読書感想11.「世にも奇妙なニッポンのお笑い」チャド・マレーン

読書感想の第11回。

お笑い芸人チャド・マレーンさんの「世にも奇妙なニッポンのお笑い」という本を読みました。海外に行くと今まで見えていなかった日本の良さに気付くことがあります。私の場合、どこに旅行に行っても絶対に思うのが「日本のごはんは美味い」ということです。

味の素最強説

大学を卒業するとき、「バックパッカーしようや」と友達に誘われ、ベトナム→カンボジア→タイのルートを旅しました。現地の人が使うようなバスに乗ったり、治安ギリギリな宿に泊まったりしてたのですが、そういう地域では、私たちが日本人と分かると遠くからでも声かけられました。よく叫ばれていたのが、このワード。

「ア・ジ・ノ・モ・ト!」

なんやねんと思いましたが、たぶん知っている日本語を言ってるだけなんでしょうね。基本的にうまいなあと思える食事に出会わなかったのですが、たまに「これはいける」と思えるヌードルがありました。しかし、よく味わってみると「ほぼ味の素」だなと。日本の食品技術凄いなと思いました。

あと他にも「ア・リ・ガ・ト!」「オ・カ・モ・ト!」って言われることが多くて、日本の避妊具薄化技術も凄いことを認識させられました笑。

「海外でも日本の漫画が人気」はマジ

また、日本のサブカルも凄いです。

アメリカに1年ほど出張していた時には、現地の本屋さんによく通いました。住んでいたところの近くに、五階建てのオシャレなビルが全部本屋になっているところがあって、新宿の紀伊国屋本店みたいでもあり、ホグワーツ魔法学校的なミステリアスな雰囲気もあって好きでした。

その本屋にはワンフロアを丸々使った漫画コーナーがありました。「これほどか!」と驚いたんですけど、並んでいるのは「NARUTO」とか「僕のヒーローアカデミア」とか、ほぼ100%と言っていいくらい日本の漫画ばかり。すごいなぁと思いました。

よくニュースとかで「海外では日本の漫画が大人気です!」とか言いますけど、あれってマジだったんですね。私が通っていたアメリカの大学の研究室にも「ユーチューブでジャパンのアニメみてるねん」という学生が結構いました。

海外からみた日本のお笑い

海外から見た日本という点では「日本のお笑いってどう見えてるの?」ということが気になります。というのも、アメリカの研究室にいち早く溶け込みたかった私は、「日本の笑い文化」にとても助けられた経験があるからなんです。

たとえば研究室の飲み会でのこと。ロン毛のベンジャミン(愛称ベン)が「一瞬でビール缶を飲める裏技を教えてやるよ」と言って、ショットガンという技を見せてくれました。それはビール缶の裏に鍵を使って穴を開け、その状態で表のプルトップを開けるというもの。裏に開けた穴からビールが噴き出し、3秒くらいで缶を飲み干せるんです。

「なんてパリピな技なんだ」と思いました。「お前もやってみるか?」とベンに言われた私は「いやいやいやいや!むりむりむりむり!ぜったいむり!」と拒否しながら、こっそりビール缶に鍵で穴を開けました。プシュ。

さらに「絶対成功しないから!無理だから!ノーノーノー!」とフリを入れたところで、グビグビグビ!3秒でビールを飲み干しました。しっかりフッたからでしょうか、そこそこ笑ってもらえました。そのとき思ったのが、日本のお笑いって海外でも通用するのではないか?ということでした。

私が感じた「日本のお笑いの偉大さ」みたいなものを、より肌で感じてこられたのが、オーストラリア出身のお笑い芸人チャド・マレーンさんです。本書でチャドさんはこう言っています。

僕は日本のお笑いは世界でも、もっともレベルが高いと声を大にして言いたい。それがこの本を書こうと思った動機です。

簡単に言うと、日本のお笑いは競技として熾烈なのでレベルが高められており、さらにツッコミがあることで「笑い声が出る」という構造的な強みがある、とのことです。なるほどと思わされる内容でした。

特に「ええ話やなぁ」と思ったエピソードを3つ紹介したいと思います。

なぜオーストラリア人が日本でお笑い芸人をしているのか?

