会社をやめていく後輩に贈った手紙がウケた

コラムの第50回。

別れは寂しいものですね。

仲のいい後輩(Kさん)が今月で会社を辞めることになりました。その送別会が昨日あったのですが、私は遠方で働いており、しかも夜まで予定が入っていたので電話での参加も難しい。でも後輩のために何かしたい。ということでお手紙を書くことにしました。

それはもう一生懸命書かせていただきました。

できあがった会心の手紙を同僚に渡し「これを当日読んでください」とお願いしました。そして昨夜、まだ送別会中であろう時間にLINEが。送別会に出席している別の後輩からでした。要約すると、

Kさんへの手紙がウケていた

ということでした。私はその瞬間「ヨッシャー!」とガッツポーズ。震えるほどの喜びが体を突き上げました。こんなに嬉しいことはありません。

あまりに嬉しかったので、書いた手紙を紹介したいと思います。Kさんのプライバシーもあるので、ところどころボカしますが、ご了承ください。

Kさんに贈った手紙

こちらが、私が贈った手紙です。

Kさんへ

お風呂から脱衣所に出るときの寒さダメージが耐えがたく、そろそろお風呂に入ること自体をやめようかと思い始めてきた今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。この手紙を読まれているということは、私はもうこの場にいないでしょう。☓☓県にいますからね。

さて、Kさんが会社をやめられると聞いたときは、私はたいへん意表を突かれる思いでした。どのくらい意表を突かれたかというと、初めてピーター・ゲードのクロスヘアピンを見たときくらい意表を突かれました(伝わりますでしょうか?)。

というのも、Kさんの仕事の優秀っぷりには、社内研究報告会の度に驚かされていましたからね。言わずもがなでしょうけど、未経験で☓☓(←製品名)を触って調べて改良してって…とんでもないことです。私は心の中でシッティングオベーションをしていました。Kさんはこのまま偉くなるんだろうなと思っていましたから、転職と聞いたときは驚きました。

また、私がまだxx棟(←会社の敷地名)に生息していたころは、トイレに行くついでにKさんのパソコン画面をのぞき見るのが楽しみでした。Kさんはいつも綺麗なフロアマップを描かれていました。「いいフロアマップですね」と私が褒めると、「フロアマップじゃないです。xx(←製品名)の設計図です」とKさんが返すのが定番のやりとりでしたね。もし私が将来、家を建てることになったら、KさんにCADソフトでフロアマップを描いてもらいたいくらいです。

まだまだ話したいことはありますが、大きな心残りは、Kさんと一緒に飲む機会がなかったことでしょうか。噂によると、会社での理性的なKさんからは想像もつかないくらい、飲み会でのKさんは野性的というか、人間を二等分したときの上半身ではない方が活発になると聞いています。その一面を見てみたかったなあと思います。

最後に、新天地に向かうKさんに、私の好きな小話をひとつ贈りたいと思います。

私の敬愛するお笑い芸人・オードリー若林さんの話です。若林さんは売れない若手のころ、自分で作った漫才に対する意見を何一つ聞き入れたくない自分に悩むようになり、先輩に相談したそうです。すると、岡本太郎さんの美術館を見に行ってこいと言われて、行ったのだとか。

そこにあったのは「座ることを拒否する椅子」という岡本太郎さんの作品。拒否すると書いてあると、逆に座りたくなるものです。若林さんは辺りを見渡して誰も居ないことを確認すると、そっと腰をおろしてみました。「痛っ!」お尻に痛みが走りました。それと同時に、鼻の穴が爆発するような感動を覚えたそうです。「た、楽しい…、なんて楽しいんだ!」

「なんだこの話は?」と思われたかもしれません。しかし、私はこう考えます。この椅子はたとえば「会社」なのだと。

世の中には座り心地のいい椅子がたくさんあります。クッションが効いていたり、快適だったり。しかし、高級な椅子が、必ずしもいい椅子とは限りません。エネルギーにあふれる若者にとっては、ただいい椅子に座って快適にズルズルするような生き方よりも、たまに腰掛ける切り株のような椅子のほうが合っていることもあります。

