三つ子のギャグセンス百まで

コラムの第55回。

言葉選びって難しいなあと思った話です。「あいさつとスカートは短い方がいい」という親父ギャグを放った市長が、「完全にセクハラである」として辞職勧告を出された、というニュースを耳にしました。

引っかかること

問題発言をしたのは、福岡県中間市で市長を務める福田健次さん。63歳。

北九州市のホテルで開かれた会合に、来賓として呼ばれた際、場を和ませようとして冒頭の親父ギャグを放ったそうです。ところが、場が和むどころか、大炎上してしまいました。

いろんな意見が寄せられています。「そのくらいいいじゃん」とか。「不快に思う人がいる」とか。「市長としての立場を考えろ」とか。

まあ、パブリックな場で下ネタはダメですよね。セクハラか、セクハラじゃないかでいったら、セクハラです。

でも、ひと昔前なら許されていました。昔はセーフだったけど今はアウトなことって結構あります。

そもそも、今回の「挨拶とスカートは短い方がいい説」は、イギリスの元首相チャーチルさんが言ったものだそうです。首相が公共の場で下ネタをぶち込んでいたんですね。

“A good speech should be like a woman’s skirt; long enough to cover the subject and short enough to create interest. 

和訳:ちょうどいいスピーチとは、女性のスカートのようなものだ。中身をカバーできるくらいの長さがあって、興味を引くくらい短い。

また、私の記憶では、2011年のTHE MANZAIで博多華丸さんがスカートのくだりをネタにしていました。そのときも、別にセクハラだなんてあげつらう人はいませんでした。

福田市長としても「場を和ませたかった」と言ってますし、悪気はなかったと思うんです。不適切ではありましたが、責められ過ぎていて、気の毒だなあと。

同情はします。が、肩入れするつもりはありません。「ちょっとした悪ノリも許されない生きづらい世の中になった!」と主張したいわけでもなく、「セクハラ発言をした市長を辞めさせるべきだ!」と責めたいわけでもありません。今はそういう風潮なんだと感じるだけ。

じゃあ何が言いたいかというと、「あいさつとスカートは短い方がいい」じゃなくて「スピーチとスカートは短い方がいい」ちゃうか?ということです。語呂が良くないなあと、引っかかりました。

市長としての進退がかかるほどの重大発言にも関わらず、「あいさつ」と「スカート」では言葉が掛かっていません。発言は地雷を踏んでますが、ついでに韻も踏んでほしかった。

「そんな細かいこと」と思われるかもしれないですが、そんな細かいことが気になってしまうくらいは、私は親父ギャグが好きです。自称・親父ギャグを守る会としては、親父ギャグを正しく使ってほしかったなあと思いました。

三つ子のギャグセンス百まで

私が言うのもなんですが、親父ギャグって、あんまり良いものじゃありません。

まずスベります。セクハラになる率も高い。基本的にメリットはゼロ。しいてあげるとするならば、私みたいなオジサン同士の会話が、ヴェルダースオリジナルキャンディーの味わいくらい滑らかになることでしょうか。

じゃあなんで私が親父ギャグを好きなのかというと、私の「笑いの原体験」が親父ギャグだったからです。幼いころに、親父ギャグ=おもろい、という思考回路が刷り込まれてしまったのです。

まだ私が小学生だったころ。大晦日は親戚の家に集まって、食事をする流れがありました。毎年決まってカニがありました。カニは人気です。みんな我先に取っていきます。が、やはり最後の一本は食べづらい。小学生ながら遠慮していました。すると、叔父さんがこんなことを言いました。

「食べ食べ!遠慮の塊じゃ!」

私は大爆笑。「えっ!めっちゃおもろい!残り物を”遠慮の塊”って例えるなんて!ぷぷぷ」。母にそのことを言うと「いや、定番の親父ギャグやから」と冷めた感じでした。しかし、私は初めて聞く親父ギャグが面白かった。それ以来、親父ギャグが好きになりました。

千原ジュニアさんによると、笑いの原体験、すなわち、幼いころに初めて「おもろい!」と思った出来事は、その後のギャグセンスに大きな影響を及ぼすそうです。私はこの現象を三つ子のギャグセンス百までと名付けました。

いろんな芸人さんの笑いの原体験を聞くと、なるほどなあ、たしかにギャグセンスって幼いころに決まってるんやなあと思います。

たとえば、ずん飯尾さんの場合。飯尾さんが小学五年生のとき、ある食べ物の名前がとっても気に入ったそうです。とにかく語感が面白い。ワードの語感だけで2時間笑い続けるくらいおもしろかった。そこで翌日、学校に行って、友達の耳元でそっと囁きました。

「ぱっくりピスタチオ」

すると友達も大笑い。今の飯尾さんそのまんまですね。

他には、千原ジュニアさんの原体験もすごいです。千原ジュニアさんは、子どものころ、浦島太郎の竜宮城のイラストを見ていました。すると「絵〜にも描けない、美しさ〜」という歌が聞こえてきました。それを聞いて「いや、絵に描けてるやん」と思ったそうです。

言葉の違和感に敏感なところが、今のジュニアさんと変わらないなと思いました。観察力がすごい。

ちなみに、この原体験は、ジュニアさんの中でフラッシュバックします。お笑いの世界に入り、板尾創路さんを心の師匠と仰ぐようになったジュニアさん。ある日、板尾さんと二人で街を歩いていたそうです。すると「フレッシュチーズ」と書かれた看板が。

それを見た板尾さんは、ボソッと「チーズは腐ってんねんけどな…」と呟いたそうです。ジュニアさんは浦島太郎のことを思い出し「うわぁ!笑いの感覚一緒やー!」と思ったとか。自分の笑いの感覚が正当化されたような気持ちになったそうです。

飯尾さんも、ジュニアさんも、さすがプロの芸人さんというか。小さいころから笑いのセンスが凄かったんですね。うらやましいなあ。私、親父ギャグですよ(笑)

せめて我が子のギャグセンスは磨いてあげたいので、家では親父ギャグを放たないようにしようと思います。

参考文献)

RKBオンライン 「あいさつとスカートは短い方がいい」と発言した市長に議会が辞職勧告決議 賛成多数で可決 https://rkb.jp/contents/202312/202312149249/

ずん・飯尾和樹の規格外の想像力が日本を救う!?【岸博幸のオトナの嗜み オトコの慎み】https://goetheweb.jp/person/article/20210620-kazuki_iio

名言の海外HP「GoodReads」https://www.goodreads.com/quotes/421900-a-good-speech-should-be-like-a-woman-s-skirt-long

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