お墓をお掃除するおばあちゃん

コラムの第94回。

世の中には、徳を積まれた素晴らしいご老人がたくさんいらっしゃいます。

今日、1歳半の娘をつれて近所をお散歩していると、お墓をお掃除しているおばあちゃんと目が合い、「かわいいねぇ」と話しかけられました。

けっこう距離が離れていたのですが、目があった瞬間、ポケモンバトルみたいにおばあちゃんがこっちに歩いてきてくれたので、頭の中にテ、テッテ、テテッテ~という初代ポケモンのバトルBGMが流れる中、しばらくお話させていただきました。

そのおばあちゃんと話すのは初めてでしたが、存在は以前から知っていました。というのも、そのお墓は私の散歩ルートでもあり、いつも一人で歩いているときに「このおばあちゃんいつもお墓にいるなぁ」と思っていたのです。気になっていたので話しかけてもらえて、やったぁと思いました。

「いつもお掃除しているんですか?」

私が聞くと、おばあちゃんは自分ちのお墓じゃないけど掃除しているんだ、と答えてくれました。えっ、どういうこと?

おばあちゃんは近所に住んでいるそうです。かつてはお墓がゴミでいっぱいだったとか。それを見て悲しい気持ちになったので、自主的に掃除を始め、今ではキレイな花まで飾るようになったらしいのです。

「ぜひお花みていってね」おばあちゃんは言いました。なんて人間ができたひとなんだろう。私が感心していると、おばあちゃんは今度は娘に話しかけ始めました。

「あのね、人と人とはね、挨拶したりね、おはよう、こんにちはって言ってね、関わり合うことが大事なのよ。相手を思い合ってね、配慮することを学んでいってね」

娘は「なんのこと?」という顔をしていました。でも、私には分かります。誰にも言われずにお墓を掃除し続けている方の言葉だからこそ、重みがあるなぁと思いながら聞きました。そうですねぇ、と相槌をつくと、おばあちゃんがこう言いました。

「あのね、人と人とはね、挨拶したりね、こんにちはっていったりね、関わり合うものなの。思いやりが大事なの。相手を配慮できる子になってね」

さっきも聞いたなぁと思いました。しかし、おばあちゃんにとっては、どうしても伝えたい大事なことなのでしょう。大事なことだから2回言いたかったのでしょう。お墓を掃除し続けている方なので、常日頃から気遣いや配慮が大事だと考えているに違いありません。私は「そうですねぇ」と返しました。

すると、おばあちゃんが「この子は男の子かしら?」と尋ねてきました。えっ、と思いました。

普通こういうときは「女の子ですか?」と聞くのがマナーかと思います。それで女の子ならOKだし、男の子であっても「女の子みたいにかわいいから間違えちゃった」で済むものです。もし「男の子ですか?」と聞いてしまい、それが女の子だった場合、微妙な空気になりがちです。

しかし、この他者に配慮できるおばあちゃんが、そんなミスを犯すはずがありません。きっと私には及びもつかない深い考えがあっての「男の子かしら?」だったのだろうと思いました。

私はどんな深淵な配慮があって聞かれたのか、ワクワクしながら「いえ、女の子なんです」と答えました。

「あらそうなの、ぜんぜん女の子に見えないわね~。オホホホ」

そのおばあちゃんは高笑いしながら去っていきました。配慮ないじゃん。今までの話は何だったのだろう、というモヤモヤが残りました。

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