変化には痛みをともないます。が、それは今の自分に必要な痛みであり、なんだったら痛みすら「楽しめる」ようになることが大事だったりします。若林さんはお尻でそれを学んだのです。

それに、この世に絶対はありません。いくら自分が「これは快適でいい椅子だ」と思っていても、いくら630万回以上のテストに耐えた頑丈な椅子でも、オードリー春日さんが座ってみると「バキッ!」といくことがあります。これはヒルナンデスのIKEAポエングアームチェア事件として有名でして、2016年に私が一番腹の底から笑った出来事です。もし見たことがなければYoutubeで検索してぜひ見てください。嫌なことを忘れられると思います。

…なんの話をしていたのでしょうか。ともかく、Kさんのこれからの暮らしが楽しく笑いに満ちたものになることを、xx県から願っております。

◯◯より

私からKさんに贈った手紙
どうやって手紙を書いたか?

たまたまにせよ、手紙がウケるという経験は貴重なものです。今後また送別の手紙を書くことがあったら、そのときは今回の手紙をリサイクルしよう、そう心にきめました。

とはいえ、そのままリサイクルしてしまっては相手への敬意を欠きますので、なんとなく変えて書くことになるでしょう。「あれ、どうやって書くんだっけ」と困らないように、今回私がどんな作戦で手紙を書いたかをパターン化して残しておきたいと思います。

笑いの解説みたいで無粋ですが、よろしければお付き合いください。

季節の挨拶ボケから始める

まずは「あいさつ文」です。これは漫才で言うところの「つかみ」ですね。

手紙の最初はできるだけ早く小さい笑いをとるのが大切だと思います。聞き手に「私はこれからこの手紙でボケますよ。だから笑っていいですよ」という空気を作ることで、その後さらにボケやすくなる…そんな気がするからです。私が実際に書いたのがこちら。

お風呂から脱衣所に出るときの寒さダメージが耐えがたく、そろそろお風呂に入ること自体をやめようかと思い始めてきた今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。この手紙を読まれているということは、私はもうこの場にいないでしょう。☓☓県にいますからね。

これは「季節の挨拶たとえボケ」です。「〇〇な今日この頃、いかがお過ごしでしょうか」の〇〇の部分に「季節感のあるたとえ」を入れると、うっすらボケられます。これが大変便利なんです。

この手法は、過去の記事で紹介した、せきしろさんの「たとえる技術」に載っていたので、さっそく使わせてもらいました。せきしろさん、ありがとうございます。

相手の趣味でたとえてボケる

あいさつでボケた後、次にボケられるのはどこかなぁ・・・と考えました。そしたら「やめると聞いてビックリした」という感情で1個ボケられるなと思いつき、入れてみたのコチラの文章です。

さて、Kさんが会社をやめられると聞いたときは、私はたいへん意表を突かれる思いでした。どのくらい意表を突かれたかというと、初めてピーター・ゲードのクロスヘアピンを見たときくらい意表を突かれました(伝わりますでしょうか?)。

ピーター・ゲードとは、10年くらい前の有名なバドミントン選手で、相手の意表を突くトリックショットが得意な選手でした。Kさんはバドミントンが趣味だったので「そんなん俺にしか伝わらんわ!」というコアなたとえで「ビックリした」ことを表現したら面白いかな、と思ったのです。

いろんなバリエーションがあると思います。もし相手がバスケ好きなら「ケビン・デュラントがウォリアーズに移籍したとき以来の衝撃でした」と書いたりしますかね。

趣味のたとえボケは結構汎用性が高いので、私なんかは日常的に使います。たとえば仕事中、バスケ好きな後輩に作業を手伝ってもらったときなどは「仕事はやいっすね!あまりに速すぎてデリック・ローズかと思いました」といった具合です。

