トークや文章がおもしろい人たちが気をつけていること。パート2

コラムの第68回。

こんなこと言うと「どこの初号機パイロットやねん」と思われてしまうかもしれませんが、面白い時どんな風に笑えばいいか解りません。

自分では「超うける~!」と思っているのに、表情が息していない。そんなことが日常茶飯事です。笑うのが下手です。嫌になります。どうして私の表情筋はこんなに元気がないんだろう。考えてみると、青春時代の誤った思想から来ているように思います。

10代のころの私は、かたくなに「心からおもしろいと思えない限り、笑う必要などない!」という姿勢を貫いていました。自分の笑いのセンスに正直になることが正しいと思っていました。

とんでもないやつ。

そんなだから友達も少なくて。数少ない友人の中には、「おまえは笑わせがいがあるよ」と言ってくれる芸人精神あふれる人もいましたが、ほとんどの人には「つまんねぇ奴」と思われていたことでしょう。私だって横にいたら嫌ですもん。なに冷めてんねんって言いたくなりますもん。

ちなみに、私が一番笑ったのは、同級生の男の子が裸になって踊っているときでした。

裸踊りで呼吸困難になり、意識が朦朧とする中、ハッとしました。自分が人のギャグで笑わないのは、笑いのセンスが高いからじゃない。単純に笑いが苦手なだけなんだ。そしたら、猛烈に恥ずかしくなりました。しもた~。センス気取ってた~。痛タタタタ。

それ以来、笑いたい、と思うようになりました。

そんな、ハートに包帯を巻いている系男子な私ですが、いえ、だからこそ、些細なことで笑える人達を見つけると、とても嬉しくなり、観察してしまいます。観察というより、研究に近いかもしれません。どうしてそんなに笑えるの? どういうメカニズムなの? あなたは何なの? そして、気付きました。

「面白い人≒よく笑う人」だ!

そうなんです。面白い人ほど、よく笑うんです。つまんない話でも、「なにがそんなにおもろいの?」ってくらい、爆笑するんです。特に、芸人さんは、本当によく笑います。そして、絶妙な合いの手をいれます。

あるベテラン芸人さんが言っていました。

「おもんない話でも、笑ってしまうねん。話ききながら、俺ならこう話すって考えるやろ。そこの順番変えて。ここのくだりは切って。そしたら、自分が考えた話がおもろすぎて、笑ってしまうねん」

だからか!だから笑うのか!

さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回は「トークがおもしろい人が気をつけていること」のパート2です。トークがおもしろい人は、めちゃめちゃ「聞く努力」をしています。頑張って聞く、ということに気をつけているなぁと思います。

なんかよく分からなくなってきたなと思ったら「それって、こうですよね?」と説明を入れて、トークの映像化を助けたり。一回聞いた話でも、初めて聞くような表情で聞いたり。なにより、めちゃくちゃ笑ってくれたり。そうやって、自分が主役じゃないときでも、場のトークが盛り上げています。

要するに、MC能力が高いんです。

今回は、ある対談動画を紹介します。注目してほしいのは、東野さんの「聞く努力」です。トークの主役は別の芸人さんなのですが、聞き手の力で3割増しくらい面白くなってるなぁと思います。

東野さんの聞く努力

見ていただきたい動画は、BSよしもと公式チャンネルさんの、「東野山里のインプット」という企画の動画です。

この企画は、ある分野に詳しい芸人さんをゲストに呼んで、その分野のざっくり知識と「通っぽいワード」を東野さんと山里さんにインプットすることで、今後のMC活動に役立てる、という趣旨です。

凄いな!と思ったのが、麒麟田村さんがレブロンを紹介する回です。

BSよしもと公式チャンネル。【今まさにインプットすべき!】続編!レブロン・ジェームズをインプット【東野山里のインプット】

レブロン・ジェームスといえば、マイケル・ジョーダンにならんで「歴代最高の選手」と呼ばれるくらい偉大な、NBA界のスーパースターです。私も大好きな選手です。

で、何が凄いかというと、普通NBA選手を紹介するときは、プレーのハイライト集を見せながら「このダンクがエグイ!」とか「このブロックは人を超えてるやろ!」みたいな、映像を頼りにするんですけど、このインプットという企画は、映像を一切使わない。トークだけなんです。

トークだけで、バスケの魅力って、こんなに伝わるの!?

