人生で一番おいしかったものTOP5

コラムの第39回。

以前、まずかったものTOP5をやりました。味をしめたので(食べ物だけに)、今回はおいしかったものTOP5を発表したいと思います。

第5位.駅前のインドカレー

まず挙げたいのが、小さいときにインドカレー屋さんで食べたディナーセットです。

18歳まで田舎で暮らしていました。田舎の子供にとってカレーとは「給食の平凡カレー」。あるいは母が作る「ボンカレー」でした(こくまろだったかも?)。田舎すぎて店がないんです。かろうじて、CoCo壱という選択肢もありましたが、非凡なカレーに出会うことはありません。

いちおう知識として、世の中には、CoCo壱を超える究極のカレー「インドカリー」が存在するらしいということは知っていました。でも、きっとそれはトーキョーのような大都会までいかないと食べられない代物だろう。そう思っていたんです。

ところが、私のカレー歴に転機が訪れます。小学校3年生のときでした。「カレー食べに行くよ」と両親に連れられ、着いた先が、ガチのインド人が営んでいる本格インドカリー屋さんでした。

お店は駅前にありました。案外近くにあるものだと思いました。ですが、私が知らなかったのも無理ありません。目立つ店ではなく、路地の奥に進まないと店構えすら拝めないような、隠れ家的カレー屋だったんです。

店内は薄暗く、オレンジ色のライトで照らされていました。店の奥では、ご主人(インドの方)がナンをこねていました。壁を見ると、エスニックな装飾品が一面に飾られています。初めて体験する異国空間。子ども心に「これはとんでもないところにきたのではないか」とドキドキしました。

出てきたのはカレーナンセットでした。ファーストインプレッションは「なにこれ!」。これまで私が通ってきたカレーとはすべてが違いました。カレーがオレンジ色なんですけど…。

さっそくナンとやらを口に放りこみました。うまい。甘いんですね…。意外だぁ…。

横に赤いフライドチキンみたいなやつもあったので、恐る恐る食べてみます。あっ、これは辛いんだ…。10歳の舌なので詳しく覚えていないのですが、とにかく美味かった記憶があります。夢中で食べる私。大満足で帰りました。

ところが、それで終わりませんでした。

あのカレーがまた食べたくなったのです。食べたい。どうしても食べたい。「たのむからカレーをたべさせて!あのインドのやつ!」両親にお願いしました。

両親は、わかったと。「そんなに言うなら二人で食べといで」。軍資金をゲットしました。兄と私の分を合わせて諭吉さんをひとりいただきました。明らかに大金。小2にとっての諭吉は現在の価値に換算すると10兆円に相当します。私ら兄弟は10兆を握りしめて再び幻のカレー屋を訪れました。

席につく兄。私は対面に座りました。子供だけで外食をするのですら、これが初めてでした。ましてや異様な雰囲気のインドカレー屋さん。すごく緊張しました。メニューをひろげます。「あっ」。そこで気付きました。このまえ食べたのがどれか分からないんです。メニューにはこう書いてありました。

・Aセット:1000円
・Bセット:2000円
・Cセット:5000円

兄と目が合いました。「どれだっけ…」。兄も分からない様子。以前の記憶を必死で掘り起こしました。とにかくたくさん皿が並んでいた気がします。ということは、Aセットではなかろうと考えました。だとしたら、Bセットだろうか。いや、もしBセットで物足りなかったらどうするんだ。せっかくここまで来たんです。Cセット。これで間違いないと思いました。

私たちはCセットを2つ注文しました。

「オマタセシマシター」。テーブルの上に並べられる皿。皿。皿。圧倒的な量の皿。やばい。明らかに前食べた量より多いです。満漢全席かと思う皿の量。気付きました。前食べたのはAセットだったのだと。

ですが、注文してしまったものは仕方がありません。こうなっては楽しむ他ないでしょう。ポジティブな私たちは、気持ちを切り替え、目の前に広がる10兆円のインドカリーを食べました。このカレーがいまだに忘れられなません。親の金を散財した背徳感(1万円が大金であることをこのとき初めて認識しました)。願いかなったインドカリーとの再会。

今やいいオジサンになり、あのインドカリーより美味しいとされるカレーはたくさん食べてきました。それでも、あのインドカリーに優るものはないと、私は思っています。

第4位.のどぐろの握り

寿司ネタでびっくりするくらい美味いと思ったのが、石川県でたべた「のどぐろ」の握りでした。

のどぐろは、主に日本海で獲れるお魚です。別名アカムツ。白身魚でありながら、とても甘く、うま味が強いのが特徴です。「白いトロ」と私は呼んでいます。

のどぐろを初めて食べたのは25歳くらいのときでした。味が落ちやすい魚なので、私の住んでいた田舎や関東では、寿司ネタとして流通していなかったんです。旅行で石川県を旅行で訪れた際、お寿司屋さんに入って「これがのどぐろか!」と。

のどぐろにまつわるエピソードは以上。フラッと立ち寄った寿司屋で食べたのどぐろが「うまっ!なにこれっ!」となっただけす。それだけだからこそ、逆に言えば、思い出補正なしに美味い寿司でした。

私の美味いものランキングは思い出補正バリバリなので、純粋なうまさで言えば、のどくろの握りが1位だろうと思います。

第3位.ドラキュラのブドウソーダ

北海道で売られているハスカップ入りの炭酸飲料が「ドラキュラのブドウソーダ」です。

小学生のときに家族旅行で北海道に行きました。そこで出会ったのがドラキュラのブドウソーダ。ドラキュラて。ネーミングの珍しさにひかれておもわず購入。グビ…。エー!ひと口で虜になりました。