リスペクトしている部分を挙げる

お手紙で大事なのは、相手への敬意を伝えることかと思います。「言ってなかったけど、こんなところをリスペクトしてました」とラッパーのごとく伝えられるとベスト。私の場合だと、こんな感じの文章を入れました。

というのも、Kさんの仕事の優秀っぷりには、社内研究報告会の度に驚かされていましたからね。言わずもがなでしょうけど、未経験で☓☓(←製品名)を触って調べて改良してって…とんでもないことです。私は心の中でシッティングオベーションをしていました。Kさんはこのまま偉くなるんだろうなと思っていましたから、転職と聞いたときは驚きました。

本来なら具体的なエピソードで褒めるといいですね。私は抽象的に褒めてしまったので、ここはイマイチ伝わりづらかったかなと反省しています。

また、入れたボケも「シッティングオベーション」という弱いものでした。「いや褒めるなら立てよ」とツッコんでもらいたいなと思ってボケてますが、これまた伝わりづらいですね。

エピソードトークを挟む

送別会のお手紙は「どれだけ手垢のついていない言葉を使うか」が勝負だと思っています。「いつも優しくて・・・」みたいな定型文では心が揺さぶられません。きっと心に刺さるのは具体的な「エピソードトーク」でしょう。そこで、私が入れたのはこんなエピソードでした。

また、私がまだxx棟(←会社の敷地名)に生息していたころは、トイレに行くついでにKさんのパソコン画面をのぞき見るのが楽しみでした。Kさんはいつも綺麗なフロアマップを描かれていました。「いいフロアマップですね」と私が褒めると、「フロアマップじゃないです。xx(←製品名)の設計図です」とKさんが返すのが定番のやりとりでしたね。もし私が将来、家を建てることになったら、KさんにCADソフトでフロアマップを描いてもらいたいくらいです。

超些細なできごとですが、Kさんと「フロアマップボケ」でじゃれあうのが楽しかったので、私としては大事な思い出です。

エピソードは自分が体験したことでなくてもいいと思います。「Kさんは人からこんな風に評価されていたよ」というのも立派なエピソード。たとえば、私はこんな風に書いてみました。

まだまだ話したいことはありますが、大きな心残りは、Kさんと一緒に飲む機会がなかったことでしょうか。噂によると、会社での理性的なKさんからは想像もつかないくらい、飲み会でのKさんは野性的というか、人間を二等分したときの上半身ではない方が活発になると聞いています。その一面を見てみたかったなあと思います。

ただし、この文章はかなり気を遣いました。平たくいえば「Kさんは下ネタ大好き」ですからね。一歩間違えたらKさんをディスることになりかねません。なるべくネガティブに受け取られないようにしないとと思いました。

たとえば「下半身」とか「下ネタ」のような直接的で下品なワードだとプライドを傷つけてしまう可能性があります。それは避けたい。どうしよう~とあれこれ考え、結局「上半身ではない」という表現で、やわらかく想像してもらう感じにしてみました。

エピソードがないときはどうするか?

あんまり話したことない先輩が退職した。エピソードトークがない!そんなときはどうしたらいいのでしょうか。そんな希薄な関係でお手紙書くなよ、と思われるかもしれませんが、こういうシーンも少なからずあります。

その対処法として、私が発明した方法ではないのですが、母の知り合いが実際にやっていた方法がすごく賢いなあと思ったので、紹介させていただきます。

その方は小学校の先生なのですが、送別会のお手紙がうまいと評判で、いつもみんなに期待されていたそうです。ですので、あまり関わりのない給食職員さんが退職されるときも「手紙書いてよ」と頼まれたのだとか。でもエピソードがない。困った。そこで思いついたのが、児童に「一番好きな給食は何?」というアンケートをとるという方法でした。そして、送別会ではこんな風に話したそうです。

