読書感想8.「吉本芸人に学ぶ生き残る力」本多正識

読書感想の第8回。

本の概要

・タイトル:吉本芸人に学ぶ生き残る力
・著者:本多正識
・出版社:SPA!BOOKS
・出版年:2014年
・頁数:238ページ

要約

お笑い養成学校NSC(吉本総合芸能学院)の講師である本多さんが書かれた本です。吉本の芸人さんたちを育て、関わりあってきたからこそ感じる「お笑い界で生き残るために必要なもの」を学べる本でした。

お笑い芸人さんというと「特殊な世界なんだろうなぁ」という印象があります。しかし、芸人さんたちのサバイバル術を聞いてみると、私みたいなサラリーマンにも通じるところがたくさんあるというか。やっぱりコツコツ努力することとか、礼儀をちゃんとするみたいな、基本が大事なんだと思いました。

この本を選んだ理由

ここのところ、ピンチでどうやったら笑えるか、についてばかり考えています。

きっかけは、カレー沢薫さんの「負ける技術」を読んだことでした。このブログのコラム第1回で紹介した本ですね。この本の中に「窮地で笑えるユーモアが大切だ」という文章があるのですが、それを見たときに「これだ!」と。ビビッと来たんです。毎日が窮地な私には、ユーモアが足りないんだとハッキリ思いました。

それから「ピンチを笑い飛ばせるようになりたいなぁ」と考え続けるようになりました。でも、どうしたら笑えるようになるのか分かりません。そうだ。分からないなら、笑いのプロに聞こう。ということで、お笑い養成所の先生の本を読んでみました。

愚痴や陰口はネタにしろ

気持ちはわかります。どうしても愚痴や陰口を言いたくなることはあるでしょう。でも、もし言うのであれば芸人さんたちのように、せめて最後は笑いで終わるようにしてみてはいかがでしょうか。

本多正識著「吉本芸人に学ぶ生き残る力」SPA!BOOKS(2014年).

本多さんは本の中で「愚痴るときは最後笑いで締めましょう」と書かれていました。これは、カレー沢さんの「窮地で笑えるユーモアが大切だ」と同じことを言っています。この言葉に出会いたくて読んでいたので「ちゃんと書いてくれてる。よかった」と安心しました。

笑いは常識を覆して起こせ

私はNSCの生徒たちから、よくこんな質問をされます。「人を笑わせるにはどうすればいいんですか?」 そのたびに私はこう答えています。「ニュースを見なさい」 ここで彼らはみな首をかしげます。(中略)人を笑わせる代表的な手法に「常識を覆す」というものがあります。(中略)「非常識」は「常識」があるからこそ成立するのです。

本多正識著「吉本芸人に学ぶ生き残る力」SPA!BOOKS(2014年).

私がこの本を読んだ動機を簡単に言うと「人を笑わせるにはどうすればいいんですか?」と著者に行きたかったからです。どんなアドバイスをしてくれるのか、すごく期待して読みました。その期待に本多さんはちゃんと応えてくれました。人を笑わせるには「ニュースを見ればいい」のだそうでs。

別の言い方をすると、常識をたくさん学びなさい。そして、その常識を覆してみなさい。そうすれば笑いが起きますよ、ということですね。

ある構成作家さんが言っていたのですが、笑いは基本的に「〇〇なのに××」という構文でなりたっているそうです。〇〇の部分が常識。××は、常識を踏まえた上で、それを覆すワードです。〇〇なのに××を作るためには、常識をたくさん知っておくと有利だ、ということを本多さんは言いたかったのではないでしょうか。

たとえば。常識を覆す笑いで言うと、霜降り明星・粗品さんのフリップネタにこんなのがあります。

女の子の恐竜が「その女だれよ!」と叫んでいる。
叫ばれているのは彼氏と思わしき男の子恐竜。
その横には、浮気相手っぽい女の子恐竜。

粗品さんがツッコむ。
「ジェラ期!」

「ジュラ紀」と「ジェラシー」を掛けていて面白いというネタですね。これを「〇〇なのに××」構文で表すと、「恐竜がいるから普通はジュラ紀、なのに、ジェラシーと掛けてジェラ紀」となります。