チャドさんがお笑いにハマった理由がええ話でした。

チャドさんはオーストラリアに生まれ育っているのですが、実は学校一の秀才でした。別に日本に興味があった訳ではないけれど、成績が良かったからか「おまえ交換留学で日本行ってこい」と言われて来日。そのホームステイ先の一家がたまたまお笑い番組好きだったそうです。

凄いのが、日本語がよく分からないのに、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」を見て「これはたぶん、地球一おもしろい!!」と直感したということ。

そこからチャドさんは、貪るように日本のお笑い番組を見て、テロップで日本語の勉強。帰国前のお別れスピーチでは「夏休みにテレクラいきまして」という嘘の日本語漫談を披露して爆笑をとるまでになったのだとか。帰国後も日本のお笑いが忘れられず、NSCへ。

いやチャドさん、どれだけお笑いにハマってんねん!

全然分からん日本の番組みて「地球一おもろい!」と確信して、将来まで決めるって、チャドさんの熱量がすごすぎます。自分が今の職業を決めたときは、チャドさんの1/100の熱量もなかったです。こんな熱い人がいるんだと思いました。見習いたいですね。

日本語の笑いを英語に翻訳するということ

チャドさんの本を読んでいて、一番凄いなあと思ったのが「お笑いの翻訳」です。

以前、「魁!!クロマティ高校 THE★MOVIE」という映画がありました。板尾創路さんが構成を務めた作品なのですが、この英語字幕のチェックをお願いします!と言われたのがチャドさんでした。

チャドさんの凄いところは、ダジャレみたいな日本人にしかわからないギャグも、ちゃんと英語に翻訳するところです。どうやって英語にしているかというと「似たような英語を捻り出す」。これが難しいのだとか。

たとえば、パチンコ店の「パ」の部分の電飾が消えるというダジャレがあります。これを英語に訳すときは、まずパチンコの看板をPeacock(クジャク)に変える。

そのパチンコ屋さんは、店構えがいかにもギャンブルやってそうなので「Peacock」という店名にしてもそんなに違和感がなかったそうです。それでPeaの電飾を消す。するとcockになるのですが、cockは男性器を意味するスラングです。

「これはうまくハマった!」とチャドさんは喜びました。

凄すぎませんか?ダジャレひとつを翻訳するために、新しいネタをひとつ生み出しています。大変ですよ。長編映画の字幕翻訳には50時間もかかるとのこと。そりぁ時間もかかりますよね。

ちなみに、チャドさんによると、こういう翻訳のしにくい言葉遊びが少なくて、理屈自体が面白い笑いが多いのが「松本人志さんの映画」だそうです。松本人志さんの映画は、ほんま伝えたいことがはっきりしていて、それがきちんと映像化されているのだとか。まっちゃんは世界レベルで凄いのですね。

不条理を笑いに変える

最後に1個。チャドさんがめちゃくちゃ深いことを書いているので紹介させてください。

不条理なことをまじめに受け取っていたら、ただただ自分がみじめでかわいそうになるだけです。でも、それを笑いに転換すると、みじめさが吹っ飛ぶ。まわりが笑ってくれることで、不条理を受け止めることができる。人生はいつだって何が起きるかわからないものですが、笑いにはそんな不条理を乗り越える力があります。

これはチャドさんが「人志松本のすべらない話」で話したエピソードがもとになっています。

日本で芸人になるために、わざわざオーストラリアから来て、NSCに入って、弟子入りして、貧乏しながら一生懸命話術を磨いて。磨いて磨いて磨きまくったところで一つ分かったのですが、もうちょっとカタコトだった頃の方がウケてました。

これが大爆笑だったとか。人生をかけてお笑いやってるのに、頑張ったらウケが弱くなったって、こんなに不条理なことはありません。でも、エピソードトークにして提供したら、大舞台でちゃんとウケた。「これですべてが報われた!」と思ったそうです。

ええ話ですね~。芸人さんやなぁって思います。私も不条理を笑いで乗り越える力が欲しいものです。

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