採血中に言われた意外なひと言

コラムの第99回。

採血台の上にのせた左腕。その皮膚の下に青白く浮かんだ、ぷっくりとした自分の静脈を眺めながら、私はとある少年のことを思い出していました。

中学のとき、バスケの県選抜選手を決めるセレクションに参加させてもらったことがあります。私はたいした実力もなかったので、すぐに落ちてしまったのですが、生で見る県内のトッププレーヤーたちの練習風景が衝撃だったのをよく覚えています。

セレクションは、体力テストから始まりました。体育館の端に並べさせられ「ジャンプ力を測るから跳べ」と言われました。私は精一杯ビョーンと跳ねたのですが、結果は40センチ。試験官から雑魚を見るような目で見られてしまい、しゅんとした気持ちになりました。

他の子たちを見ていると、明らかに私より跳んでいます。場違い感がすごくて恥ずかしかったですね。ほどなくすると、身長が180センチほどあるイケメンの出番になりました。ふくらはぎがシシャモみたいで、もう跳ぶ前からオーラが違います。みんなで凝視していたのですが、跳んでみるとまるでマイケル・ジョーダン。こんな人がいるのかと驚いたものです。

しかし、それ以上に驚いたのが、ディフェンスフットワーク練習のときでした。その練習は、肩幅より広めに足をひらき、「ハーキーステップ」といって、左右の足を小気味よく、交互に30秒間、足踏みをするというものでした。

まあ、定番のフットワークです。私も毎日練習でやっていたので、そこそこ自信があります。さきほどのジャンプの汚名返上をしようと思って、タタタタと試験官に披露しようとしました。

すると、隣に居たやつがすごかった。もう音が違うんです。ダララララララァ!ダララララァ!という感じ。マシンガンを床に打ち込んでいるような爆音。人の足から出るはずのない衝撃音に、びっくりしました。

その子の顔はまったく覚えていないのですが(あまり特徴のある顔では無かったように思います)、あまりに足音が印象的すぎて、いまだにあのダララララァ!を思い出します。主にジョジョの奇妙な冒険を読んでいるときに思い出すことが多いです。

あれから20年経ちますが、もし街中で彼に出会ったとしても、足音で気づく自信があります。それくらい凄かったんです。

なんでこんな話をしているかというと、今日病院にいって、採血しているときに、看護師さんに「あれ、この静脈の配置は見覚えが…。前に採血させてもらったことありますね?」と訊かれたからなのです。

私、静脈の形状で人間を識別するタイプに初めて出会ったので、そんなことある?と思ってびっくりしてしまいました。が、よく考えたら、自分も足音で人間を識別したことあったな、と思い出し、懐かしい気持ちになったのでした。

ちなみに、その看護師さんとは初対面でした。

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