思いました。

幡野さんの思うおもしろい人とは?

「愚痴は面白く話せ」がキラーワードすぎて心に刺さりまくります。

なんでこの人の言葉は、心に刺さるんだろう。他にもガン患者さんはたくさんいるのに、どうして幡野さんの文章にだけ、特別な力を感じるんだろう。不思議だなぁ。

※ここから先は編集中です。近いうちにちゃんと書きます!すみません!

ガン患者の前に、ひとりの写真家、人間観察、コミュニケーションについて深く考えてきた人、おもしろいおっちゃんだから。その魅力がそこにあって、そのうえで死後強まる念能力みたいに

幡野さんは、ひと言ひと言に重みがあります。

イチロー選手が人生相談で「僕もサボります」

参考文献)

幡野広志著「なんで僕に聞くんだろう。」幻冬舎(2020年)

さきほど散々ネガティブだの徳配りだの、他人のことをとやかく言っておりましたが、実は私はそんな立場にはございません。私は愚痴り魔です。愚痴を通して、みなさまにネガティブな感情をまき散らす、迷惑系人間なのです。そのせいで、これまでたくさんの徳を配ってしまいました。

先日、「なんで僕にきくんだろう。」という本を読んだときのこと、愚痴り魔の私は、とてもハッとさせられる文章に出会いました。それは、こんな言葉でした。

ひと言でいうと「愚痴はおもしろく話せ」ということ。すごく重みのある言葉だなあと思いました。

というのも、この本の著者・幡野広志さんは、末期ガン患者なのです。つまり、幡野さんは、いま世界で一番「愚痴を吐く権利」を持っている人です。私なら「つらい…」と愚痴るところですが、幡野さんは「おもしろく愚痴った方がいいよ」と言っている。

しかも、幡野さんが教えてくれているのは、面白く愚痴ることは自分のためにもなる、ということです。面白く話した方が、みんな進んで聞いてくれるよと。その方がハッピーだよねと。言われてみると当たり前なのですが、すごく的を得たアドバイス。

また、

ぼくはいろんな人に会うのですが、やっぱり自分とちがう人の話はおもしろいですよ。それぞれの経験がちがうから、見えている世界も、感じている世界もまったくちがいます。おもしろいというのは、ゲラゲラ笑うことではなく、考えさせられるということです。

幡野さんの思うおもしろい人とは?

「誰に相談してんねん」と答えられてお終いです。

しかし、もしユーモアたっぷりに、言いにくいことをズバッと指摘しつつ、愛があふれるアドバイスをもらえたら?それは、どれほど心に刺さるものでしょうか。

本を紹介します。ユーモア

言葉には重さがあり、発する人の生き様によって、重みが軽くなったり、重くなったりするものですよね。

イチロー選手が「ぼくでもサボります」と言いました。

時には、ハンターハンターの念能力のように、死ぬと強まる言葉みたいなものに

本の概要

タイトル:なんで僕に聞くんだろう。
著者:幡野広志
出版社:幻冬舎
出版年:2020年
頁数:269ページ

要約

著者の幡野さんは、死にかけのガン患者(本人談)。ガンを公表したら、なぜか人生相談を持ちかけられるようになった。「なんで僕に聞くんだろう。」と思いつつも、面白おかしく答えていく話。

幡野さんは「もうすぐ死ぬから」という最強の免罪符を持っているので、相談者に容赦なく厳しいアドバイスができる。ひぇ~、そこまで言っちゃう?と読んでいるこちらがドキドキする。

だからといって、冷淡な人間ではない。むしろ、相談者に対して心底真摯に向き合っていて好感が持てる。

幡野さんの相談哲学は一貫している。それは「相談者が持っている答え」を見抜いて後押ししてあげること。それが本人にとって厳しい選択だとしても、である。

この本を選んだ理由

この本を選んだ理由は、特にない。いつもエッセイばかり読むのだが、たまには違ったものも読みたいと思って、図書館をうろうろしていたら、たまたま目に入っただけだ。

出会いは本当に偶然だった。油断して読んだら、とんでもない良書だったもんだから、心にスマッシュヒットした。

本書の魅力はたくさんある。人間関係の核心をついているところとか、死にかけの人の思考回路が興味深いところとか、ズバッと言っちゃうところとか。いろんな魅力が詰まっている。

本当に色々あるけれど、紹介したい一番の理由は「とにかく笑える」ことかなぁ。だって、ガンで死にかけていて、誰よりも不幸な境遇にある人が、「不幸話こそ面白く話そうよ」って言ってるんだもん。しかも、ちゃんと文章が面白い。これって、すごいことだと思う。ぜひ読んでほしい。

以下では、ほんの一部だが、私が心揺さぶられた文章を紹介する。

自分の生き方に責任がとれるのは自分だけ

病気になりたてのあなたに、引退したのに部室に顔を出すウザくて病弱な先輩ヅラしてアドバイスしちゃいますが、あなたの苦しさは誰にも理解されません。自分にしかわからないのです。(中略)理解を期待するだけ裏切られたような気分になり、よけいに苦しみます。最初から期待しないでください。あなたの旦那さんのことです。

幡野広志著「なんで僕に聞くんだろう。」幻冬舎(2020年).

