心の離岸流をどう泳ぐか

コラムの第46回。

心の離岸流
【こころのりがんりゅう】辛いことや苦い経験に立ち向かおうとしても、無駄なあがきになりがちだということ。考えを別のベクトルに向けるだけで意外と解決することも多い。

平成21年8月。鳥取県の海水浴場にて。20代の男の人が楽しく泳いでいたところ、急に潮の流れが速くなり、100メートルも沖に流される事件が発生しました。

浜辺に戻ろうと必死に泳いだそうですが、それでもグングン流される。この潮の正体は「離岸流」。岸に打ち付けられて溜まった海水が沖に戻る現象なのですが、一度流されると、プロの水泳選手でも押し戻されるくらいの急流だそうです。

さてその男性、浜へ向かって泳ぐのを諦めました。それでどうしたかというと、90°回転して、浜に沿う向きに泳いだのです。実は離岸流というのはとても狭いエリアで起きる現象で、ちょっと横に移動すれば逃れることができます。それを知っていた男性は無事に生還できたそうです。

この男性すごくないですか?

私だったら10メートルも流された時点で絶対パニックになります。「あぁ。ぼくはサメの餌になるんやなぁ。どうせなら美味しく食べてなぁ…」。絶望もすると思うんです。そこにきて「じゃあ横に泳いでみようか」と機転を利かせられる冷静さ。すごいなぁと感心してしまいした。

そして、こうも思ったんです。これって、海に限った話ではないなと。

心の離岸流

恥ずかしい話、わたくし「マジレス癖」がありまして、嫌なことや辛いことに対してすぐムキになります。マジレスしても良いことありません。でもやっちゃうんです。

たとえば、息子が2歳のとき、おもちゃを片付けないことによく怒っていました。時刻は夜9時。できれば8時までには寝かしたいのに、まだおもちゃで遊んでる。「この電車で最後ね。これやったら一緒にお片付けだからね」って何度言ったことか。最後は怒鳴ってました。

当たり前ですけど、2歳の子に怒鳴っても片付けてくれません。むしろ「うわぁー!」って火が付いたように癇癪をおこして、さらに言うことを聞かなくなります。その態度に私も腹が立って、もっとキツく怒る。最悪のループですね。

こういうとき妻が助けてくれました。なんであんなに子供の扱いうまいんでしょう。「は~い、ママと一回抱っこしよっか~」って、いい感じに息子の気を逸らすんです。息子がお話を聞けるくらい落ち着くまで逸らして逸らして。すると、すんなりお片付けしてくれるんですよ。

離岸流やん。あんなに私が必死に逆らって泳いでもダメだったのに、ちょっとベクトルずらしてやったら、凪のように穏やかになる息子。離岸流やん。人間の心も離岸流と一緒で、嫌なこと辛いことに逆らって泳いだらダメなんですね。これを「心の離岸流」と命名したいと思います。

心に余白を作って離岸流を抜ける

「心の離岸流やん」と思ったことが最近もありました。それは心療内科での出来事。カウンセラーさんに「つらいことばっかりですわぁ」と愚痴ってて。「どうやったらメンタルを強くできますかねぇ」って相談したところ、そのカウンセラーさん、こう言いました。

「メンタルを強くする必要なんてないですよ」

「えっ?どゆこと?」って思いましたが、聞くと、辛いなって思ったときに我慢したり溜め込んだりするのは良くないんだそうです。私なんかは「性格をポジティブに変えていったら辛さに耐えられるはず!」って思ってましたけど、そのカウンセラーさんは「絶対どこかで無理ができるものですよ」と。

「それより、心に余白を作ってみませんか?」って言ってくれました。それを聞いて「うわ~。また自分、離岸流に向かって泳いでたんやんなぁ」って気づきました。

私、メンタルを強くすることで、辛いことに正面から立ち向かおうとしていました。でも、それって気力と体力を削るだけなんですね。辛さに立ち向かうのではなく、横にある楽しいことに向かって泳いでいって、心に余裕を作る。そうすれば、辛さという離岸流から抜けられるんだと教えていただきました。

