予備ノリたくみさんの「理系に寄せすぎた粗品」を分析して笑いのパターンを抽出してみた

コラムの第36回。

今回のテーマは「理系のお笑い」です。

「理系に寄せすぎた粗品」の衝撃

今年、教育系Youtuberの「予備ノリたくみさん」が、名古屋大学の学園祭で講演をされました。その内容が凄いと話題です。講演タイトルは「統計物理学への招待」。後半で「理系に寄せすぎた粗品」というフリップ芸があるのですが、これがめちゃくちゃ面白いんです。

予備ノリたくみさんといえば丸顔。「アンパンマンみたい」と自虐されることもあります。しかし、私は思いました。頭に詰まっているのはつぶあんだけではない。笑いのセンスでパンパンマンなのだと。

ここからはネタバレを含みます。動画をまだ観ていない方はぜひ以下のリンクから一度ご覧ください。

予備ノリたくみさん「理系に寄せ過ぎた粗品」より

動画を見ての通り、霜降り明星・粗品さんのフリップ芸を理系風にオマージュした漫談です。「フェルマーの採集定理ですね」は会場が揺れるくらい湧いています。率直に面白すぎますね。

理系研究者は笑いを求めている

理系研究者というと「ジョークの通じない堅物」というイメージがあるかもしれません。そういう人もいますが、実際は、理系研究者の中にもお笑い好きはけっこういます。

私もお笑い好きです。私の周りには発表でウケをとる超人研究員がいて、そういう人を見るたびに「すごいなぁ」と思います。自分もやってみようと思って、研究発表にジョークを混ぜるのですが、なかなかうまくいきません。あれ?液体窒素まいた?くらい会場が冷え込みます。

それでも「ジョークを入れ続けたい」と思います。だって、真面目な話って、つまらなくないですか? 研究の着眼点がよっぽど独創的だったらいいんです。真面目にやってもらっても。楽しいですから。でも、しょぼい研究を真面目に話されるとシラけます。

真面目に研究発表している大学教授たちは、実力があるからあのスタイルで生きていけるんです。私のような木っ端研究者が真似して真面目にやると「あれ?ここ深海かなっ?」ってくらいシーンとなります。

だから、研究力に自信がない人ほど、研究発表におもしろパウダーを振りかけておくことが大事だと思います。面白い話だったら、なんのタメにならなくても聞けますからね。

どうやって理系笑いをとるか?

ただ、問題はどうやって笑いを取るかです。これは私の持論ですが、研究発表で笑いを取りたかったら、面白い研究者の笑いの取り方を徹底的にパクるしかないと思います。

そうなると、予備ノリたくみさんほど巧みに「理系笑い」を取れる人はそうそういないので、ぜひパクらせていただきたいです。予備ノリたくみさんだって、粗品さんのスタイルをパクっているのですから、文句は言えないでしょう。いいものはみんなでシェアしましょう。

とはいえ、パクるといっても、簡単ではありません。同じ理系ですが、研究分野が違うので、同じネタを使うことはできませんからね。抽象化する必要があるんです。言い換えると、笑いの構造を分析して、笑いのパターンを理解する作業をしなければパクれないんです。

理系笑いのパターン分析

そこで今回は、予備ノリたくみさんの「理系に寄せすぎた粗品」のお笑い理論を私なりに分析して、研究発表に活かせるような笑いパターンを抽出したいと思います

先に結論を言うと、予備ノリたくみさんの「笑いパターン」を以下の4つに分類できました。

1.理系あるある
2.同音異義変換
3.有名問題の台無し化
4.幼稚変換

パターン1.理系あるある

一つ目のパターンは理系あるあるです。説明不要かもしれませんが、あるあるは面白いです。

お笑い芸人さんで言えば、テツandトモさんの「なんでだろう」、レイザーラモンRGの「あるある早く言いたい」、レギュラーさんの「あるある探検隊」が有名ですね。

「なんだ一発屋ばかりじゃないか」と思った人は、失礼ぶっこき丸です。一発当てることのすごさを過小評価していますよ。研究者という人種はそもそも一発屋です。その一発もあてられずに終わる輩が五万といます(私のように)。だから、瞬間最大風速的にでも一世を風靡できるのは凄いことなんです。

さて、予備ノリたくみさんの例で言えば「体験授業のネタ」が理系あるあるパターンです。たとえば、こんなやつです。

「あっ。予備校の体験授業ですね」
「ありますね、こういうのね」
「どんな授業あるんですかね」

<本日の体験授業一覧>
・数学:箱ひげ図
・物理:熱容量、比熱
・化学:浸透圧の式
・生物:バイオーム

「最悪!ハズレの日だこれ!」
「どれもクソ面白くない」

うまいですね。このネタの場合、最初に「予備校の体験授業ですね」というフリがあるのがポイントです。聞き手の頭の中に「体験授業ということは楽しい授業なんだろうな」というイメージが作られます。そうすると、「授業のテーマが面白くない=ハズレの日だ」で予想が裏切られてオチます。

