ハンドブレンダーは、こうやって使う

コラムの第76回。

家でハンドブレンダーを使っていて「そうきたか。…やるやん」と思ったことがあります。今回はそんな話。

ハンドブレンダーというのは、いってしまえば、賢いミキサーです。「離乳食づくりに便利だよ!」と妻に聞き、子どもが生まれたのをきっかけに購入しました。

大きさは、ちょっと細めの大根くらい。中に電動のモーターが入っていて、先が取り外せるようになっています。いいものになると1万円を超えてくる。「この大根が1万円か~」と最初はびっくりしますが、使ってみると、まあ多機能で凄いんです。

泡立て器をつければホイップができるし。回転刃(ブレンダーと呼ぶ)をつければカボチャのポタージュができます。スムージーみたいな洒落たドリンクだって作れちゃう。

すごいなぁ~。

でも、こういう家電って、熱しやすく冷めやすいんですよね。

実は洗うのが面倒臭かったりして。数か月もするとキッチンの端でほこりを被り、私の方を恨めしそうに見てくるだけの置物になりました。

さて、このあいだ台所に行くと、母が嬉しそうゴソゴソしていました。どうしたんだろうと思い、見てみると、(私が知らない間に買った)ハンドブレンダーを開封しているようでした。

え、私、持ってるのに。

「げ」という顔をしている私をよそに、母がキラキラした目でハンドブレンダーを愛でています。ここで余計な買い物だよ、と言ってしまうのは野暮というものです。

「すぐ使わなくなるのになぁ」と思いながらも、まあええか、と考え直して、母に言いました。

「お!ハンドブレンダー買ったんだ~。何につかうの?」

すると母は、よくぞ聞いてくれました、というふうに鼻を膨らませました。「〇〇ちゃん(←孫の名前)の離乳食を刻もうと思ってね」。めっちゃ嬉しそうやん。

でも、私の方はブレンダー熱がとっくに冷めてますから、そんなにええもんじゃないよ、と斜に構えて聞いていました。

さっそく使いたくてしかたない母。鍋を取り出します。中から軽く煮込んだ人参やらキャベツをつまみ上げ、ブレンダーの専用容器に、バサッと、それらの野菜を放りこみました。

いつもならキッチンバサミで1センチくらいの食べやすいサイズに切るところですが、ブレンダーなら一瞬で小さくできる、と母は考えたようでした。

「いくよ」

ヴィイイイイイン!

ブレンダーが起動。一瞬のうちに野菜は粉々にされ、1センチサイズどころか、ドロドロのペーストになりました。やりすぎです。

全然だめやん。

まあそうなりますよね。ブレンダーって粉々にするのは得意ですけど、ちょうどいい大きさに整えるのは苦手。

それに娘は歯も生えてきてるので、キッチンバサミで十分です。無駄なもの買っちゃったね、と母を憐れみました。

まあ、こんなふうにやっちゃう時はやっちゃう母なのですが、すごいときは凄い。

最近、感動した話があります。

私、今年の正月に前十字靭帯を切ってしまって、スポーツどころか歩くこともできない日々を過ごしているのですが、食欲だけは落ちてくれません。

なんならケガする前以上に食べてしまいました。そしたら二週間で1キロ太り、妻にも「顔まるくなったね」と。

これはヤバい。

このペースで太ると、前十字靭帯が完治するまでの8か月間で、体重が100キロを超えてしまう計算になります。また膝が壊れてしまう。痩せねば!ということで、ダイエットを始めました。

私はダイエットに関していわゆる正攻法を好むタイプです。

1日の消費カロリーが3000kcalになるように有酸素運動(とにかく歩く、ジョギング、そしてバスケ)をして、さらに、摂取カロリーが1800kcal~2000kcalになるように食事制限をします。

こうすると、だいたい1週間で7000kcalちょいくらい消費できます。これは脂肪1キログラムが燃焼するくらいのエネルギーです。えぐい痩せ方です。

もちろん、やっている間はキツイですけど、2か月やれば6キロ~8キロをサッと落とせるので、ダラダラ長いこと我慢するよりかは楽なのです。

ところが、今回はケガをしているので、まったく運動ができません。私が消費できるのはせいぜい基礎代謝分(1800kcalくらい)。

そうなると、食事量を1800kcalに抑えたとしても、まったく痩せません。ずーっと食事制限し続けなければならなくなります。

地獄です。

これは辛いなぁ、と思っていたら、母が「これ食べてみな」と、あるものを持ってきました。

それは手づくりコーヒーゼリーでした。人口甘味料とコーヒーフレッシュで味付けしたシンプルなゼリー。私、感動してしまいました。

というのも、どでかいプッチンプリンくらいの量のゼリーを食べても、約15kcalという、驚きのダイエット食なのです。めちゃくちゃ満足感があります。

調子にのって1日3個も4個もバクバク食べちゃっています。

人口甘味料をたくさん摂取しているので、カラダに悪いかもしれませんが、まあ100キロ超えるよりはマシだろう、と思っています。食欲のリミッターを解除して食べられる、貴重な食糧です。

こんだけ食べると、すぐになくなります。毎回母に作ってもらうのも悪いし気兼ねするので、作り方を教えてもらいました。

まず大きめの鍋に1500ccの水をいれます。そこに植物性寒天パウダー(イナアガーL)を30グラム加え、沸騰させます。お湯がボコボコしたら、火をとめ、インスタントコーヒーの粉を30グラムとかして、あとはコップに小分けして冷ますだけ。

すごい。簡単じゃん。

さっそく私も作ってみました。鍋に1500ccの水を入れて、火をつけます。そこにイナアガーLを30グラム、ドバっと入れました。

すると、鍋の中に白い、スライムみたいな、どうしようもない物体が現れたではありませんか。

えー!なにこれ?!

母に事情を説明してスライムを見せると、「そりゃそうよ、片栗粉みたいなものだもの。片栗粉だって水に溶かしてから少しずつ入れるでしょ。さきに火をつけちゃダメよ」と言われました。まじか…。

私は情けなくなりました。

研究者という仕事をしていながら、寒天をお湯に入れたらダマになる、そんな簡単なことすら予見できなかった自分が悲しくなりました。

私は大学で何を勉強してきたのでしょうか。たくさん勉強して、ゼリーひとつ満足に作れないのかと思うと、みじめに思えました。

「ここや!」

と母は思ったんでしょうね。あのハンドブレンダーをスライム入り鍋に突っ込み、ヴィィイイン!とかき混ぜました。

すると、さきほどまで私を苦しめていた、あのどうしようもないスライムたちが粉々に。寒天が綺麗に溶けていきます。

あぁ!恥ずかしい!

猛烈な羞恥心が湧きました。

あんなに馬鹿にしていたハンドブレンダーに、助けられてしまっている。恥ずかしいやら、悔しいやら。感情がぐちゃぐちゃ。心もブレンダーでかき混ぜられました(笑)

そんな私は、今ではブレンダーを駆使してコーヒーゼリーを作る男に生まれ変わりました。

「ハンドブレンダーなんて使いものにならない」。早急に判断してしまう、その思い込みこそ、ダイエットしたいものですね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました