ブラッシュアップライフに学ぶ大喜利的日常会話

コラムの第54回。

「大喜利の才能」さえあれば、たいていの問題は解決すると思っています。

晩ごはん何がいい?のベストアンサーとは

先日こんな記事を見ました。それは「晩ごはん何がいい?」と妻に聞かれたとき、なんと答えるのが正解か?を問うものでした。「なんでもいい」は怒られるやつです。「そうめんみたいな簡単なの”で”いいよ」はもっと怒られるやつ(くそ暑い夏に麺を茹でるのは地獄。そうめんナメんな!となる女性が多いそうです)。

ベストアンサーを読むと「いつもありがとう。今日は疲れてると思うし、パーっとUBER祭りにしちゃおうか」と書いてありました。これを言えば「なんて優しい男!キュン」となるのだとか。なるほど、妻の気持ちに寄り添って、しっかり共感することが大事なのですね。

しかし、私は思いました。これを言って許されるのは、相当稼ぎのいい夫なんだろうなと。UBER祭りって下手したら4000円超えます。一食で4000円…。もし家計のやりくりを奥さんに任せているタイプの夫なら「いや値段考えろよ」と思われてNGです。そうなると、真のベストアンサーは「いつもありがとう。僕が作るね」しかなさそうに思えます。でも、もし料理の下手な旦那なら詰みです。

つまり、論理的に正しい答えを導くのは不可能。となればもう、大喜利しかありません。こんなのはどうでしょうか。

■回答案
「今日の晩ごはんの話だね。いつもありがとう。君がつくる料理はいつも最高だよ。レパートリーが多くて。健康的で。超一流。芸能人で言ったら武井壮。10種競技ぜんぶ優秀みたいな。でも、さすがに毎日武井壮だと君も疲れちゃうよね。百獣と戦っているようなものだもんね。だから今日は僕が獣を倒すよ。赤い狐と緑の狸、どっちを倒してほしい?」

夫の手料理がダメならどん兵衛でいく作戦ですが、残念ながら私の大喜利力がまったく足りていませんね。これでは妻も納得できないでしょう。私に大喜利力さえあれば…、と願ってやみません。

ブラッシュアップライフは大喜利

さて、大喜利といえば、お笑い芸人のバカリズムさんです。このお正月は、バカリズムさんが脚本を書かれたドラマ「ブラッシュアップライフ」の再放送がありました。「今さら?」と言われてしまいそうですが、初めてブラッシュアップライフを見ました。めちゃくちゃ面白かったです。

あらすじを簡単に説明すると、安藤サクラさんが演じる主人公アサミが、人生を何度もやり直す物語です。アサミは初めて死んだとき「来世はアリクイです」と言われます。これに納得できず「徳を積んで人間に生まれ変わる!」と何度もやり直します。月並みですが、巧みに張られた伏線の回収が素晴らしく、たいへん気持ちのよいドラマでした。

ストーリーも伏線も一流。役者も主演級(安藤サクラさん、夏帆さん、水川あさみさん、木南晴夏さん…)。褒めるところばかりなのですが、私が圧倒的に凄いなと思ったポイントがあります。それは「日常会話のおもしろさ」です。仲良し女の子グループの何気ない会話がもう大喜利なのです。さすがバカリズムさんだなと思いました。

たとえば、こんな会話シーンがありました。

娘の彼氏
家にアサミと父がいる。父が慌てている。というのも、アサミの妹が、初めて彼氏を家に連れてくることになったからだ。

「もしかして、お嫁さんを僕にください的なことかな?」と想像する父。心配がつのる。来た人が結婚を許せるか微妙なラインだったらどうしよう、と父がつぶやいた。

「微妙って、たとえば?」とアサミが返す。

「首元にサングラスがぶら下がっているとか」と父。
「胸元のボタンをとんでもなく外して広げているとか」とアサミ。

これ、日常会話の皮をかぶった大喜利ですよね。「お嫁さんを僕にくださいと頼みにきた彼氏が微妙ラインだった。どんな人?」というお題の大喜利。なにげな~く話していますけど、会話に遊び心があって、センスが光るな~と思いました。ぜひ見習いたい。