衝撃を受けました。まず田村さんが、めっちゃ話うまいんですけど、よくよく聞くと、それ以上に、東野さんの聞くテクニックがえげつないんです。

サラッと補足

東野さん「えー…。最高年俸のプレーヤーって、どんくらいもらってんの?」
田村さん「レブロンが長者番付ランキングで5年連続1位獲ってるんですよ」
東野さん「えー!」
田村さん「一番高い年で163億」
東野さん「一年で」
田村さん「はい、一年で」

サラッと流していて、動画だと聞き取れるかどうかくらいの音量なのですが、「一年で」と補足をいれるところが、さすが東野さんだなと思いました。

トークを面白くする要素の一つは「変なひっかかりを無くす」ことだと私は思っています。というのも、「え?どういう意味?」という雑味が入ると、一気に冷めるんですよね。

そういう意味では、田村さんの「一番高い年で163億」でも分かりやすいんですけど、ここには二つ要素があるので、分解した方が伝わります。163億円も貰っているというビックリ。それがたった一年というビックリ。

たぶん東野さんは一瞬でそれを見抜いて、あっ情報多いな、と思って「一年で」と補足したんだと思います。

オウム返しビックリ

田村さん「体のケアに一年で1億使ってるとか」
東野さん「体のケアに一年で1億!?」

秘技「オウム返しビックリ」ですね。たぶん、意識してやられているテクニックだと思います。

東野さんは、芸人さんの中でも、特にリアクションの強弱がハッキリしている方です。

リアクションに強弱があると、何がいいかというと、トークにハイライトがつくんです。たとえば、東野さんが大きくリアクションしたら、「あっ、ここが凄いんだな」「ここが面白いんだな」というポイントが聞いてる側に伝わりやすくなります。ハイライトのついた本が読みやすいように、トークも乗りやすくなるんですよね。

ここの「体のケアに一年で1億」は、東野さんが特に大きくリアクションしているところです。オウム返しすることで、「ケアに1億」というワードが際立ちます。うまいです。

フリ・オチ、からのフォロー

山里さん「何にそんな使うんですかね?1億も」
田村さん「・・・マッサージ?」
東野さん「ワッハッハッハ!」
東野さん「ワンプッシュ高いね~」

これ!

これ!これ!これが凄いんですよ!めちゃくちゃキレイなフリ・オチ・フォロー。山里さんがフって、田村さんでオチを作る。普通の会話ならここで終わりそうなところですが、それだとちょっと弱い。

なぜマッサージに一億も使うのが変なのか?を説明する「フォロー」をいれると、笑いどころが明確になって、より面白くなります。

そのフォローとなるのが、東野さんの「ワンプッシュ高いね~」です。すごく的確。しかも、東野さんがめちゃめちゃ笑ってるから、「ここが笑いどころなんだな」もハッキリします。笑ってあげるのもフォロー。つまり、この流れは完璧なんです。いや~。すごいな。

〇〇するなよ!絶対にだぞ!

田村さん「まずはレブロンのスーパープレーが一個あるんですけど」
東野さん「絶対に自分で再現するんやめてや(笑)」
東野さん「こっちはホンマの映像みたいのに、急にお前がこうやって、こうとか嫌やから」
東野さん「はぁ!?ってなるから」

これも上手い!笑いのひとくだりを生む、絶妙な合いの手ですね。

あと、東野さんも意図していないのですが、ここで「スーパープレーはちゃんと見たいねんから、絶対台無しにすなよ。絶対にやぞ」というダチョウ倶楽部的なフリが生まれることで、番組の後半、田村さんが天然ボケをかましたときに、その日いちばん大きな爆笑になるんです。(コレはぜひ動画で見ていただきたい!)

だから、ここは凄く重要な布石になっています。偶然とはいえ、細かい笑いのひとくだりを、しっかり作っていく東野さんの努力があってこそです。地味にすごい聞きテクでした。

的確なツッコミ

治安の悪いところで生まれ育ったレブロン。心配した母が9歳でコーチにレブロンを預けます。
田村さん「ちょっとホームレス中学生みたいな生い立ちなんすよ…」
東野さん「いやいやいや」
山里さん「和製レブロン!」
東野さん「入ってくなよ!」
田村さん「入れてくださいよ~」

これは田村さんがボケているので、聞き手としてどうツッコむかが問われる場面ですね。

「僕ってちょっとレブロンなんですよ」というボケ。全然違うでしょ、を待っています。このボケに対し、山里さんと東野さんが正反対な方向からツッコんでいるんが面白いですね。

山里さんは「和製レブロン!」と、ボケを肯定するような説明をしています。「和製〇〇」というお洒落な包装紙で包んであげることで、田村さんのボケが助長され、なんだか、田村さんに凄い人感がまとわれます。なので、これは実はツッコミではなく、ボケです。

