トークや文章がおもしろい人たちが気をつけていること。パート1

コラムの第67回。

芸人さんの深夜ラジオをよく聞きます。

きっかけはオードリーさんでした。大学生の頃、「オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです」という、若林さんと春日さんが、変な素人さんをイジる番組に出会い、なんだこれ、と思いながらも見てみると、世界一おもしろくて、それ以来、オードリーさんの大ファンになりました。

オードリーと名のつくものなら何でも摂取したい衝動に駆られました。

テレビはキーワード「オードリー」で全録画するのはもちろんのこと、ライブにも行き、至極自然な成り行きで、オードリーのオールナイトニッポンも聞き始めました。これが人生初の深夜ラジオでした。

そしたらラジオの方がテレビよりもずっと面白いんだと思うようになりました。でも、ラジオって下ネタが過ぎるから周りに言えなくて、言ったら初期の鬼瓦くらい引かれそうな気がして、この凄さ誰かに言いてぇ~って、ずっと思っていました。

今やオードリーさんと言えば、テレビではMCをバンバンこなし、テレビ出演本数では1位になり、ラジオは700回以上も続くお化け番組となり、トゥースを聞かない日が無いくらい、超有名芸人さんになりました。やっと安心してオードリー好きを公表できるようになりました。

しかし、「オレ、むかしっから、オードリーおもしろいと思ってたんだよね~」なんて言うと、ウザい古参ファンに見られてしまうので、なるべく息を潜めながら応援しています。

ただ、自分が古くから目をつけていた芸人さんが、スターになっていくのを目の当たりにするのは、やっぱり嬉しいものです。自分のお笑いセンスが間違っていなかったことの証明のような気がして、誇らしくなります。すごいのは私じゃなくてオードリーさんなんですけどね。

そんなオードリーさんのラジオを陰で支えているのがスタッフさんです。中でも、藤井青銅(ふじいせいどう)さんは、若林さんのラジオタレント性を見抜いて番組に抜擢した伝説的な構成作家です。

「今日のトーク、これで大丈夫ですかね」

若林さんはいまだにラジオの本番前、フリートークように用意した小噺を青銅さんに聞いてもらい、修正してもらうそうです。そのくらい若林さんは絶大な信頼を置いているし、青銅さんのアドバイスが的確なのだとか。

お二人が対談している動画のリンクを貼っておきます。

オードリー若林と二人っきりサシ対談【構成作家:藤井青銅】若林に蜘蛛の糸を垂らした”ラジオ界のお釈迦様”

この動画の中の、若林さんの言葉をぜひ紹介したいんです。

要約すると、「今の人は、noteやブログ、ツイッターみたいなのがあるから、経験したことをキレイに、面白く伝えたい人が多いと思う。そういう波が来ているから、青銅さん、エピソードトークをする学校とか、トークの磨き方を教える本を書いたほうがいいですよ」ということでした。

はい! 私、読みたい! 青銅さんのトーク術を学びたい!

そしたら瞬間、「そうかなぁ、そんな人前で面白い話したい人いないよ~」青銅さんが否定していて、がっくり……。書いてくれなさそうな雰囲気でした。こんなに読みたいのに。

青銅さんが教えてくれないなら、自分でトークを磨くしかない、自分で文章を磨くしかない。そう思いました。前置きが長くなりましたが、自力でトークや文章を磨くために、私が日頃メモしている「このスキル使いたいなあ」と唸ったテクたちを紹介したいと思います。

系列ワードでツッコむ

お笑い芸人・蛙亭さんのラジオ番組「蛙亭のオールナイトニッポンi」の第5回で紹介されたトークです。

蛙亭のツッコミ・中野さんには、エリちゃんという彼女がいます。ある日、中野さんは、行きつけの居酒屋に、初めてエリちゃんを連れていきました。

エリちゃんは芸人さんではありませんが、コミュ力が異常に高いらしく、大将や常連の映画監督とすぐに仲良くなりました。いえ、仲良くどころか、なんなら話を振って、盛り上げて、場を回しだしたそうです。

エリちゃんの回しがあまりにも達者なので、みんな気持ちよくなって、ボケ出したりして。それにエリちゃんがツッコんだりして。それはもう、中野さんがジェラシーを感じたほどでした。

しかし、中野さんは思いました。いやいや、そうは言っても、僕はプロの芸人だし、ツッコミの角度で言えば、僕の方が上だと。

そんな中、「もし仕事が無くなったらどうする?」という話題になり、すでに気持ち良くなってる大将が、ボケを放ちました。

「そしたら、寿司屋たたんで、ラットひとつを商売道具にしていくよ!」
「なんでなんですかー!いや、そんなん、ベンジーにグレッチで殴られたくないでしょ!」

間髪入れずツッコみを入れたエリちゃん。ノータイムで「これは丸の内サディスティックの歌詞でボケてきてるな」と判断し、その歌詞に出てくるワードでツッコむという、超高等技術をみせてきました。

中野さんは「負けたぁ」と思ったそうです。さらに、このエピソードを聞いた相方の岩倉さんも「マジかぁ!イカツ!」と驚いていました。

プロ芸人を唸らせるツッコミ!

