日本一おもしろい会社を経営した「がんばりすぎない」社長の話

コラムの第53回。

がんばりすぎてしまうことってあります。

子供が生まれたとき、親戚の叔父さんから「おまえが奥さんを支えるんやで。しっかり頑張り!」と言われました。この言葉を真に受けて「スーパー育メン」を目指し始めたのが4年前。マー君と投げ合った高校時代の斎藤祐樹投手くらい全力で頑張った結果、メンタルを壊し、心療内科に通うことになりました。

ハンカチに収まりきらないくらい泣きました。私がハンカチ王子です。そして33歳にしてようやく気付いたのは「がんばりすぎたらダメなんやな…」ということ。何事も「ぼちぼち行くで」くらいがちょうどいいものです。

ところが、また調子乗って頑張りすぎてしまい、今年も正月早々メンタルが崩壊。ほんまにダメやなぁと落ち込みました(ぼーっと休憩する時間をくれた妻と周囲の皆様には大感謝です)。

そんな中、ある言葉に出会い、心がスッと軽くなりました。

「悩みが解決しなくても、『しゃーない』という言葉でだましだましやっていったら、そのうちいい風も吹いてくる」

東洋経済ONLINE 「3人目のダウンタウン」、2人との絆が続いたワケ吉本元会長・大崎洋さんと松本人志さんの関係性 https://toyokeizai.net/articles/-/689212?display=b

「しゃーない」って良い言葉ですね。さんまさんの口癖だそうです。何事も「しゃーない」と思えれば、変なところでがんばり過ぎずにすみます。

さて、この「しゃーない」のエピソードが書かれているのが、吉本興業元会長・大崎洋さんの著書「居場所。」です。

大崎さんといえば、ダウンタウンを育てた敏腕マネージャ。そして、吉本興業という大企業の経営者でもあります(現在は退社されています)。いい話を持っていそうだな。もっと聞いてみたいなと思い、「居場所。」を購入し、読んでみました。

いい意味で大企業のトップらしくなく、「ふつうのオモロイおっちゃんなんだ」と感じました。いいぐあいに肩の力が抜けています。大崎さんの顔をプリントしたサロンパスを売り出したらヒットしそう。

大崎さんは自分のことを「窓際族」と呼びます。自分を追い込んで活躍できる優秀なタイプもいるけれど、世の中にはそうでない人もたくさんいる。そうでない側を代表して「がんばりすぎないことが大事や」と教えてくれる本でした。

今回は、「居場所。」の中から、私の心にズバリ刺さった三つの言葉を紹介したいと思います。

・「頼まれたこと」だけやればいい
・人生すごろくなら「1回休み」
・歯は食いしばりすぎたら砕ける
「頼まれたこと」だけやればいい

私が思うに「こうありたい」という夢がある人ほど、がんばりすぎてしまう傾向にあります。

たとえば「いい父親でありたい」と思って、子どもの遊びに全力で付き合う。これ自体は良いことです。しかし、一時の遊びに全力になった結果、夕方には体力が尽き、子どもの世話をする気力がなくなる。なんなら疲れて不機嫌になる。怒っちゃう。こんなこともあります(私です)。

そうなると、「こうありたい」という願いが強すぎるのって、ちょっとした呪いなんじゃないかと思えてきます。「こうありたい」と思うから辛くなる。しかし、「こうありたい」がないと「夢がない自分はダメなんじゃないか」という不安な気分にもなります。なんか、社会全体から夢をもつことを強制されているような。そんな生きづらい感じありませんか?

一方、大崎さんは、夢なんか持たなくていいと言ってくれます。自分は夢を持って生きてこなかった。ただただ「頼まれたこと」だけをやってきた。それでもなんとかなったと。私はそれが、すごくいいなあと思いました。少し引用しますね。

僕が思うに、ハードルはできる限り下げたほうがいい。人のためになることをやろうとするのは尊いし、それでお金を稼げるようになったら言うことはありません。でも、それができないなら、「頼まれたこと」だけやればいい。

何より良かったのは、頼まれたことを一生懸命やると、頼んでくれた人がすごく喜んでくれたことです。それでもっと一生懸命やれるようになります。

「頼まれたこと」だけやればいいって、後ろ向きなイメージがありますけど、とてもいい言葉だなと思います。「こうありたい」という理想像を手放すパワーがもらえるというか。心が軽くなります。

たとえば、主張ゴリゴリのデザイナーズマンションよりも、住む人の声をちゃんと聞いた注文住宅の方が遥かに住みやすいことってあります。頼まれたことだけやるって、やられる側にしても、案外いいことなのかもしれませんね。

人生すごろくなら「1回休み」

ダウンタウンさんが売れ出したころ。浜田さんが行方不明になったことがあったそうです。急に忙しくなって、心のバランスを崩してしまった。あの浜田さんでも、逃げ出したくなることがあったんです。

結局、一週間くらいして、ひょっこり戻ってきました。バツが悪い浜田さん。仕事に穴を開けています。周りには大迷惑をかけました。しかし、マネージャである大崎さんは責めるでもなく「よかった、よかった」と温かく迎えいれたそうです。

そのときのことを振り返り、大崎さんはこう語りました。

戻ってきてくれて結果オーライというのもありますが、途中で浜田くんが行方不明になったことを、僕は良かったと思っています。人生すごろくなら「1回休み」です。

人生すごろくなら「1回休み」。いい言葉だなあと思います。休んでしまっても、別に大したことじゃない。また戻ってきたらええねん、という優しさが伝わってきます。

ごっつええ話やわ~。

歯は食いしばりすぎたら砕ける

「自分の限界に挑戦する」「最後までやり遂げる」これはかっこよさそうですが、歯は食いしばりすぎたら砕けます。限界に挑戦したら、どんなに楽しいことであっても、自分を壊します。かっこよくて、壊れて、おしまい。

これもすごくいい例えだなあと思いました。「がんばりすぎるな」より、「歯は食いしばりすぎたら砕けます」の方が心に響きます。そういえば、以前、光浦康子さんが似たようなことを言っていました。

「最近きれいになったね」と言われるようになった光浦さん。あるときから、コンプレックスであるお顔のエラが急激に張らなくなりました。「整形したのか?」というくらいの変化。実は、無意識に歯を食いしばる癖を直しただけなのだとか。

長年、辛いことがあっても歯を食いしばって、頑張っていきてきた。その結果、エラが張っていたと。「わたしの頑張りなんだったの~」と、自虐的にツッコむ光浦さんが面白かったというエピソードです。

歯は食いしばりすぎたら砕ける。ついでにエラも張る。いい教訓ですね。

さて、「歯は食いしばりすぎたら砕ける」みたいな言葉って、分かりやすくてキャッチーだと思うのですが、本書にはこうした絶妙なたとえが数多く登場します。

世界的な経営学者である野中郁次郎さんは、連載されている「経営の本質」の中で、大崎さんのことを「言葉の人」と評しました。不適材適所、一番組一起業といった魅力的な言葉が飛び出す、そんな大崎さんのワードセンスに学者さんも驚いたそうです。

千原ジュニアさんが「経営者はたとえの上手い人が多い」と言ったことがありました。吉本はお笑いの会社です。その経営者である大崎さんの本を読んで、例えツッコミのセンスが凄いな、と感心しました。

地位が高くて偉い人なのに、偉ぶらない大崎さん。自分のことは「窓際族」と位の低い感じを出してきます。身分と中身に高低差ありすぎて耳がキーンとしました(笑)

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