相談者は30歳手前の女性。

子宮がんになり、即刻切除するか、子供を産んでから切除するかで悩んでいる。死のリスクを伴う判断に答えが出せず「神の問」だと相談者は感じている。しかも、病気のことだけでもいっぱいいっぱいなのに、追い打ちのように夫といさかいが発生し、頭がパンクした、という相談だった。

これに対し、幡野さんは「夫に理解を期待してはダメ」と断言。

自分の生き方に責任がとれるのは自分だけであり、自分の命が掛かっているんだから、好きにしなさいとアドバイスした。

私はこれを読んで戦慄した。

悩んで苦しんでいる相談者に「あなたの苦しさは誰にも理解されません」なんてキツイ言葉、普通言えるだろうか。たいていの人だったら「苦しいよね、旦那さんに分かってほしいよね」と共感するところである。

たぶん私でも共感する。

でも、「あなたの苦しさは誰にも理解されません」と言われて、相談者は嬉しかったと思う。幡野さんのアドバイスを読んで分かったのだが、この相談者は「夫に相談したところで答えは出ない」と薄々感じている。

夫に相談しても無駄だと思っている一方で、「子供のことだから夫の意見も尊重しなければ」と律儀に考えているのだ。死のリスクを前にしてなお、他者を気遣える、優しい人だ。その優しさが首を絞めていることに、本人は気付いていない。

幡野さんの人生相談スタイルは「相談者の内なる欲求を後押しする」である。

相談者が「夫に忖度せず自分で決めたい」と潜在的に思っていることを、幡野さんは見抜いていた。その結果が、あなたの苦しさは誰にも理解されません、だったのだ。

決して「神の問」なんかじゃないですよ、それはただの現実逃避です。オレそんなこといってないし。って神さまの声が聞こえます。

幡野広志著「なんで僕に聞くんだろう。」幻冬舎(2020年).

真面目な相談なんだから、真面目に答えるべきなんだろうけど、幡野流は面白スパイスも忘れない。不幸話こそ面白くあるべきだっていう信念が「オレそんなこといってないし」の部分に込められている。いやぁ、すごい。すごいしか言葉が出ない。

コミュニケーションが下手な人は「距離感が近すぎる人」

本当にコミュニケーション能力が低い人というのは、相手との距離感が遠い人ではないんです。相手との距離感が近すぎる人のほうが、むしろコミュニケーション能力が低い人なんだとおもうようになりました。
それってたとえば、自分のことをずっとしゃべっている人だったりします。(中略)距離感が近すぎる人というのは、どうでもいい、つまらない話を延々と、相手にまったく口を挟ませずにするような人です。

幡野広志著「なんで僕に聞くんだろう。」幻冬舎(2020年).

幡野さんは、つまらない話に厳しい。

残り時間が少ないから人より敏感なのかもしれないけど、たぶんガンになる前から、こういう性格だったんだろうと思う。「たのむから、面白く話してくれよ。そしたら聞くから」って姿勢。

相手との距離感って大事だ。

幡野さんが発見したのは、距離感が遠い人よりも、距離感が近すぎる人の方が、コミュニケーション能力が低いということ。たとえば、自分のことをずっとしゃべっている人(しかも面白くない話)はコミュ力が低い。

なぜ私がこの文章を取り上げたか。「そうそう」と共感したからではない。

「それって、わしのことやんけー。ぐっはぁー」と密かに大ダメージを受けたからである。自分に向けられた言葉のように感じた。言葉のナイフで黒ひげ危機一髪くらい刺された気分である。どっかにポーンと飛んでいきそうだ。

幡野さんの言葉は芯を食ってくるから困る。

愚痴はおもしろく話せ

愚痴だったり不幸な話だったり、波瀾万丈の話は、なるべくおもしろく話せるようになったほうがいいよ。そうすればみんなすすんで話を聞いてくれるから。

幡野広志著「なんで僕に聞くんだろう。」幻冬舎(2020年).

愚痴マウント、不幸マウント、波乱万丈マウント、という言葉がある。いや、本当は無くて、今私が作ったのだが、こうした言葉があっておかしくないくらい、世の中には「愚痴を愚痴っぽく話す」スタイルが流布していると思う。

まあ、そうだろう。だって、本人が辛いんだもん。

それを「お前の愚痴つまんねぇから、聞きたくねぇ」って言える幡野さんは強すぎる。言っても許される雰囲気がある。おそるべし、がん患者の免罪符。

「おもしろく話せ」って厳しい言葉だ。

だが、厳しいだけではない。優しい言葉でもある。ただ単に「お前つまんねぇ」と言っているのではなくて「おもしろく話したらみんな聞いてくれるよ」ってアドバイスをしているのだ。建設的である。

優しいついでに、おもしろいとは何か、についても以下のように教えてくれている。

ぼくはいろんな人に会うのですが、やっぱり自分とちがう人の話はおもしろいですよ。それぞれの経験がちがうから、見えている世界も、感じている世界もまったくちがいます。おもしろいというのは、ゲラゲラ笑うことではなく、考えさせられるということです。

幡野広志著「なんで僕に聞くんだろう。」幻冬舎(2020年).

おもしろいとは、価値観の違いである。

なぜ、みんながこぞって幡野さんに人生相談をするのか。それは、幡野さんの話がおもしろいからだろう。「そういう人もいるよね」って、価値観の違いを認めて話すから、おもしろく感じる。ましてや、がん患者で死にかけである。死と隣あわせの人の価値観って、わたしたちと全然違う。だから、幡野さんのアドバイスはいっそう面白くなる。

幡野さんはズバズバものを言うので、ネットでけっこう炎上しちゃっているらしい。反感をもつ人もいるだろう。だが私は、幡野さんみたいな面白い人に、一日でも長生きしてほしいと、切に願う。

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