めちゃくちゃ美味いんです。ファンタグレープに似ていますが、ほどよい酸味が相まって、まるで高級なワインを飲んでいるかのうようでした。(もちろんワインを飲んだことはなかったですが、それくらいの高級感のある味でした)。

私はドラキュラのブドウソーダがたいへん気に入りまして、お土産として10本ほど箱買いしました。兄が5本。私が5本。平等に分け合って、冷蔵庫で大事に冷やします。特別な日に1本ずつ開ける。そんな楽しみ方をしていました。

あっという間に4本飲んでしまいました。のこり1本。

当時はAmazonのような通販がありません。ぜんぶ飲み切ってしまうと、もう二度とドラキュラのブドウソーダには出会えない。そういう時代でした。最後の1本。もう飲んじゃうか。いやまだやめとこう。最高に楽しめる日が来るまで取っておこう。私は最後の1本を大事に大事にとっておきました。

ところが、兄が飲んだんです。

「あれ?1本余ってるな。僕のだっけ?まあいいや、飲んじゃえ」と軽い気持ちで飲んだそうです。許せません。いちおう断っておくと、私の兄はスーパー優しい仏のような人でした。2歳下の私をいじめるようなことは一度もありませんでした。いじわるではなく、単なる勘違いで飲んでしまったのです。

しかし、私はどうしても許せなかった。ありえない。こんなに大事にしているドラキュラのブドウソーダを飲むなんて・・・。気付いたら兄に嚙みついていました兄の首筋から赤いブドウソーダが出てくるのではないかと思うくらい強く噛みました。兄は泣きました。

ドラキュラは私ですね(笑)。

最後の1本が飲めなかったから、よけい思い出補正がかかります。美味しかったなぁ。大人になって、ふたたび北海道を訪れる機会があり、ぜひ飲みたいと探し回りましたが、見つかりませんでした。ドラキュラのブドウジュースはあるものの、ブドウソーダがどうしてもないんです。

いつかもう一度飲んでみたいものです。

第2位.まかないのフォアグラ

大学生のとき、居酒屋でバイトをしていました。

居酒屋で働こうと思った理由は、恥ずかしいんですが、人間関係で悩んでいたからでした。具体的には言わないですが、とっても辛い経験をしまして。その原因が自分のふがいない態度のせいだったので、自分のようなダメな男は、ここいらで一発死ぬ気になって、自分を変えなければいけないと奮い立ちました。

自己変革の場として選んだのが、キツいバイトの代名詞「居酒屋」でした。

しかし、マンボウくらいストレスに弱いことに定評のある私のことです。居酒屋で働くなど、寿命を犠牲にしに行くようなものでした。実際、お客さんに嫌な態度を取られたりするのがめちゃくちゃキツくて、何度やめようと思ったか分かりません。店長やバイト仲間がいい人だったので、なんとか続けられました。

白い服にカレーが付いたら目立ちます。同じように、辛い状況のなかで美味しいものを食べると、その美味しさが際立って記憶されるものです。

私にとって、居酒屋のまかないでいただいた「初めてのフォアグラ」は、苦しかったバイト生活の中で不意に訪れた幸せでした。うま過ぎました。今でもとろけるような濃厚さを鮮明に思い出せます。

「好きな食べものはフォアグラです」と言うと鼻につくのであまり言わないようにしていますが、私が好きな食べ物はフォアグラです。

第1位.ビールサーバに残った生ビール

これまた居酒屋バイトの話です。

私がバイトしていた店には、サッポロとエビスのビールサーバーがありました。閉店時間になると、店の掃除を手伝って帰っていたのですが、ビールサーバーの中を水で洗浄する作業がありました。この作業が好きでした。

ビールサーバーを掃除すると、配管内に残っている1杯弱の生ビールが水に押し出されて出てくるんです。それをビールジョッキで採集。店長から「ごほうびにあげるよ。飲んで帰り」と言ってもらっていたので、サッポロとエビスをキュッと一杯やって帰るのが楽しみでした。

でも、実は最初は無理して飲んでいました。

というのも、バイトしたてのころは、ビールがそんなに好きじゃなかったんです。店長がニコニコしながら「どうぞ~」なんて言うもんだから、その好意を無駄にしたくなくって、仕方なく飲んでいたのが始まりでした。

ところが、数か月して変化が起きました。生ビールがたまらなく美味く感じるようになったんです。仕事終わりに一杯やらないと、心が解放されなくなっていました。生ビールを神の雫とすら思うようになりました。

もしかしたらアルコールに依存していたのかもしれません。バイトの辛さに耐えきれなくなって酒に逃げていた可能性は高いです。私の脳内で何がどう変化したのか分かりませんが、それ以来ビール大好き人間になりました。

あるとき急性アル中になって救急車で運ばれて以来、めっきりお酒を飲まなくなりましたが、生ビールはいまだに大好きです。地ビールや海外ビール。たくさん飲んできましたが、苦しいバイトをやりとげたあとの、あのご褒美の一杯に勝るものはありませんでした

あの生ビールが人生No.1です。

まとめ

美味しかったものを振り返ってみると、ほとんどが思い出補正であることが分かりました。ここでランクインしたものよりも美味しいものは世の中に五万とあるでしょうね。ですけど、どう思い返しても、幼少に食べたインドカレーは最高でしたし、バイト後の生ビールほど心を動かしたものはありません。

本当にまずいものは誰が食べても絶対的にまずいと言えると思います。が、美味しいものは主観に強く影響されるようです。

番外編

「人生で一番うまかったものは何?」母に聞いたら

「炙ったイカ」

という答えが返ってきました。どこの八代亜紀かと思いました。

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