以前、オードリー若林さんが言っていたのですが、素人でもオチはけっこう作れるそうです。一方、フリまでやる人はめったにいません。素人とプロの違いは「フリができるか」だ、とのことです。

さて、予備ノリたくみさんのネタは、面白くない授業のテーマのチョイスもいいですね。「箱ひげ図」や「浸透圧の式」など、理系研究者なら一度は受けたがことがある「つまらない授業あるある」です。共感がえられやすいところを突いています。

パターン2.同音異義変換

二つ目のパターンは同音異義変換です。たとえばこれです。

(おじさんがきのこ狩りをしている絵を見せる)
「これは・・・フェルマーの採集定理ですね」

元ネタは「フェルマーの最終定理」ですね。採集と最終が同音異義語になっています。

聞き手は、まずきのこ狩りの絵を見せられるので、「この絵なんだろう・・・」と考えます。これがフリですね。そこに「フェルマーの採取定理ですね」という説明が入る。だから「そうきたか!」と笑えます。

同音異義変換とは、いっちゃえばオヤジギャグです。しかし、フリがしっかりしていて、なおかつ簡単には想像がつかないワードやイラストを使えば、笑いが起きます。とても真似しやすいパターンだと思います。

同音異義変換には2つのパターンがあります。理系ワードを普通ワードに変換するパターンと、普通ワードを理系ワードに変換するパターンです。

■理系→普通変換の例
・最終定理 → 採集定理
・はねかえる係数 → 羽蛙係数
■普通→理系変換の例
・名大祭 → 命題祭

パターン3.有名問題の台無し化

三つ目のパターンは有名問題の台無し化です。

○○問題の前提を□□したら台無し

というフォーマットを使えば、簡単にフリップネタを作ることができます。

たとえば、モンティ・ホール問題。

モンティ・ホール問題の説明をしておきますね。モンティ・ホール問題は、3つのドアの中から1つだけある正解のドアを選ぶ問題です。最初に回答者が1つのドアを選びます。その後に、回答者は「残る2つドアのうちの1つ」がハズレであることを告げられます。回答者は、最初に選んでいたドアに正解がある確率が高いか、それとも、残り1つのドアに正解がある確率が高いかを考えていく・・・というものです。

さて、この問題は、「正解のドアがまだ見つかっていない」という前提のもとに成り立ちます。この「前提部分」に注目した予備ノリたくみさんは、「1個目のドアを開いたら、正解しちゃった!」というフリップを見せ、「気まずっ!」と突っ込んで笑いにしています。

つまり、正解を先にみつけちゃったから、問題が台無しになっちゃったところに面白みがあるんです。

モンティ・ホールのような有名問題を使うことで、聞き手の「こうなるであろう」というイメージが簡単に作られます。フリがしっかりするんです。だからオチやすくなります。

この他にも、相対性理論でよく使われる「双子のロケット問題」に対し、地球に残った弟がスキンケアをして若作りするというパターンもあります。

パターン4.幼稚変換

最後のパターンは、幼稚変換です。

理系の難しい専門用語には「大人っぽさ」あります。これを逆手にとって、子供がよく使うワードに変換すると、ギャップが出て面白くなります。たとえば、こんな感じです。

(電車ごっこをする子供たちのイラストを見せる)
「あっ。懐かしいですね」
「幼稚園のころとかよくやってました」

イラストの男の子「RNAポリメラーゼ楽しい」

「転写ごっこだ!これ!」

「DNA塩基配列の転写」を「電車」で韻を踏んで言い換えています。転写というワードの大人っぽさが、「電車ごっこ」という幼稚なワードとのギャップを生んでいて楽しいですね。

自分でもネタをつくってみた

ここまで予備ノリたくみさんの笑いの取り方を学んできました。間のとり方や、ツッコミワードに細かく気を使う必要があるにせよ、意外にも、ここまで紹介したような「型にハマったベタなパターン」で会場が大ウケしていることが分かります。

ということは。自分でも予備ノリさんの型を使わせてもらえれば、大爆笑をとれる可能性があるということです。ちょっと型を借りてネタを作ってみました。

ネタ1.同音異義変換

「あっ。これは・・・」

「ネイピア数個のネピアですね」

ネタ2.幼稚変換

「核れんぼだ!これ!」

ネタ3.有名問題の台無し化

「これは・・・。動物愛護団体に配慮したシュレディンガーですね」

まとめ

予備ノリたくみさんのネタに感動したので、どうやったらお笑いテクを盗めるか、いろいろ分析してみました。結論:簡単には盗めない。やっぱりすごいです。予備ノリさん。

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