にしおかすみこさん著「ポンコツ一家」の感想

にしおかすみこさんのエッセイ「ポンコツ一家」を読みました。

この本との出会い

『有隣堂しか知らない世界』というYoutubeチャンネルを見ていたら、お笑い芸人のにしおかすみこさんが出てきました。エッセイを書かれたそうです。

にしおかさんといえば、エンタの神様でよく観ていた芸人さんです。

黒くてピチっとした衣装を着た女性が、ムチのようなものを顔の前で引っ張って「アー!」と叫ぶ。子どもながらに衝撃を受けたものです。

「にしおか〜、すみこだよぉぉ〜」
「◯◯したのは、どこのどいつだぁぁい?」
「・・・あたしだよっ!」

インパクトありましたよね、このフレーズ。父親がブラウン管の前でフンッと鼻を鳴らしていたのをいまだに覚えています(これは父が最大級に笑ったときの仕草です)。

よく考えると、小学生が家族とSM嬢を見て笑うって、すごい状況ですね。あとカンニング竹山さんの「うんこするぞっ!」で家族みんなが笑ったのも記憶に残っています。

さて、にしおかさんのお家は、お母さんが認知症、お姉さんがダウン症、お父さんが酔っぱらい、という絶望的な状況だそうです。

そんなにしおかさんが書かれたエッセイは「介護つらい。もう嫌だ…」という愚痴のオンパレード。ですが、そんな中にもお笑い芸人さんらしいユーモアがつめ込まれていて、壮絶なのに笑えるものになってます。

概要

久々に訪れた実家はゴミ屋敷になっていた。認知症になった母。ダウン症の姉。ポンコツの父。家族に人間らしい生活を取り戻してもらうべく、実家で暮らすことを決意したにしおかすみこさん。母に嫌味を言われて嫌になり、喧嘩を仲裁したら敵とみなされて嫌になり、あんたが帰ってきてからおかしくなったと心無い言葉を浴びせられて嫌になりながらも、ユーモアを忘れずに奮闘するお話。家族の絆を感じられる素敵なエッセイ。

感想

表紙が可愛い

まず表紙が可愛いです。にしおか一家のマトリヨーシカです。

一番左でお鍋を持っているのがお母さん。もの忘れがひどくて、ときどき口が悪くて、でも、とっても愛情深いお母さん。

二番目でお花を持っているのがお姉さん。ダウン症で、いろんなことができないけれど、誰よりもピュアで、癒やしになるお姉さん。

SM女王様の格好でムチを持っているのが、にしおかすみこさん。片眉をあげて口を尖らせているのは、壮絶な日々を生き抜くための気合いの現れでしょうか。

その横で、お酒を片手に、何も考えていなさそうな顔をしているのがお父さん。にしおか家では「パパクソ」と呼ばれて、何の頼りにもならない存在です。

この四人が織りなす家族劇。
たいへん面白いものでした。

言葉の暴力

まずびっくりしたのは、家庭内の言葉の暴力がすごいことです。

『大晦日の大事件』では、宅配のお節を注文したすみこさんに対し、お母さんが「金もないのに。こんなもん誰も食べやしないさ」と嫌味を言ってきます。

なんてひどいことを。

私なら腸がアヒージョくらい煮えくり返りそう。でも、すみこさんは戯れ言と受け流しています。感心します。

また『大事な話』では、お父さんが何気なく「すみが実家に戻ってきてから、ママがおかしくなったんだよなあ」と呟きます。

それを言われたすみこさんは「カチンとくる。グサッともくる」で済ませています。すごい。私なら大噴火するところです。

家族から受ける嫌味の数々。その生々しいこと。まだ親の介護を経験したことがない私にとって、介護の辛い部分が、とてもリアルに感じられました。介護って精神的にくるんですね。

家族愛を感じる

心ない言葉を浴びながら、懸命に介護をするすみこさん。尊敬します。普通なら両親を憎んでもおかしくないと思います。

でも、本書を読んだあとに残る感情は「家族憎し」ではありません。逆です。私は「家族っていいな」という気持ちになりました。

それは、すみこさんが家族のありえない行動に、心の中で一つ一つ突っ込んでいるからです。家族を悪者で終わらせず、ちゃんとお笑いというオブラートで包んでエッセイにしておられます。

そうすることで、家族がお互いを思う暖かさが、際立って伝わってきます。

『私の大事な話』は、少し短いですが、にしおか家の愛がギュッとつまっていて、大好きなお話です。ここだけでもぜひ読んでもらいたいくらいです。

このお話は、お母さんの携帯の緊急連絡先に関するものです。

体調不良などで倒れてしまったときのために、お母さんは携帯の緊急ボタンに家族を登録しています。その設定というのが、

1.お姉ちゃん
2.パパクソ
3.すみこさん

というもの。1と2を経由している間に死ぬだろうな、と思ったすみこさんは、自分を1にしたほうがいいんじゃないか、とアドバイスをします。ところが、この順番には、お母さんなりの優しさが詰まっていたのです。

どのエピソードも本当にリアルで、笑えて、元気がでるものばかりでした。「ポンコツ一家」おすすめです。

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