ドラマの中に、こういう大喜利がたくさんあるんです。私がいいなあと思ったものをいくつか紹介しますね。

顕微鏡のピント

医学系の研究室でのシーン。

研究者の中には使った顕微鏡のピントの設定を戻さない人がいるそうです。「めんどくさいわあ~」とボヤくアサミ。そこから展開される先輩との会話が面白い。

「顕微鏡のピントを戻さなくていいレベルの人って、どんな人ですかね~」と先輩が言います。これが大喜利開始の合図。「今なら藤井聡太かな」とアサミ。「大谷翔平もね」と付け加えます。すると先輩が「あとはメッシね」と被せてきます。最後にアサミが心の中で「全員顕微鏡使わないんだけどね」と呟くことでオチがつきます。

これも上手い会話だなあと思いました。顕微鏡のピント戻さない人がいて腹立つわ~という「あるある」で、話としては盛り上がっているのに、そこからさらに「戻さなくていい人って、どんな人?」と大喜利のお題化しているところが凄い。グッとボケやすくなりますよね。

切ない太陽

短いけどこれも好きです。

成人式の打ち上げのカラオケ。アサミの同級生の「福ちゃん」という男の子が、毎回オレンジレンジのイケナイ太陽を歌うくだりがあります。しかし、この福ちゃん、音楽の才能がなく、この先の人生まったく売れません。人生を何周もしているアサミはそのことをよく知っています。そのため、「オレ、いつかは東京ドームでライブするんだ」と意気込む福ちゃんに対し、心の中で「セツナイ太陽」とツッコみます。

この「イケナイ太陽」に掛けた「〇〇ない太陽」系のツッコミが何回か出るのですが、これも大喜利テクというか、高度な天丼だな~と思いました。

父親のイラっとくるところ

たしか第7話の冒頭。アサミにとって四度目の中学生のシーンから始まります。ドラマの冒頭って、漫才でいうところのツカミに似ていると思います。バカリズムさんは、各回のドラマの冒頭に笑えるポイントを入れてツカむのですが、その手法も大喜利的です。

たとえば、こんな感じです。

四度目の中学生。人生を合計すると110歳くらい。四度目でも思春期にはちゃんと父親にイライラする。(納豆のナイロンを上手く剥がす父親のシーンが流れて)伊藤家の食卓でみた裏技をすぐに試そうとするところとか。毎回おかずだけ食べてしまってご飯だけ余るところとか。

これも「父親にイラっとした。どんなところ?」という大喜利ですね。イラっとポイントが些細なことすぎて面白いな~と思いました。女性にとってはあるあるなのかもしれないですね。

サービスポテト

カラオケ屋さんに来たアサミたち仲良し女子グループ。そのカラオケ屋さんでは同級生の「福ちゃん」が働いています。そして、福ちゃんはいつも決まって「これサービスだから」と山盛ポテトをくれます。

ところが。アサミたちは食事をしてきたばかり。「これ絶対言っちゃいけないと思うんだけどさ…」と前置きを入れ「正直もう入んないよねー」「入んない入んない」「入んないのは事実」「ゆるがざる事実だよねー」と女子たちがワイワイ言います。

このサービスポテト入らない問題に着眼するのが、バカリズムさんっぽいですよね。「ゆるがざる事実だよねー」というワードを選ぶところにもクスっときました。もしカフェで隣の席からこんなセンスいい会話が聞こえてきたら笑います。

さいごに

今回は、バカリズムさん脚本のブラッシュアップライフがただ面白すぎたという話でした。バカリズムさんの大喜利力を1/1000でいいから分けてほしいですね。

ちなみに、ブラッシュアップライフを父母と見ていたのですが、最終回を見終わった後、父がこんなことを言いました。「輪廻転生って仏教の概念だけど、具体的な宗派で言ったらどこなんだろう。浄土真宗は浄土にいったら転生しないから違うし…」

私は「これってもしかして大喜利か?」と思い、「輪廻するのは廃品回宗じゃない?」と言ってみたのですが、スルーされました。辛いです。人生やり直して、この大喜利回答をブラッシュアップしたいと思いました(笑)

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