不良の関所

コラムの第88回。

「勉強して何の役に立つの?」という定番の質問があります。

もし息子に聞かれたとして、自分ならどう答えるだろうか、と考えてみました。できれば強めのエピソードをかまして「パパすげぇ!」と思ってもらいたいものです。

ところが、いざ自分の人生を振り返ってみると、心から「勉強しておいて良かった!」と感じることって、案外ないものだなと思います。

私の場合、1個しか思いつきませんでした。

あれは高校1年のときのこと。私は自転車にのって、学校に向かっていました。バスケ部の朝練があったのです。しかし、その日は寝坊してしまって遅刻ギリギリ。焦りながら、細いあぜ道を自転車で爆走していました。

すると、前方に不良が4人。道を塞いでいます。マジかよ、と思いました。その不良というのが、通学路にときどき現れる、中学生の不良グループなのです。

たちの悪いやつらで、学生が横を通ったら「おい!まてや!」と言って呼び止め、面倒くさい絡みをしてくるというのを知っていました。

不良の関所だ、と思いました。

めっちゃ怖くてビビりました。相手は中学生で私は高校生ですけど、いくら年下でも、不良は怖い。こんなの、いつもなら見かけた瞬間「やばい!」と思って、見つからないようにソーっと別の道に逃げるんですけど、迂回すると5分は時間ロスになってしまいます。

どうしよう。迂回したら朝練に絶対遅刻してしまいます。かといって不良は怖いし。なんでこんなことに・・・。というか、今あさの7時ですよ。なんで不良なのに早起きしてんねん。不良らしく夜更かしして昼まで寝てろよ!

朝練開始の時間が迫ってきます。もう一か八か、声をかけられない方に賭けて、不良の横を通りすぎるしかないと思いました。何食わぬ顔でスーッと通ろうとした、そのとき。

「おい!とまれ!」

メンチ切られました。こういうとき、心臓が口から出るかと思うくらいドキッとするものですね。終わった、と思いました。こうなっては止まるしかありません。沈んだ気持ちで、キキーとブレーキをかけ、止まりました。そうしたら、不良のひとりが言いました。

「あっ!M高だ。すげっ」

その不良は、私の自転車に貼ってあるM高のステッカーを見て、私がM高生であることに気づいたようでした。すると他の不良たちも「ほんとだ」「あたま良いんだ」と口々に言い出し、あげく「すみません、通っていいです」と、道を開けてくれました。

その不良の関所は、高学歴フリーパスだったのです。

「じゃ、じゃぁ」と私は自転車をこぎ出し、かっこ悪く逃げ去りました。逃げながら、心の中で叫びましたよね。「勉強しておいて良かったー!」と。

めちゃくちゃダサいですね(笑)これを息子に言うのは恥ずかし過ぎます。なんでもっと格好いいエピソードがないんでしょうか。

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