「そっかぁ~」心の底から納得。心に余白を作る方向に目を向けたらいいんだなと思うと、心が最近のランドセルくらい軽くなりました。カウンセラーさんが最後にぽつり。

「次回までに、どんな心の余白があるか、探してみてくださいね」

宿題をいただきました。というわけで今回は、私がどんなときに心の余白を感じるかを考えてみたいと思います。

余白1.誰にも話しかけられない時間

誰にも話しかけられない時間があると、それだけで余白を感じます。

ついこの間。子供の体調不良が続いてて「もう限界!」ってくらいストレスが溜まってた時期がありました。午前中ずっと相手してた娘が、ようやく昼寝してくれて、「よっしゃー!自由時間やー!ちょっと本読んで心沈めよ~」と思って、寝転がって本を開きました。

すると母がやってきて「疲れてるね。寝なさい!」と言われました。気遣ってのひと言なのでしょうが、そのときは「えっ?」と思ってしまいました。

そりぁ疲れてますけど、肉体より精神の方が疲れてます。ずっと一人時間がなくて、今やっと一人になれたんですよ。だから本読もうとしたのに「寝なさい!」って。「なんで命令形ねん~」。モヤっとしてしまいました。「寝たら?」って提案形だったら良いんですけどね。

でも母からしたら、私の心の内までは分からんかぁと思って。母にこう言ったんです。

「…寝ない。ひとりの時間が無かったから、今はひとりでゆっくり過ごしたい」

そしたら母が「そう」って言ってくれて。「あぁよかった。分かってくれたんだ。さすが母やな」と思って、ホッとしました。でも、すぐに「あなたの兄ちゃんを生んだころは、私も一人時間がなくってねぇ…」。エピソードトークを始めてきたんです。

いやいや、今「ひとりでゆっくりしたい」って言ったやん!あれ、話しかけんといてって意味も含んでるんやけど。伝わらなかった感じ?

それでも、我慢して聞きましたよ?「はよ終わってくれ~」って思いながら。でも、終わらないんです。5分たってもまだしゃべる。こっちが返事せずに「無言の抗議」してるのに、ずっとしゃべる。最後には私、黙って部屋を出ていきました。

あとで思い返してみると、さすがに無視して出てったのは大人げなかったかなぁと反省しました。ですが、ひとりになりたい状況でエピソードトーク磨きにこられるのって、つらいです。

似たような話で、子供もけっこう空気読まずに話しかけてきます。イラっとまではしないですが、ちょっとストレス溜まることがあります。

たとえば、息子を夜寝かすとき、布団で一緒に横になって、絵本を読んでるのですが、ちょっと私の喉の調子が悪い日があったんですね。「ごぉっほ!ごっほぉー!」って咳込んで、絵本どころじゃない。

そしたら息子。咳込んでる私にずっと話しかけてきて。でも私は「ごぉっほー!ごっほー!」って。もうゴッホ展ひらけるんじゃないかってくらい咳が止まらない。それでも話しかけてくる息子。今話かけんといてーって思ってたら逆に「もー!はなしきいて!」って怒られちゃいました。え?ひどくない?

会話するのは好きなんですけどね…。

でも、何かしてるときに話しかけられるの、ストレスやなぁってときあるんです。だから、誰にも話しかけられない時間を作れると、心に余白を作れます。

余白2.ひとりのドライブ/散歩/ジョギング

子供を幼稚園に送った帰りなどに、10分くらいですが、ひとりでドライブしている時間ができます。ドライブしている時間は、心に余白作れてるなぁって思います。

感覚的には、散歩やジョギングに似ています。まわりに自分しかいなくて、バーッて景色が流れていくあの感じが好きです。心が洗われる気がするんですよね。

無音でもいいんですけど、暇だなってときもあるので、ラジオを聞き流したりするとベターです。ニコラス武さんのバスケラジオを聞いたり。最近は千原ジュニアさんの公式Youtubeをラジオ代わりにして聞いたりしてます。

ドライブだと10分だけですけど。この時間があるのと無いのとでは、だいぶ違います。

余白3.子供と二人で公園

なんだかんだ言って、子供は可愛いです。子供と二人きりで公園にいる時間は、心に余白作れてるなぁって思います。

近所にエビフライしかない攻めた公園があるのですが(以前、コラムに書きました)、そこに連れてくとまぁ子供が喜ぶんです。エビフライしかないのに。なんで?って思いますが、体を動かすのが気持ちいいんでしょうね。