それも素人が、居酒屋で、サラッと、なんの準備もなく。なんですか、これは(笑)レベル高杉謙信。到底、真似しようがないものを紹介してしまいました。

頑張ってマネできるところを探すとすれば、ありふれた言葉でツッコむのではなく、ボケと同じ系列のワードでツッコんでいるところは、ぜひ取り入れたいですね。

普通だったら、ラットひとつを商売道具にしていくよ!みたいにボケられたら。なんでやねん!とか。うまいこと言うな!とか。ギタリストか!しか出てこないと思います。

そこをエリちゃんは、丸サディの歌詞のページを頭でめくってめくって、いい感じにカタカナでラットに対を為しそうな「ベンジー」と「グレッチ」を拾ってくるまでの努力をしています。見習いたいです。

ワードが浮かびやすい前フリを入れる

ざっくりYoutbeというチャンネルで、フットボールアワーの後藤さんが解説されていたテクニックです。

後藤さんには、むかし付き合っていた「ぴっちゃん」という彼女がいました。

その女性が、とにかく天然で。居酒屋に入って、なんかカレーライスみたいなん食べたいなぁ、と席についたぴっちゃん。メニューをじーっと見ています。後藤さんが「なんにするん?」と聞くと、ぴっちゃんがこう答えました。

「うーん、このトマトス?のライスにする」

それ、トマト スライスだったんですよ。どこで切ってんねん、天然やわ~。という話です。さて、このエピソードトークには、一か所だけ盛っているところがあります。それは「カレーライスみたいなん食べたいなぁ」という部分。これ、実際には言っていないそうです。

この動画の企画は、エピソードトークをあえて少し化粧して披露し、さあどこを盛って話したでしょうか、を当てるものでした。そこで後藤さんが付け加えたのが「カレーライス」。

というのも、以前、後藤さんがこのエピソードをライブで話したところ、唐突に「トマトスライス」が出てきて、あまりウケなかったのだとか。

なんでウケんかったんやろ、そうか、〇〇ライスのフリが弱かったんか、と考えた後藤さんは、トマトスライスに似た言葉、なんかないか、なんか、探して、カレーライスを先に付けたらええやん、に行き着いたと言います。

つまり、普通は「トマト スライス」なのに、天然なぴっちゃんは「トマトス ライス」で分けんねや~、という風にオトしたいときは、ライスを印象付ける前フリがあった方がいいから、カレーライスで振っとくというテクです。

これは上手な化粧ですね。ナチュラルメイクすぎて石原さとみかと思いました。

凄いものを汚いものでたとえる

たとえが秀逸な文章は、クスっときます。

QRコードって何だ。あの排水口のゴミみたいな模様が「情報」って、どういうことなのだ。赤外線通信って何だ。街のいたるところで男女が赤外線を飛ばし合ってるってこわい。

西加奈子著「まにまに」KADOKAWA,2015年.p.43

QRコードみたいなすごい技術を、ゴミみたいな汚いもので例えないでよ(笑)と思いますが、でもよく考えたらホントにゴミみたいで、あるある感が絶妙です。

映像と心境を細かく描写する

ドラマを見ているみたいに、頭に映像が浮かぶ、それくらい細かく描写すると、話に引き込まれます。

数年前渋谷で、ある人とすれ違った。胸に「LOOK AT ME CAREFULLY」と書いたTシャツを着た男性だ。「注意深く私を見てください」望むところだ。

彼は、お洒落な眼鏡をかけ、短髪で、レコード屋の袋を持っていた。何をするのや、何をしてくれるのや、興奮しながらしばらく後をつけたが、彼は人にぶつからないように歩くだけで、別段、何もしなかった。腹が立った。

西加奈子著「まにまに」KADOKAWA,2015年.p.56

そもそも、なに勝手に挑んでんねん(笑)という点が面白いのですが、「望むところだ」以降の描写が素晴らしいなと思いました。

文章力がない私のようなものが書くと、後半の段落は「だが、何もしなかった。腹が立った」で終わってしまいます。あっさりしたものです。つまんね~。

でも、西さんは違います。「お洒落な眼鏡」「短髪」「レコード屋の袋」で男性の外見を想像させ、何かしそうな感を醸し出します。

さらに、「何をするのや、何をしてくれるのや」のように、心の中で期待感が膨らんでいく心象風景まで書いているので、読者も「何してくれんのや?」と気持ちが上がっていきます。

このように、見えている映像や、心の内を細かく描写すると、いかにも何かしそう、というフリが効いてくるので、最後の「何もしなかった」でしっかりオチますし、期待した分「腹が立った」に共感できます。西さんの文章は、ホントうまいです。

まとめ

おもしろく話したり、おもしろく書いたりするのに役立ちそうだと思ったテクニックを、ざっくばらんに紹介しました。今回紹介したのは、

・系列ワードでツッコむ
・ワードが浮かびやすい前フリを入れる
・凄いものを汚いもので例える
・映像と心境を細かく描写する

でした。参考になりそうなテクを、ちょこちょこメモっているので、また紹介します。

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