人の技術を盗む

本多さん「今も毎日、欠かさずやってることはある?」
山里さん「そうですね、シンプルに新聞を読むこと。あと、その日の仕事で自分のダメだったポイントと、感動するくらい面白かった人のフレーズとかはメモったりしてます
(中略)
山里さん「僕もすぐ携帯に打ち込みます。あれは忘れなくていいですよね」

本多正識著「吉本芸人に学ぶ生き残る力」SPA!BOOKS(2014年).

本書では、南海キャンディーズの山ちゃんこと、山里亮太さんにもインタビューをされています。山ちゃんといえば大変な努力家で有名です。その山ちゃんが面白くなるためにやっている習慣が勉強になるなぁと思いました。

山ちゃんは、面白さを磨くために、人の面白フレーズをメモしているらしいです。

ハッとさせられました。私は甘かったなと。本を一冊読んだくらいで「面白く愚痴れるようになる」と期待してしまっていた自分がだいぶ恥ずかしいです。山里さんほどの一流の芸人さんでも、面白くなるために、面白フレーズを日々書き溜めて勉強しているんです。ましてや素人である私が面白くなるには、並大抵の努力では足りないはずです。

さっき「常識を覆す」を習いましたが、単にその知識を得ただけで、愚痴を笑いとばせるようにはなりません。それはいたって当然のこと。愚痴を笑いとばせるくらいのお笑い力は、きっと一朝一夕では身につかないんです。面白いフレーズをメモして。芸人さんの技術を盗んで。ブログに書いて試してみて、いっぱい失敗して、ようやく「少し面白く話せる」レベルになる。そういうものなのだと思い知らされました。

どれだけ面白の練習をしたか。どれだけ面白ワードの弾を持っているか。そういった地道な努力が重要だということに気付けただけで、この本を読む価値があったなと思えました。

結局はリスペクト

カウスさんの先輩に対する深い尊敬の念、そして姿勢に感銘を受けた私は、NSCの最初の授業で必ずこう言うようにしています。「漫才やコントができるのも、先人が道を作ってくださったからだということを忘れないように。上手下手、面白い面白くないの前に、真摯な姿勢でやっていこう

本多正識著「吉本芸人に学ぶ生き残る力」SPA!BOOKS(2014年).

さて、私は「面白さを磨くには?」という変な視点でこの本をレビューしてしまっていますが、そもそも本書の狙いはタイトルにある通り、芸人として「どうやったら生き残れるか」に関わるマインドセットを伝える点にあります。

どうやったら生き残れるか。

一言でいえば「人間力」だそうです。まわりへのリスペクトを欠かさずに、人間として真心をもって接することが一番大事なんですね。あいさつをちゃんとするとか、礼儀正しくするとか、そういうことが生き残る力だと本多さんは言います。

なんだ、芸人さんもサラリーマンと一緒じゃないか、と思いました。

私は研究職のサラリーマンという、ちょっと変わった仕事をしているけれど、根っこは一緒だなぁと。社会人として8年働いてきました。なんとなく分かってきたことがあります。頭がいいとか、仕事ができるとか、発想が独特とか、そういったスキル的なものは些末なことだということです。「この人と仕事すると楽しいな」と思える人間力がある人が、なによりも強いと私は感じてきました。

お笑いの世界も同じなんですね。

テレビ的に面白いことが求められるとはいえ、結局のところ、仕事が続くかどうかは人間関係次第。「この人と仕事すると気持ちいな」と思ってもらえることが大切なのだと学べました。

本書を読んで、お笑いの世界のことを少し覗けたことがとても興味深かったです。それに、意外と自分の会社生活にも通じるところがあるなあと思えて、たいへん勉強になりました。

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