家で子供みるより、公園の方がだんぜん楽しいです。子供がずーっと笑顔ですから。一緒にかけっこなんかしちゃったりして。「パパと競争だぞ~。よーいどん!」ってはしゃいじゃったりして。そしたら息子が「きゃははは!」ってよく笑うんです。「あぁ~、子育てってええなぁ」ってしみじみ思います。

子供と二人きりってのがポイントです。娘と息子どっちかだけ。これが両方だと「目離したすきに怪我せんかな?」って神経使います。私のキャパだと1:1が心地よい限度だなって思います。

余白4.娘を抱っこして散歩

もう寒くなっちゃいましたけど、涼しい秋なんかは、抱っこ紐で娘と一緒に散歩するのが好きでした。あれも心に余白の一つだったと思います。

1歳の娘は、ほっぺが餅です。その餅をプニプニ~ってしながら散歩するんです。これが楽しくて。娘も喜んでくれますし(プニりすぎると怒りますが)。「子育てって幸せだなぁ~」って思います。

余白5.妻と二人きりの食事

先日、結婚記念日のお祝いで、妻と二人っきりの食事に行ってきました(これもコラムに書きました)。子供は祖父母に預けて。水入らずの食事。デートですね。めちゃくちゃ心に余白できます。

子育てしてると、常に疲れてますから、なかなか夫婦でゆっくり話せません。そんな時間があるなら休みたいわ~って向こうも思っていることでしょう。話すとしても、子供の行事とか、そっち系の話になりがちです。

でも、二人きりで外食するときは別。夫婦の時間。物理的に子供と離れてるからなんですかね、会話も子供少なめで、自然と二人の話になります。すっごく楽しいです。「東京じゃこんな風に外食できなかったから、月に1回はしたいね~」って妻と話してます。

余白6.子供の寝顔をみる時間

天使です。最高に可愛いです。癒されます。

余白7.バスケの練習に参加する

30代になると、体と心って繋がってるなぁと感じることが多くなりました。運動って大事。ちょっと体を動かすだけで、気分が晴れやかになるんです。これも心の余白だと思います。

特に体育館でやるバスケは格別です。今は週に1回、近所の中学校に行って、夜のおじさんバスケ会にまぜてもらっています。

あるとき、私が速攻で前に走ってたら、いい感じのパスをもらえて、レイアップに行くだけって場面がありました。でも、18歳くらいの子が後ろから凄いスピードで追いついてきて、シュートの邪魔をしてきたんですね。

私、体力には自信ありませんが、おじさん特有のずる賢さだけはあります。ディフェンス?軽くタックルしてひるませてからノーマークでシュートする「コンタクト・フィニッシュ」で手玉にとってやるぜ!って思いました。

「うぉりゃっ!」って体をぶつけに行ったんですけど、足が全然ついてこなくて転倒。そのまま、築地のマグロみたいにツルーってコート外に滑っていってしまいました。

おじさんがぶっ飛んでいくところって、18歳にしたら珍しい光景だったと思います。びっくりさせちゃってごめんね。でも、そのくらいハッスルするバスケが。まぁ楽しいんです。

余白8.バラエティ番組を見る

バラエティ番組を見る時間は、心の余白だなぁって思います。もうお風呂にも入りたくない、本も読む元気がない。そんなとき、バラエティ番組だったら見れます。私にとっては最後の砦です。

見るのはもっぱらYoutube。ある動画で、千原ジュニアさんがこんな話をしてました。

友人の家で食事をしていたジュニアさん。その家の子供が、テレビで千と千尋を見ていました。「地上波で千と千尋やってるんやなぁ」と思いながらご飯を食べてたそうですが、あとあと聞いたら、何年か前に地上波で流れてたのを録画してDVDで流していたのだとか。

千と千尋の途中でパッとCMになったら、TOKIOの山口さんが車を運転していて、ピエール瀧さんが便座の上に座っていて、西内まりやさんがヨーグルトか何かを勧めてて、最後、部屋を渡部さんが掃除してる映像に。「数年前はこんなことやったんかぁ」とジュニアさん。いま全員神隠しにあってるやん、と思ったそうです。