「さきほど子どもに好きな給食のアンケートを取ってきました。3位は〇〇、2位は〇〇。そして1位は〇〇でした。さすが1年生です。1位は今日食べた給食でした笑」

うまいですねぇ~。どうしてもエピソードがないときは「アンケート」をとればいいのですね。

ためになる小噺を入れる

Kさんから「会社を辞める」と聞いたとき、「新しい環境には不安もある」というお話も伺いました。わたしは会社をやめたことがないので分かりませんが、相当大きな決断だったと思います。私はKさんの決めた道を応援したいと思いました。

「不安はあるだろうけど、それも人生には必要なはず!」

と励ましてあげたかった。しかし、転職をしたことがない私が何を言ったところで説得力がありません。じゃあ私が言わなければいい。もっと権威がある人の言葉を借りれば、Kさんをしっかり励ませると思い、ためになる小噺をいれてみました。それがこちらです。

最後に、新天地に向かうKさんに、私の好きな小話をひとつ贈りたいと思います。

私の敬愛するお笑い芸人・オードリー若林さんの話です。若林さんは売れない若手のころ、自分で作った漫才に対する意見を何一つ聞き入れたくない自分に悩むようになり、先輩に相談したそうです。すると、岡本太郎さんの美術館を見に行ってこいと言われて、行ったのだとか。

そこにあったのは「座ることを拒否する椅子」という岡本太郎さんの作品。拒否すると書いてあると、逆に座りたくなるものです。若林さんは辺りを見渡して誰も居ないことを確認すると、そっと腰をおろしてみました。「痛っ!」お尻に痛みが走りました。それと同時に、鼻の穴が爆発するような感動を覚えたそうです。「た、楽しい…、なんて楽しいんだ!」

「なんだこの話は?」と思われたかもしれません。しかし、私はこう考えます。この椅子はたとえば「会社」なのだと。

世の中には座り心地のいい椅子がたくさんあります。クッションが効いていたり、快適だったり。しかし、高級な椅子が、必ずしもいい椅子とは限りません。エネルギーにあふれる若者にとっては、ただいい椅子に座って快適にズルズルするような生き方よりも、たまに腰掛ける切り株のような椅子のほうが合っていることもあります。

変化には痛みをともないます。が、それは今の自分に必要な痛みであり、なんだったら痛みすら「楽しめる」ようになることが大事だったりします。若林さんはお尻でそれを学んだのです。

それに、この世に絶対はありません。いくら自分が「これは快適でいい椅子だ」と思っていても、いくら630万回以上のテストに耐えた頑丈な椅子でも、オードリー春日さんが座ってみると「バキッ!」といくことがあります。これはヒルナンデスのIKEAポエングアームチェア事件として有名でして、2016年に私が一番腹の底から笑った出来事です。もし見たことがなければYoutubeで検索してぜひ見てください。嫌なことを忘れられると思います。

このブログを読んでいただいている方には分かると思いますが、私は「深いい話」を収集する癖があります(そして、それをブログに書いて溜める癖があります)。

普段から深いい話を集めておくと、こういうお手紙を書く場でとても役に立ちます。今回は若林さんの「座ることを拒否する椅子」のエピソードがピッタリはまりました。めちゃくちゃいい話なので、これは今後もいろんなところで話そうと思います笑。

このエピソードの強いところは、オードリーさんがヒルナンデスで椅子を壊したという強いオチがあるところですね。「座ることを拒否する椅子」から「ポエングアームチェア」に話がスムーズに繋がるのでとても気持ちがいいんです。

まとめ

今回は送別会のお手紙の書き方を、調子に乗って解説してしまいました。

もう薄々お気づきかと思いますが、私のお手紙にかける情熱、仕事への熱意をはるかに上回ってます笑。そんな暇あるなら仕事せぇと言われたらグゥの音も出なくなっちゃいますけど、でも、研究開発やってると「誰かに直接喜んでもらえる」ってタイミングがあんまりないので、喜んでもらえるお手紙にはモチベーションわいちゃいますね。

結婚式のスピーチとか、送別会の手紙とか、そういうの考えるのが好きです。誰か私に頼んでくれないかなぁ。

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