「あ、これQRコードでええやん」ある鉄道職員さんのアイデアで20億円かかる工事が270万円に

おもしろ科学の第9回。

おもちゃの進化がすごいです。驚いたのが図鑑です。今の図鑑はしゃべるんです我が家では講談社さんの「はじめてのずかん900」を使っているのですが、それに付属している「おしゃべりタッチペン」はおもちゃの域を超えていると思います。

講談社BOOK倶楽部HP「書籍シリーズ・雑誌・既刊紹介」より引用。https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000314559
おしゃべりタッチペンの技術

まずペンに当たり前のようにスイッチがあります。これをONにすると、若い女性の声で「シャリーン♪図鑑の写真をペンでタッチしてね」と語りかけてくるんです。でも、まぁそのくらいでは驚きません。が、写真をペンでタッチしてみてビックリ。「きりん」「にんじんしゅうかくき」「げんぼくうんぱんしゃ」…。写真の名前を正確に教えてくれるんです。900個も。えぇ!どうやってんの!?って思いました。

よく見るとペンの先に穴が開いています。中にはセンサーらしきものが。それで写真を読み取るのでしょう。それにしても、こんなペン先のちっこいセンサーで900個もの写真をすべて精確に読みとれるなんて。それも5000円やそこらのおもちゃで。どうやっているのか、すごく不思議でした。

調べてみると、写真の画像を読み取っているのではなく、図鑑に印刷された目に見えない点(カーボンインク)を赤外線で読み込んでいるようでした。えぇー!びっくりです。秘密はペンの方じゃなくて本の方に隠されていたんですね。「ドットコード」という印刷技術だそうです。カーボンが赤外線を吸収しやすい性質を利用した技術だとか。すごいなあ…。

私が最新の印刷技術に感動している横で、1歳の娘はというと、「ドスッ!ドスッ!」とペン先を勢いよく図鑑にぶっ刺していました。いやいや、そんなぶっ刺さなくても読み取れますから(笑)「きりきりきりきりきりきりきりんきりん」ってペンが言ってるから。バグりそう。やめて~。

とにかく、おしゃべり機能のおかげで娘が図鑑に夢中になってくれます。一人で遊んでくれるのは、親としてはマジでありがたいです。技術的には、もちろんペンに内蔵されているICの進化も大事なのでしょうけど、印刷物側の「コード」の進化もえげつないんだな、と思い知らされました。

20億円を節約した超賢いQRコードの使い方

コードで言えば、つい最近「すげ~。天才かよ!」と思ったのがQRコードです。東京在住の方は見たことがあるかもしれません。都営三田線・都営新宿線・都営浅草線を走る電車のドアに「でっかいQRコードのシール」が貼られているのですが、あれ、なぜだかご存じですか?

正解は、ホームドアの開閉タイミングを自動制御するためだそうです。

東京都交通局HPより引用。https://www.kotsu.metro.tokyo.jp/pickup_information/news/subway/2023/sub_p_2023110611219_h.html

都営地下鉄は2000年からワンマン運転を導入しています。そうなると、人の目が減るわけですから、線路に人が立ち入っていないかを確認するのが難しくなります。そこで、物理的に線路に人が入れないようにするために設置し始めたのがホームドア。視覚障碍者の方は「ホームドアのない駅は、欄干のない橋のようだ」というほどの恐怖を感じるそうです。

じゃあ「最初から全部ホームドアにすりゃいいじゃん」となりますが、ネックはお金です。すごく高額らしいです。たとえば、ホームドア化に必要な「無線システム」。これは、車両のドアが開閉していることを無線でホームドア側にお知らせするものなのですが、1両あたり4000万円するそうです

それでも2000年から徐々にホームドアの取り付けは進められていて、2019年にはだいたい完了。残るは浅草線のみという状況に。しかし、浅草線はハードルが高かった。京急・京成・北総・芝山の4線が利用するため「高いのは嫌だ」と揉めたそうです。ホームドア化がとん挫しかけたところで、ある職員がこういいました。

「あ、これQRコードでいいじゃん」←※セリフは私の想像です。

要するに、ドアが開いているかを確認するためなら、わざわざ高い無線を使わなくても、流行りのQRコードをペタっと張って、カメラで認識すれば、サクッと安くできるんじゃないか、と言ったのですね。この発想が「天才だな」と思いました。