それを聞いて私、面白過ぎて、「こんな話、無料で聞けてええの?」って思いました。話うますぎて耳が喜んでます。心の余白やわぁ…。

余白9.子供と絵を描く

子供と宝探しをした話でもちょっとお見せしたんですけど、イラストを書くのが好きです。イラストを書いてる時間も、心の余白だなぁって思います。子育て中は子供に振り回されがちですが、イラストを書いてるときって、主導権を握れるというか。

なんでもいいんですけど、たとえばアンパンマンを書くにしても、ちょっと息子を登場させたりするんです。息子がアンパンマンの顔かじってるみたいな。すると息子が目をキラッキラさせてみてきて、「パパぁ?なんで食べてるの?なんで?」って聞いてくる。

そしたらカレーパンマンを食べてる絵も書いてみたくなります。書くと息子が喜んで。その繰り返し。これがかくれんぼなら「パパ次隠れてね」みたいな指示をされますけど、イラストだったら不思議と指示されなくて、自分が描きたい絵を没頭してかけるんですよねぇ。好きな時間です。

余白10. 子供と段ボール工作をする

モノづくりが好きです。この前は段ボールでガチャガチャを作りました。これも心の余白です。

余白11. 文章を書く

ブログに気持ちを書き出すのは、心の余白になってます。

書いてる瞬間も脳汁ドバドバですけど、1か月くらい前に書いた記事を読み返して、そういえばこんなことあったっけ、と一人でニヤニヤするのも好きです。

盗んだバイク(自転車)で走りだされたこととか、視力と引き換えに夏休みを満喫したこととか、書類ミスって怒られたこととか、虫歯が6本同時に見つかったこととか。…あれ? ろくなことないですね笑。

余白12. 片付け

片付けするのも、心の余白になってます。

といっても、なんちゃってミニマリストなので、片付けすることによって得られるスッキリ爽快感よりも、散らかった空間から敏感に受けるストレスの方が遥かに多いです。ミニマリストになってストレスがマキシマムです。なにやってんねん。

余白13. 本を読む

そろそろ書き出すのがしんどくなってきました。最後にします。心の余白になってるなぁと思うのは、本を読んでいるときですね。難しい本は読めないので、笑えるエッセーばっかり読んでます。

「この本すごいな!」と思ったのは、千原ジュニアさんの「すなわち、便所は宇宙である」。このブログのタイトル「すなわち、ブログは宇宙である」の元ネタです。

ジュニアさんが便所のノートに書き溜めてたエピソードトークを詰め込んだ本なんですが、まぁ密度が濃い。レンゲが立つんじゃないかってくらい高密度にオチが詰まってまして、1ページ読んだら1回は笑えます。

ジュニアさんの本の凄いところって、「たとえの手数」が半端なく多いところだと思うんですよ。たとえば、「ルールとマナー」というテーマで2ページのコラムをかくとき、ジュニアさんはこのくらい具体例を挙げてきます。

・後輩がスタバに行って「コーヒー8個」と頼んだら「こちらでお召し上がりですか?」と言われた。店で8個飲むやつおるかぁ。それ言うんがルールなんかもしれんけど、マナー違反やない?
・ひとりでケンタッキーにでっかいバケツ買いに行ったら「こちらでお召し上がりですか?」って聞かれた。俺どんだけ鶏食いやねん笑。
・レストランで「いただきます」も言わんようなだっさい奴が「こっちはカネ払っとんじゃ」と言う。ルール上は正しいかもしれんけど、マナーないんはカッコ悪いやん。
・バラエティのパイ投げとかのシーンで流れる「スタッフが後でおいしくいただきました」のテロップ。そんなの絶対食べてない。そのテロップいれとけばルール上OKなんでしょ?って世の中になってないか?

といった具合です。もう一度言いますが、これらの具体的なエピソードがたった2ページに入ってるんです。尋常じゃない密度ですし、具体的だから分かりやすくて笑える。お笑いのプロって、このくらいモノを考えてるんだなぁって感心してしまいました。

やっぱ本っていいです。「わぁ!すごいなぁ!」って心動かされることが多いですから。心が動いたら、満ち足りた時間を過ごした気になります。これが心の余白やなって思います。

まとめ

心にも離岸流があるなと思いまして、離岸流から逃れるための方法「心の余白探し」をしてみました。探してみるとけっこうあるもんですね。11個も見つかりました。これで新品のノートくらい心に余白つくれるかなぁ。それは言い過ぎか。

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