水ポケモンの営む店

「のど渇いた…」子どもを風呂に入れるのが、こんなに大変なことだとは思わなかった。

息子を風呂にいれると三十分はかかる。自分を洗う。息子を洗う。湯船に浸ける。ここまでは五分で終わる。そろそろ出たい。が、まだ遊ぶー!だそうだ。

四歳児はみずポケモン。水でっぽうのおもちゃを打つわ、打つわ。しぶきが飛ぶわ、飛ぶわ。キャッキャと水でっぽうを飛ばす様はゼニガメみたいで可愛い。あと十五年もすればカメックスのごときマッチョになったりするのだろうか。

水でっぽうが終わると今度は「いらっしゃいませー!」が始まる。

透明のカップに洗面器で湯船のお湯を注ぐ息子。それを三つほど並べる。ジュース屋さんごっこだ。仕込みが終わると「パパおみせやさんにきてー!」と呼ばれる。はーい、ごめんください、と言って、いちおう付き合う。

「何にしますかー?」

元気のいい店員さんで好感が持てる。ところで、メニューとか無いのだろうか。眼前の透明の液体が何ジュースであるかの情報がない。こちらで考えろということだろうか。あてずっぽうで注文してみる。「いちごオレください」「そんなのないでーす!」無いんかい。

「じゃあ何があるんですか?」
「スイカコーヒーでーす」

絶妙にまずそうなジュース屋さんである。ファミレスのドリンクバーでふざける高校生以外に口にしなそうな名前だ。

「他には?」
「ないでーす」

まさかの一択。スイカコーヒーで勝負する店だった。すぐに潰れそう。一品勝負はリスクが高い。あの焼き牛丼が抜群にうまかった東京チカラめしだって潰れたのだ。四歳児に経営はまだ早いか。

「まずそうだけど、それください」
「はーい!おまちくださーい!」

かぽっ。透明のカップに、スイカのおもちゃが投入される。とぷとぷ。もこみちくらいの高さからお湯を注がれる。店主のこだわりが感じられる。「できましたー!」こだわりのスイカコーヒーが完成する。

「まずい。もう一杯」「なんだそれー!」まあ、楽しいっちゃ、楽しい。

そんなことをしていると、あっという間に時間が経つ。基本シャワー派の私としては、自主的に長湯をすることがない。ましてや、のどが渇くほどなんて、子どもが生まれるまで、なかったのではないだろうか。正直のぼせる。大変だ。でも、充実感はある。いいもんだな、と思う。

はっ。気が付いた。私ののどが渇くということは、息子ののども乾くとということだ。エマージェンシー。エマージェンシー。息子に水を与えよ。ミッション発生。こういうことにも気付けるようになった。父親してるなあと思う。のど乾いた?と息子に尋ねた。

「もうちょっとでのど乾く」

なんだよ(笑) のど乾いたか、のど乾いてないか、ふつうどっちかだろ(笑) おもしろいなあ。

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