こんなの普通思いつきます?中世の貴族が「ミルクティーにタピオカ丸めて入れたら旨いんじゃね?」って言うくらいぶっ飛んだ発想です(タピオカの原料は毒草)。それにQRコード方式を思いついたとして、それを鉄道みたいな「安全のために従来方式を踏襲しときましょう!」と言いそうな業界に導入して新しい風をふかせる実行力、たまらなく尊敬します。

ちなみに、浅草線が通る西馬込駅で言うと、従来の無線システムだと改修工事に20億円かかるところ、QRコードを使うと270万円ですむそうです。マジで天才だと思います。※270万円の内訳は主にQRコードのシール代金であり、駅側に設置されるカメラ代などが入っていません。現実にはもう少し高額にはなるのでしょうが、20億円に比べたら圧倒的に安いのには変わりないので、素晴らしいと思います。

両側のドアにQRコードを貼る意味

私が思う天才ポイントは、これだけじゃありません。たとえば、雨粒がついても読み込めるように50%の破損率に耐えられるQRコード(tQR)を開発したこと。QRコードのシールに「車椅子マーク」などですでに実績のあった剝がれにくくて汚れにくいシール技術を転用したこと。なども賢いアイデアだなと思うのですが、特にビビッと来たのが「両側のドアにQRコードを貼る」という点です。

どういうことか。電車からホームドアに送りたい信号って、よく考えると4種類しかありません。「止まろうとしてます」「今ドア開いてる途中です」「今ドア閉じてる途中です」「走りだそうとしてます」この4つ。実はこれ、電車のドアの両サイドにQRコードを張るだけで一発解決します。

たとえば、止まろうとしているときは2つのQRコードが同時に右移動します。ドアが開くときは2つのQRコードが別々の方向に移動します。こんな感じで、2つのQRコードの相対移動で4状態を分別できるので、カメラでめちゃ簡単に認識できるんです。これ考えた人、賢いですね~。

天才ポイントがありすぎて気持ちよすぎるニュースなのですが、何より粋なのは「特許をオープンにした」ところですね。もとのQRコードを開発したデンソーさん(今はデンソーウェーブさん)は「みんなに使ってほしいから」と言って特許を行使しませんでしたが、今回の都営地下鉄さんも同じ。おかげで、神戸市のホームドアに導入されたりと恩恵が広がっています。気持ちいい~。

本家QRコードの凄さ

QRコードついでに、本家QRコードの「すごいな~」と思うポイントも紹介したいと思います。

QRコードを見ると、角の3か所に白黒の四角い模様があると思います。あれを「ファインダパターン」というのですが、20年以上前に発明したあの四角が「高速な読み込み(Quick Response:QR)」の肝であり、今だに破られない最強な模様なのだそうです。

ファインダパターンは、白黒白黒白黒白が1:1:3:1:1の比率で並んでいます。四角い図形なので、どの方向から見ても1:1:3:1:1。この1:1:3:1:1の黄金律は、世の中の印刷物にほぼ見られないパターンらしいです。そのため「あっ!これはQRコードだ!」とカメラが高速で認識できるのだとか。たしかに、肉眼でみても「QRコードっぽいな」という強い印象を受けます。

さて、どうやってこの黄金律を導き出したかというと、開発者の原さんによると「地道にいろいろ調べた」とのこと。泥臭いですね~。でも、そういう地道さが大事なんでしょうね。すごいなあと思います。そんなに頑張って見つけた法則を「みんな使ってください」ってオープンにできるのですから、人間ができています。

QRコードはコンパクトなマークだけど、開発者の器はデカいと。私だったら絶対「みてこれ!俺が発見したマーク!QRコード言うねん!すごいやろ!」と相手のクイックレスポンスを期待してしまいます(笑)自分の中の要らんおしゃべりタッチペンを制御できる技術がほしいですね。

参考文献)

東京新聞「独自の「QRコード」を編み出した理由を聞いてみると…ホームドア設置率100%を達成する都営地下鉄」https://www.tokyo-np.co.jp/article/284136

特許庁HP「「QRコード」(株)デンソーウェーブ」https://www.jpo.go.jp/news/koho/innovation/01_qrcode.html

note「東京都交通局のホームドア開閉を職員考案のQRコード方式にしたら、従来の20億円から270万円にコストダウン出来た」https://note.com/miss_ephemeral/n/n6009163d4893

ANNニュース公式Youtubeチャンネルより

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