そこに、本来のツッコミワードである「全然違うでしょ」を入れたのが東野さん。実際は「入ってくなよ!」と捻ってますが、それでも的確な指摘です。全然違うのに、似ていると変なことを言っているので、違うよと指摘する。オーソドックスな漫才スタイルですね。

オーソドックスだからこそ、田村さんと山里さんのボケだけでは小笑に留まり、ツッコんだ東野さんのところで大きな笑いになります。ツッコまれた田村さんも嬉しそうです。

ボケた雰囲気で変なことを言っていたら、ちゃんと的確に指摘してあげる。基本のキみたいな「聞くテクニック」ですが、これが大事なんやで、と東野さんが言っているように感じました。

身近に置き換えた例え

田村さん「そもそもまずは、キャバリアーズというチームにはいって、地元のスーパースターな訳ですよ。出身も地元。ほんで高校も。ドラフトNo.1でNBA入った。史上二人目や。すごいお祭り騒ぎで…」
東野さん「だから、福岡の高校のピッチャーが高校野球で優勝して、ソフトバンクホークスにドラフト1位みたいなことや!?」
田村さん「そうなんです」

なに、この、頭の回転の速さ。アメリカだとちょっと分かりづらいから、日本の、それもスポーツとしてメジャーな野球で例えよ~、ですよね。お笑いIQ高すぎです。

これはめちゃくちゃ参考になるテクニックですよね。分かりづらいなと思ったら、思い切って身近なもので例えてみるという。地元が盛り上がっているイメージが鮮明になります。

よく考えたら、間違っているんですけどね。キャバリアーズのあるクリーブランドって、すごく田舎なので、福岡っぽくはない。たぶん、広島とか、仙台とか、北海道とかに例えたほうが近いんですけど、でも、そこまで追求するのは野暮です。

逆に言えば、そんなに正確に例えられていなくても、トークに立体感がでるといういい例を見せてもらったなぁと思います。

映像化サポート

田村さん「NBAの歴史の中で、一番の称号は、チャンピオンになることなんですよ。なによりも。なので、マイケル・ジョーダンが6回優勝しているのが、いまだに、ずーっと、やっぱりマイケルすごいよね…」
東野さん「なんかコートで、なんかそういう、トロフィーみたいなん持って、ほんで紙吹雪の中、帽子かぶってるよって、有名な」
田村さん「はい、葉巻加えて~」
東野さん「葉巻加えてみたいなんあるけど、あれがやっぱステータスなん?」
田村さん「あれが、さいっこうのステータスなんすよ」

映像化。

千原ジュニアさんが言ってました。面白く話すコツは、自分の頭の中にある映像と、そっくり同じ映像を相手の頭にイメージさせることだ、と。

鳥山明さんが言ってました。等身の小さいキャラばかり書くのは、その方が小さいコマの中でも動き回れるからだ。漫画は、キャラが動けば動くほど、面白くなるのだ、と。

とある小説家が言ってました。人物を描写するときは、髪から目、鼻、服、ズボン、靴の順で書きなさい。実際に自分の目線が動いて見えるように書くと、映像が見えてくる、と。

映像化。要は映像なんです、面白さって。目の前でドラマが起きてるのが面白いんです。さて、田村さんの説明は、分かりやすいのですが、「6回優勝」という事実だけを話しているので、少し物足りない感じがあります。

そこに東野さんが「コートで」「トロフィーもって」「紙吹雪の中」「帽子被って」と視覚化できる燃料を放り込むと、聞いている私の脳裏に、マイケルがトロフィー掲げている映像がバーッって見えてきます。興奮します。

話し手の映像化が弱いなと思ったら、ビジュアルを補足をして、見えるようにしてあげるといいんですね。もちろん、東野さん級の腕があってこそ、ではありますが、すごく勉強になりました。

まとめ

面白く話せる人が、ひとのトークを聞くときに、めちゃくちゃ頑張って、テクニックを駆使しているという話をしました。特に凄いなと思ったのが東野さんです。たった1本の動画の中でも、

・サラッと補足
・オウム返しビックリ
・フリ・オチ、からのフォロー
・〇〇するなよ!絶対にだぞ!
・的確なツッコミ
・身近に置き換えた例え
・映像化サポート

というテクニックが詰まっていました(私が見落としているだけで、もっとあると思います)。

これだけ熱心に話を聞いてもらえたら、話す側は嬉しいでしょうね。そして、聞く技術も素晴らしいですが、やっぱり根底には「おもしろく、オイシくしてあげたい」という東野さんの優しさがあります。

絶対に東野さんが読まないであろうこのブログですが、東野さんのことを書くだけで「あほ!ほめすぎやがな!きもちわる~。でも、もっとホメてや」というツッコミが聞こえてきそうです(笑)

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